砲兵
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105-122mmの軽榴弾砲第一次世界大戦頃ないし戦間期から、口径75-84mmの野砲と共に師団/旅団所属砲兵の主力(師団砲兵)として運用されるようになり、第二次世界大戦頃にはどこの国の軍隊でも使用されるようになった。

軽榴弾砲は戦後も長期にわたって使用されてきたが、近年は120mm迫撃砲の性能向上などもあって、山岳部隊や機動力が重視される空挺部隊など重装備の運用制限が厳しい部隊か、発展途上国および後方の二線級部隊で使用される程度になってきている。

中砲
西側:口径150mm、155mm 東側:口径130、152mm

戦間期から第二次大戦にかけては区分は「重砲」であり、ソ連赤軍大日本帝国陸軍などでは軍団ないし司令部に直属する軍団砲兵・軍砲兵の装備として運用されていた。しかしながら同時期のアメリカ陸軍ドイツ陸軍においては、師団砲兵に1個大隊分の150mm級榴弾砲(M1 155mm榴弾砲15cm sFH 18)を野砲に変わって配備、軽榴弾砲との混成装備として火力増強を図った。

122mmや150mmクラスのカノン砲は同口径の榴弾砲と比較し、極めて大重量(8t前後)であり性能も異なるため軍団砲兵・軍砲兵として運用される。

また、東側が第二次大戦後に制式化した130mm砲弾M-46 130mmカノン砲で使用される程度であり、その長射程と大重量から軍団砲兵で運用された。

現在の先進国の師団砲兵では、軽榴弾砲を廃し155mm/152mm砲に集約されている傾向があり、自走榴弾砲も155mm/152mm口径のものが中心となっている。

重砲
西側:口径175mm、203mm、280mm 東側:口径180mm、203mm

第一次、第二次両大戦において軍団砲兵・軍砲兵に配備され、攻城砲として要塞などの硬化目標の破壊や遠距離砲撃を任務とし、また、要塞砲沿岸砲としても運用された。

現在では重砲の任務は航空攻撃かミサイル攻撃、MLRSBM-30などの長射程・多連装のロケット砲にとって代わられ、姿を消しつつある[2]

ロケット砲兵
ロケット砲を運用する。基本的には重砲の代替用途として、作戦術以上の階梯で運用される。
ミサイル砲兵
短距離弾道ミサイルなどの戦術地対地ミサイルを運用する。基本的には戦略階梯で運用される。
組織九六式十五糎榴弾砲を運用する日本陸軍の野戦重砲兵(野戦重砲兵第7連隊砲兵トラクターである九八式六屯牽引車 ロケによって牽引中

国や時代によって様々な編制が存在するが、一般的な事例としては師団砲兵として1個師団に1個砲兵連隊が存在する。1個砲兵連隊の編制は2-4個大隊で、大隊は2-4個中隊編成される。砲兵は中隊単位でバッテリーと呼ばれるひとそろいのシステムになっており、砲撃は最低でも中隊単位で行う。砲兵連隊の大隊数は同じ師団に属する歩兵連隊の数と関連しており、歩兵連隊数と同じ数の大隊が編成される。また、歩兵連隊を直協支援する部隊とは別に全般支援を行う重砲を運用する大隊が存在していることも多い。

砲兵連隊は砲列を構成する中隊が数個と指揮小隊と観測班小隊に弾薬を運ぶ段列が集まって大隊が構成され、大隊が集まって連隊となる。砲兵はその運用に弾道学に基づく複雑な計算を必要とするために高い教育を受けた将校下士官を必要とする。教育水準の低い国では優秀な砲兵の確保が難しい場合も多く、砲兵の能力の低さから砲戦能力が制限されることも多く、砲兵将校の能力不足から間接射撃が行えずに直接照準に頼った運用が行われることもある。
陸上自衛隊

陸上自衛隊の事実上の前身である日本陸軍の時代においては、おおむね第二次世界大戦頃の砲兵の兵種として野砲兵山砲兵騎砲兵・重砲兵・野戦重砲兵・臼砲兵迫撃砲兵噴進砲兵速射砲兵高射砲兵機関砲兵船舶砲兵などに分かれていたが、現代では火砲の発達やドクトリンなどの進化により自然に統廃合が行われ、基本的に対地攻撃・対艦攻撃を行う野戦砲兵と対空攻撃を行う防空砲兵に分かれ、前者を野戦特科と後者を高射特科と称している。職種学校は野戦特科が富士学校特科部、高射特科が高射学校であり、それぞれ教育支援部隊として特科教導隊高射教導隊が編成される。

