硫酸の水和熱は極めて大きく第一水和エンタルピー変化は以下の通りである[9]。 H 2 SO 4 ( l ) + H 2 O ( l ) ↽ − − ⇀ H 2 SO 4 ⋅ H 2 O ( l ) {\displaystyle {\ce {H2SO4(l) + H2O(l) <=> H2SO4 . H2O(l)}}} , Δ H ∘ = − 27.80 k J m o l − 1 {\displaystyle \Delta H^{\circ }=-27.80~\mathrm {kJ~mol} ^{-1}}
また硫酸の溶解エンタルピー変化は以下の通りである。 H 2 SO 4 ( l ) ↽ − − ⇀ H + ( aq ) + HSO 4 − ( aq ) {\displaystyle {\ce {H2SO4(l) <=> H^+ (aq) + HSO4^- (aq)}}} , Δ H ∘ = − 73.35 k J m o l − 1 {\displaystyle \Delta H^{\circ }=-73.35~\mathrm {kJ~mol} ^{-1}}
このため濃硫酸を希釈する場合は、発熱に注意しながら、撹拌しながら水の側に濃硫酸を少しずつゆっくりと加えていかなければならない(塩酸や硝酸など他の強酸類も同様)。
硫酸を水に溶かすと発熱するが、氷と混ぜると多くの水溶性化合物に見られるように、逆に寒剤ともなり得る。 金属と反応させた場合の挙動は、金属の種類のほか、硫酸の濃度と温度に依存する。例えば濃度と温度がいずれも高い熱濃硫酸では、酸化力が高くなる。 反応生成物も変化に富む。一般には、水素 (H2)、硫化水素 (H2S)、硫黄 (S)、二酸化硫黄 (SO2)、金属の硫化物、硫酸塩が生成される。 希硫酸は水素よりイオン化傾向の大きな金属と反応し水素を発生させる。ただし、鉛は表面に不溶性の硫酸鉛を生じ反応が進行しない。スズ、ニッケルなどとの反応も極めて遅い。亜鉛との反応は実験室で手軽に水素ガスを発生させる方法として用いられる。 H 2 SO 4 + Zn ⟶ ZnSO 4 + H 2 {\displaystyle {\ce {H2SO4 + Zn -> ZnSO4 + H2}}} 濃硫酸を加熱したものを熱濃硫酸(ねつのうりゅうさん)という。290℃以上では濃硫酸は水と三酸化硫黄に分解し、三酸化硫黄は酸化力を持ち、これ以下の温度でも平衡混合物として三酸化硫黄が存在する。そのため熱濃硫酸には強い酸化力があり、酸化剤として用いられる。イオン化傾向の小さい銅や銀などとも反応する。また炭素、硫黄などの非金属とも反応する。例えば熱濃硫酸と銀との化学反応式は以下のようになる。 3 H 2 SO 4 + 2 Ag → Δ 2 AgHSO 4 + SO 2 + 2 H 2 O {\displaystyle {\ce {3H2SO4 + 2Ag ->[\Delta] 2AgHSO4 + SO2 + 2H2O}}} 熱濃硫酸は芳香族化合物などの有機物とスルホン化反応を起こす(ただし発煙硫酸を使う方法のほうが一般的である)。これは平衡生成物として僅かに存在しているSO?による求電子置換反応である。この反応により生成するスルホン酸(RSO3H)は1価の強酸である。ベンゼンのスルホン化反応 濃硝酸と濃硫酸を混合した混酸は、有機物とニトロ化反応を起こし、グリセリンなどアルコールと反応して硝酸エステルを生成する。これも強酸性媒体である濃硫酸中で硝酸がプロトン化を受け続いて脱水した結果生成したニトロイルイオン(nitryl / NO+ 純硫酸は濃硫酸に計算量の三酸化硫黄または発煙硫酸を反応させて得られるが、これを加熱するとやはり290 ℃以上で分解が始まり、さらに加熱により98.33%の水溶液となり、沸点338 ℃の共沸混合物となる。 硫酸水溶液の濃度と酸度関数(抜粋)[10]重量%10203040506070809099.44 濃硫酸、とくに100%の純硫酸であっても分子性の液体としては比較的高度に電離しており[11]、水素イオン(実際にはH3SO+ プロトン性極性溶媒である純硫酸には自己解離および縮合などの平衡が存在し10 ℃の平衡定数は以下の通りである[13]。 2 H 2 SO 4 ⟶ H 3 SO 4 + + HSO 4 − {\displaystyle {\ce {2H2SO4 -> H3SO4^+ + HSO4^-}}} , K = 1.7 × 10 − 4 m o l 2 k g − 2 {\displaystyle K=1.7\times 10^{-4}~\mathrm {mol} ^{2}~\mathrm {kg} ^{-2}} 2 H 2 SO 4 ⟶ H 3 O + + HS 2 O 7 − {\displaystyle {\ce {2H2SO4 -> H3O^+ + HS2O7^-}}} , K = 3.5 × 10 − 5 m o l 2 k g − 2 {\displaystyle K=3.5\times 10^{-5}~\mathrm {mol} ^{2}~\mathrm {kg} ^{-2}} H 2 O + H 2 SO 4 ⟶ H 3 O + + HSO 4 − {\displaystyle {\ce {H2O + H2SO4 -> H3O^+ + HSO4^-}}} , K = 1 m o l k g − 1 {\displaystyle K=1~\mathrm {mol~kg} ^{-1}\,} H 2 SO 4 + H 2 S 2 O 7 ⟶ H 3 SO 4 + + HS 2 O 7 − {\displaystyle {\ce {H2SO4 + H2S2O7 -> H3SO4^+ + HS2O7^-}}} , K = 7 × 10 − 2 m o l k g − 1 {\displaystyle K=7\times 10^{-2}\mathrm {mol~kg} ^{-1}}
金属に対する反応
有機物に対する求電子置換反応
2)による求電子置換反応である。
純硫酸中の平衡
H0?0.31?1.01?1.72?2.41?3.38?4.46?5.8?7.34?8.92?11.21
4)は10-2 mol kg−1程度生成し、また溶媒としての硫酸は溶質にプロトン(水素イオン)を供与する力が非常に強くハメットの酸度関数ではH0 = ?11.94を示す[12]。しかし酸度関数も濃度により変化する。
Size:97 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
担当:undef