砲弾
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ペクサン砲で使われた装弾筒つきの砲弾(1824年)戊辰戦争で使われた四斤山砲弾。ライフリングに合うようスタッドが付いている

1871年までは、鋳鉄製の球形の砲弾が通常弾として使われていたが、1823年フランスの将校であるアンリ=ジョセフ・ペクサン(en:Henri-Joseph Paixhans)は、低い弾道のカノン砲ペクサン砲)で発射できる炸裂する榴弾を発明した。1840年代以降、各国の海軍がこの砲を採用し、そのために被弾時に燃えやすい木造軍艦の時代が終わり、造船における船体への移行が起きた。そのころには、不発弾を防ぐために、着発信管がきちんと目標に向くよう砲弾に装弾筒(サボ)と呼ばれる木製の円盤を銅のリベットで取り付けて装填するようになった。また、装弾筒は、砲弾が真っ直ぐ発射されるのを補助する役目もあるとされていた。ただし、臼砲の砲弾には装弾筒は使われなかった。

19世紀後半、ライフル砲が実用化されると、球形ではなくて椎の実型の砲弾(長弾)が使われるようになった。ライフリング自体は15世紀に考案されていた技術であるが、大砲への実用はこの頃であった。ライフリングとうまく噛み合わさるような砲弾の構造が研究され、や銅などの柔らかな金属でできた覆帯を巻いてライフリングが食い込むようにする方式(鉛套弾)や、前裝砲用として筍翼(スタッド)を表面にとりつけて溝にはめ込む、ライット・システム方式が実用化された。

19世紀末まで砲弾には鋳鉄が使われていた。はまず、その硬さから徹甲弾に使われ、その後、施条された高初速な砲で使われるようになった。鋳鉄では高初速砲の発射時の衝撃に耐えられず、ライフリングで旋転中に割れてしまうからである。メリニット炸薬を使ったM1897 75mm野砲用の砲弾

この間に特殊な砲弾も開発された。照明弾(星弾)は17世紀には実用化されており、イギリス軍1866年パラシュート付きの照明弾を10インチ砲、8インチ砲、5.5インチ砲用に導入した。この10インチ砲用の照明弾は、実に1920年まで公式には制式装備とされていた。

第一次世界大戦時、破片を撒き散らす榴散弾榴弾歩兵に甚大な被害を与えた。戦死者の70%はそれらの砲弾によるものである。このため、弾片避けの鋼鉄製ヘルメットが標準装備になっていった[注 9]1917年には、毒ガスを詰めた砲弾が使われ始めた。

当時は信管の信頼性がまだ低く、砲弾が炸裂しなかったせいで戦況に影響を与えたこともある。不発弾が大きな影響を与えた戦例としては、1916年ソンムの戦いを挙げることができる。また後世に不発弾が発見されると、誤って炸裂させることが無いように、適切に処理しなければならない。
ウクライナ侵攻の教訓

2022年ロシアのウクライナ侵攻は、次第に前線で多くの砲弾を打ち込み合う展開となった。ロシアの現地指揮官は砲弾や弾薬の不足を訴え国防相を罵るとともに[3]ウクライナに軍事支援を行う西側諸国も補充が間に合わない消耗戦の様相を呈した[4]。このことから砲弾や弾薬の平時における生産やストック量などの見直しが各国で行われることとなった。ウクライナへの軍事支援を行わない日本でも、弾薬庫の増強などが行われることとなった[5]。また、ウクライナ侵攻ではドローンの使用により大砲の発見や攻撃が容易になった。このため、より射程が長い砲弾が求められ、ラムジェットの採用や砲弾の小型化などが模索されており、将来的にミサイルとの境界が曖昧になっていくことが示唆されている[6]
脚注[脚注の使い方]
注釈^ ただし、石弾にも石壁などの硬目標に用いると、弾着時に割れた破片が飛び散る弾片効果を発揮する利点もあった。学研、歴史群像グラフィック戦史シリーズ3『戦略戦術兵器事典』【ヨーロッパ近代編】17頁。
^ 極端な変形さえしなければ、砲弾は回収して何度も反復使用を行うのが普通だった。だが再使用すると火薬や詰め物の滓がこびりついて直径が増し、錆弾同様、再装填で問題になる弾もあった。田中航『戦艦の世紀』毎日新聞社、69頁。
^ 主にフランス海軍が愛用したとされる。『戦艦の世紀』70頁。
^ 中には一発の球形弾が中空になっており、発射前は一発だが、くす玉のように半分割れたそれぞれを鎖で繋いで、伸びる凝った鎖弾もある。水野大樹『図解 火砲』新紀元社143頁。
^ 射程は短くなるが、接近対艦戦の舷門斉射用なので問題にはならなかった。バリエーションとして、砲身に三つの球形弾を詰めるトリプルショット(Triple shot)と言うものもある。
^ 稀にバーの間に可燃物を詰め、カーカスのような焼夷弾として使うこともあった。『戦艦の世紀』71頁。
^ ファゴット(Faggot)は「薪(たきぎ)の束」を意味する。楽器ファゴット(Fagotto)とはスペルが異なる。
^ 弾体の外観が人間の胸部死体に似ているために、この名が付いている。『戦艦の世紀』71頁。
^ イギリス軍の皿形ヘルメットなどが典型例。ヘルメットは直接銃撃を受けた際の威力にまでは耐えられないので(距離150mから5.56x45mm NATO弾でWW2の米・英・独各国軍ヘルメット撃った結果、簡単に貫通してしまっている。国際出版『別冊Gun 素晴らしいGunの世界』「ヘルメットを撃つ」102頁)、その主な目的はあくまで砲弾からの破片避けであった。

出典^ a b Needham, Joseph. (1986). Science and Civilization in China: Volume 5, Chemistry and Chemical Technology, Part 7, Military Technology; the Gunpowder Epic. Taipei: Caves Books Ltd. Page 24–25, 264.


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