硫酸
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硫酸は、接触法、湿式硫酸法、鉛室法など、さまざまな方法で広く生産されている[6]肥料製造に最もよく使われている[7]が、鉱物処理石油精製、廃水処理、化学合成にも重要である。また、家庭用の酸性排水処理剤[8]鉛蓄電池電解質、化合物の脱水、各種洗浄剤など、最終的な用途は多岐にわたっている。硫酸は、三酸化硫黄を水に溶かすことで得られる。
化学的性質

硫酸は三酸化硫黄 (SO3) をと反応させて得られる、やや粘性のある酸性の液体である。

塩酸などとは異なり不揮発性であるため、濃度の低い硫酸であっても水分が蒸発すると濃縮されるので、衣服に付いた場合などは、そのまま放置すると穴が開く危険性があり、また、皮膚に付いたものを放置すると、火傷をする恐れがある。
水和

水分子との強い親和力により吸湿性と強い脱水作用があり、有機化合物から水素と酸素を水分子の形で引き抜く。ショ糖に濃硫酸をかけると炭化したり、濃硫酸が皮膚に付くと火傷を起こすのは、この脱水作用と発熱およびプロトン化能力のためである。

硫酸の水和熱は極めて大きく第一水和エンタルピー変化は以下の通りである[9]。 H 2 SO 4 ( l ) + H 2 O ( l ) ↽ − − ⇀ H 2 SO 4 ⋅ H 2 O ( l ) {\displaystyle {\ce {H2SO4(l) + H2O(l) <=> H2SO4 . H2O(l)}}} ,    Δ H ∘ = − 27.80   k J   m o l − 1 {\displaystyle \Delta H^{\circ }=-27.80~\mathrm {kJ~mol} ^{-1}}

また硫酸の溶解エンタルピー変化は以下の通りである。 H 2 SO 4 ( l ) ↽ − − ⇀ H + ( aq ) + HSO 4 − ( aq ) {\displaystyle {\ce {H2SO4(l) <=> H^+ (aq) + HSO4^- (aq)}}} ,    Δ H ∘ = − 73.35   k J   m o l − 1 {\displaystyle \Delta H^{\circ }=-73.35~\mathrm {kJ~mol} ^{-1}}

このため濃硫酸を希釈する場合は、発熱に注意しながら、撹拌しながら水の側に濃硫酸を少しずつゆっくりと加えていかなければならない(塩酸硝酸など他の強酸類も同様)。

硫酸を水に溶かすと発熱するが、氷と混ぜると多くの水溶性化合物に見られるように、逆に寒剤ともなり得る。
金属に対する反応

金属と反応させた場合の挙動は、金属の種類のほか、硫酸の濃度と温度に依存する。例えば濃度と温度がいずれも高い熱濃硫酸では、酸化力が高くなる。

反応生成物も変化に富む。一般には、水素 (H2)、硫化水素 (H2S)、硫黄 (S)、二酸化硫黄 (SO2)、金属の硫化物、硫酸塩が生成される。

希硫酸は水素よりイオン化傾向の大きな金属と反応し水素を発生させる。ただし、は表面に不溶性の硫酸鉛を生じ反応が進行しない。スズニッケルなどとの反応も極めて遅い。亜鉛との反応は実験室で手軽に水素ガスを発生させる方法として用いられる。 H 2 SO 4 + Zn ⟶ ZnSO 4 + H 2 {\displaystyle {\ce {H2SO4 + Zn -> ZnSO4 + H2}}}

濃硫酸を加熱したものを熱濃硫酸(ねつのうりゅうさん)という。290℃以上では濃硫酸は水と三酸化硫黄に分解し、三酸化硫黄は酸化力を持ち、これ以下の温度でも平衡混合物として三酸化硫黄が存在する。そのため熱濃硫酸には強い酸化力があり、酸化剤として用いられる。イオン化傾向の小さいなどとも反応する。また炭素、硫黄などの非金属とも反応する。例えば熱濃硫酸と銀との化学反応式は以下のようになる。 3 H 2 SO 4 + 2 Ag → Δ 2 AgHSO 4 + SO 2 + 2 H 2 O {\displaystyle {\ce {3H2SO4 + 2Ag ->[\Delta] 2AgHSO4 + SO2 + 2H2O}}}


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