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中国 広東省 白端渓

歙州硯

端渓硯と並び称される名硯に歙州硯がある。この硯の原石は南京の南200kmの歙県から掘り出される。付近には観光地として知られる黄山があり、この辺りは奇怪な岩石の峰が無数に林立する山岳地帯である。歙県はその黄山の南に位置し、昔は歙州(きゅうしゅう)と言った。

歙州硯は端渓の女性的な艶やかさに比べ蒼みを帯びた黒色で、男性的な重厚さと抜群の質を持つ。比重は重く石質は硬く、たたくと端渓よりも金属的な高い音がする。へき開のために細かい彫刻には向かない。磨り味は端渓の滑らかさと違って、鋭く豪快に実によくおり、墨色も真っ黒になる。この硯は、うす絹を2枚重ねた時にあらわれる波のような模様、「羅紋」(らもん)が特徴である。

採石期間が短かったため現存する歙州硯は極めて少なく、端渓硯に比し約5%程度と思われる[11]

中国 安徽省 歙州硯眉子紋 (きゅうじゅうけん びしもん)

中国 安徽省 歙州硯魚子

中国 安徽省 歙州硯金星

?河緑石硯

北宋中期の?河(現在の甘粛省チョネ県)の深底から採石された。端渓硯を超える名硯とされるが、河の氾濫により採石場所が不明となったため、短期間で途絶えた。現存するものは極めて貴重であり、入手はほぼ不可能である。現在販売されている端渓緑石、新?河緑石などは全くの別物。
澄泥硯

澄泥硯については石を原料としたとする自然石説と、泥を焼成したとする焼成硯説が存在する。代初期頃まで作られていたとする焼成硯については、「当時の技術では焼成澄泥硯を作るための高温を出せる窯は作れなかった」として疑問が呈される場合もある。当時の製法ではこの高温が不可能であったため、焼成澄泥硯の製法書とするものにはあたかも魔術のような荒唐無稽な製造方法が述べられている。このように製法については現代でも解明されていない部分がある。うるおいを含んだ素朴さを感じさせる硯で石硯の比ではないといわれている。澄泥硯の最上のものは?魚黄澄泥(せんぎょこうちょうでい、ベージュ・くすんだ黄色)で、その次は緑豆砂澄泥(りょくとうしゃちょうでい、緑色・黒または青まじり)である。澄泥硯の代表種のひとつ「蝦頭紅」と呼ばれるものはその名の通り「海老を茹でるか焼いた時の海老頭の渋い赤色」である。それぞれに硯としての品質差があり、この品質差は見る者の感覚により変化する。[11]

澄泥硯

澄泥硯2

澄泥硯3

松花江緑石硯

吉林省松花江上流域で採掘される。緑、黄色系の縞状の模様が特徴。清朝期に名品が多い。これは清朝が満州族によって建国されたため、父祖の地に近いところに良い硯石の産地はないかと調べた結果、吉林省で発見されたことに由来する。

松花江緑石硯

紅糸石硯

山東省青州の黒山にて発見された。黄褐色に紅色の糸状の模様が特徴。宋代頃に良質の原石が枯渇したため衰退し、現存するものは少ない。現在この名称で安価に販売されているものは「土瑪瑙石」という偽物の可能性がある。
和硯

和硯(わけん)は中国製の硯を唐硯(とうけん)と呼ぶ対比で日本の石を使って作られた硯のこと。 日本硯[12]ともいう。

石硯は中国では紀元前200年ごろのの時代の墓より出土している。日本には推古天皇時代に墨がもたらされたと考えられており、このことから硯もあったと考えられている[13]。日本で硯が作られるようになったのは『倭名類聚抄』(930年代)に"硯には石を第一とする"という記述があることなどから、奈良時代にはすでにあったとされる説があり[13]、産地について触れられているものとしては、1191年に鶴岡八幡宮に源頼朝によって献納された風字硯は赤間硯だったと言われていること、それ以前に若田石硯や田野浦石硯はそれよりも古いとされていることから、1100年ごろから日本でも硯が作られていたのではないかとされている[14]

和硯の年産は1985年ごろでは推定で120万面となっている[15]
和硯材の産地

寛政7年(1795年)の『和漢研書』には「日本研材」として37の石が記されており、明治10年(1877年)の『文芸類纂』では同様に37の石が記されているが同一ではない。昭和60年(1985年)に著された石川二男による『和硯のすすめ』には主要な26の産地と石が挙げられているほか、その当時ですでに手に入らないものを含めた日本各地の主要な硯材と産地が挙げられており、100以上に上る[16]。同時期の名倉鳳山による『日本の硯』では日本の硯材は同じ材の重複や質などの点を考慮すると約20種となっている[17]
各産地と名称

紫雲石硯 - 岩手:正法寺石、三井石、夏山石、荻生石、瑞井石、日向石、中倉石、猿沢石
[18][19]


岩手県 紫雲石(表)

岩手県 紫雲石(裏)


雄勝硯 - 宮城:玄昌石、おかち石、御留山石、波板石、仙台石[20][21]


宮城 雄勝硯


小久慈硯、大子硯 - 水戸9代藩主徳川斉昭 国寿石 - 茨城 別名:国寿石、大子石[22][23]


大子硯(小久慈硯)


雨畑硯 - 山梨県郷土伝統工芸品[24]


山梨 雨畑硯


村雨硯 - 長野


長野 村雨硯


龍渓硯 - 長野 高遠石、鍋墨石、竹ノ沢石、鍋倉山石、横川石、深沢石、天竜石、伊奈石


長野 龍渓硯


鳳来寺石硯 - 愛知 金鳳石、鳳鳴石、煙厳石


愛知 鳳来寺硯 金鳳石

愛知 鳳来寺硯 金鳳石 蓋

愛知 鳳来寺硯 鳳鳴石

愛知 鳳来寺硯 煙巌石


虎斑石硯 - 滋賀 高島石、玄性石


滋賀 高島虎斑石硯 (模様を出すため色合いを調整)


那智黒硯 - 和歌山


和歌山 那智黒硯(蓋裏)

和歌山 那智黒硯(蓋をかぶせたところ)


高田硯 - 岡山


岡山 高田硯


諸鹿石 - 鳥取


鳥取 諸鹿硯


赤間硯 - 山口 厳島神社平舞台の束石[25] 、回廊の支柱[26]


山口 赤間硯 昭竜山

山口 赤間硯 昭竜山 (裏)

山口 赤間硯 紫青石


三原硯 - 高知、土佐石

若田石硯 - 長崎 紫式部の逸話がある[27]


長崎 対馬 若田石硯


紅渓石硯 - 宮崎


宮崎 紅渓石硯


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