2022年12月に制定された防衛力整備計画では、以前の中期防衛力整備計画に従い火砲定数の削減をする一方で、ロケット砲兵・ミサイル砲兵を大幅増強する計画されている。野戦特科部隊は、北部方面隊隷下部隊を除き、4個方面隊の師団旅団の特科(連)隊を統廃合した方面特科連隊の編成が計画されている。うち3個方面連隊は編成完結済、1個方面特科隊も連隊への増強が予定されている。また、陸上自衛隊で最大の野戦特科部隊である第1特科団においては部隊の廃止・統合が実施され、特科団に準じる東北方面特科隊については廃止、隷下部隊の方面隊直轄化が予定されている。一方、西部方面特科隊においては増強改編が実施され、第2特科団への昇格が予定されている[3]。高射特科は現勢維持とされている一方で装備の更新が進む。なお、陸上自衛隊の野戦特科部隊では、榴弾砲の射撃中隊が5門編制で、特科大隊が直協任務大隊が2個射撃中隊10門(一部3個射撃中隊15門)、全般支援大隊が3個射撃中隊編成15門を基本編制としており、今日の列国が基本的に射撃中隊が6門編成で3個射撃中隊18門で一個大隊としているのに比して著しく劣っている。
野戦特科
部隊の運用「第1特科団」、「第2特科団」、「陸上自衛隊の独立特科大隊等一覧」、および「陸上自衛隊の連隊等一覧#野戦特科」も参照
北部方面隊西部方面隊には方面隊直属の特科団が置かれている。特科団は特科群もしくは特科連隊と、複数個の地対艦ミサイル連隊基幹の編合部隊であり、多連装ロケットシステムMLRS88式地対艦誘導弾12式地対艦誘導弾を装備する。

東北方面隊東部方面隊中部方面隊の各方面隊直轄、北部方面隊の師団、西部方面隊の第2特科団隷下には特科連隊が置かれ、155mmりゅう弾砲(北部方面区は99式自走155mmりゅう弾砲、西部方面区の一部は19式装輪自走155mmりゅう弾砲)を主要装備としている。特科連隊は本部中隊、情報中隊及び野戦砲5門から成る射撃中隊2-3個で編成される大隊2-5個からなる。各部隊の特性により内部編制は異なるため、詳細は各部隊の記事を参照されたい。

北部方面隊の旅団には特科隊が置かれ、99式自走155mmりゅう弾砲を装備する。特科隊は大隊に準じた規模で、本部管理中隊と3個射撃中隊で編成される。

普通科職種が運用する120mm迫撃砲RTを野戦特科が装備している部隊がある。第1空挺団特科大隊水陸機動団特科大隊即応機動連隊の火力支援中隊がそれに該当する。

富士学校の野戦特科職種の学生に対する教育支援のため特科教導隊が編成されている。

特科団

特科団は、団本部中隊と複数個の地対艦ミサイル連隊、独立特科大隊を基幹とする特科群もしくは、固定編成の特科連隊を基幹とし、情報中隊に音響観測等を拡充した観測中隊(第1特科団のみ)等をもって編成している。冷戦時代は方面隊全般の特科火力支援、重砲・ロケット弾による戦略的火力発揮を目的としていたが、21世紀以降は対艦戦闘、長距離ミサイルを主体とした戦略火力部隊へと変化している。
特科団の一覧

第1特科団(北千歳駐屯地):団本部、本部中隊、第1特科群、第1地対艦ミサイル連隊、第2地対艦ミサイル連隊、第3地対艦ミサイル連隊、第301観測中隊

第2特科団(湯布院駐屯地):団本部、本部中隊、西部方面特科連隊、第5地対艦ミサイル連隊、第7地対艦ミサイル連隊、第301多連装ロケット中隊

特科群

特科群は現在、第1特科団隷下に第1特科群が編成され、本部中隊と数個の独立特科大隊を基幹として編成されている。かつては4個群が編成され、最大で1個群に4個特科大隊を有した。群隷下の独立特科大隊は方面隊全般の射撃支援を担う射撃大隊であり、必要に応じ戦闘団等を増強する予備戦力として運用する[注釈 2]。独立特科大隊は高射火器を装備する大隊を含めて33個大隊が日本各地で編成されたが、2個大隊が第1特科群に編合されて第1特科団への配置のみとなっている。

第2特科群は第4地対艦ミサイル連隊を編合し東北方面特科隊へ、第3特科群は第5地対艦ミサイル連隊を編合し西部方面特科隊へ増強改編された。その後、2024年(令和6年)に東北方面特科隊は廃止、西部方面特科隊は第2特科団に増強改編した。


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