砥石
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昭和40年頃より日本では天然砥石の採掘の停止が相次ぎ同時に人造砥石の改良が進み、現在では様々な種類の砥石が製造されている。
分類

人造砥石の分類は工業用では形状や寸法が重要になるが、研磨性に直接関係する要素としては砥粒と結合剤の種類、及び粒度が重要である。
1.砥粒の種類

人造砥石の研磨剤として使われる砥粒は、JIS R 6111:2005によれば、大きく分けて酸化アルミニウム(アルミナ、アランダム)を原料とするものと、炭化ケイ素(カーボランダム)を原料とするものの2つに分けられる。硬度としては炭化ケイ素系の方が大きく、主として荒砥から中砥に使われ、それより硬度が落ちるがじん性(破壊されにくさ)に優れるアルミナ系は中砥から仕上げ砥に使われる。この2種類以外に、人造ダイヤモンドや立方晶窒化ほう素も研磨剤として用いられる[10]
(1)酸化アルミニウム(アルミナ)系
A 褐色アルミナ研磨剤 もっとも一般的に使用される研磨剤。WA 白色アルミナ研磨剤 硬度が高くかつ破砕性に富むため、主に仕上げ砥で使用。PA 淡紅色アルミナ研削材 WAよりじん性が高く、形状保持力に優れる。HA 解砕型アルミナ研削材(灰色?青色) コランダムの単一結晶から成る。結晶粒単位で解砕(細かい粉の固まりをほぐして粉に戻すこと)しているため破砕しにくく、精密な研削に適する。AE 人造エメリー研削材(灰黒色) 研削力が高く、かつ耐久性も高い。AZ アルミナジルコニア研削材(灰色) 硬度的にはもっとも低いがじん性は逆に高い。
(2)炭化ケイ素系
C 黒色炭化けい素研削材 主に荒砥に使用。GC 緑色炭化けい素研削材 荒砥や砥面修正用に使用。
2.結合剤の種類

フィラーとして混ぜられた砥粒をまとめて砥石の形状を形成するための材料を結合剤と言い、種類と製法は以下の通り[11]
(1)ガラス系(セラミック系)
ガラス系(ビトリファイド法)による砥石の例。手前:#1000、奥:#1200一般的な陶器と同じく可溶性粘土や長石を1300℃程度の高温で焼成してガラス状の物質を形成するもの。その製法をビトリファイド法といい、JIS R 6210:2006で規定されている。ビトリファイドは英語でvitrifiedであり、「ガラス化した、陶化した」という意味。ラテン語のvitrum(ガラス)が語源。(ちなみに日本語でガラス細工を表すビードロは、ラテン語のvitrumがポルトガル語のvidroになり、それが日本に伝わったもの。)長所として焼き固めてあるので硬度があり、経年変化も少なく化学的に安定している。反面強い衝撃で割れることがあり、また細孔の多い多孔質の状態になることが多く、十分吸水させるのに10分?30分程度の時間を要する場合がある。なお、ビトリファイド法以外の製法で作られた砥石でも名称に「セラミック」を使っている場合があり、注意が必要。
(2)セメント系
セメント系(マグネシア法)による砥石の例。手前:#1500、奥:#1000結合剤として酸化マグネシウム塩化マグネシウムによる一種のセメント(マグネシアセメント)を使って、それが化学反応で硬化するのを利用したもの。JIS R 6219:2006で「マグネシア研削といし」として規定されている。ビトリファイド法に比べ、焼き固めるというプロセスが無いため収縮が小さく、砥粒径を小さくした場合の寸法管理がしやすいため、特に中砥や仕上げ砥で多く使われる。また酸化マグネシウムは硬化した後でも水に溶けるため、使用前に長時間水に漬ける必要がなくすぐに使え、また刃物への当たりも柔らかいという利点がある。しかし逆に長時間水に接すると軟化したりひび割れが生じたりしやすく、また長期的に吸湿により硬度が低下するという欠点もある。また成分として塩化マグネシウムを使用するため、鋼の刃物を研ぐ場合に錆を発生させる場合があるので注意が必要[12]
(3)レジン系
レジン系(レジノイド法)による砥石の例。番手は両方とも#2000。手前がエポキシ樹脂を使用、奥がフェノール樹脂を使用したもの。結合剤として、フェノール樹脂エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を用い200℃程度の温度で硬化させたもの。JIS R 6212:2006で規定されている。この製法をレジノイド法と呼ぶ。セメント系に比べさらに刃物への当たりが弱くなる。寸法精度を出しやすいことから工業用砥石で広く使われている他、仕上げ砥でも使われている。
(4)その他
人造ダイヤモンドを砥粒として用いる場合には、ビトリファイド法と同様に焼き固めて作る焼結法と、ニッケルなどの金属をボンドに使ってめっきのように人造ダイヤモンドを固着させる電着法がある。初期状態の研削性では電着法の方が優れるが、ダイヤモンド層が単層であるため、寿命では焼結法の方が優れている。また、合成ゴムを結合材として用いた砥石も工業用や錆落とし用として製品化されている。
3.粒度

一般的に、砥石の研磨力を示すものとして番手というものが使われており、この数字が小さいほど研磨力が高い。この番手は砥粒の粒度によって決まり、JIS R 6001で規定されている。基本的に砥粒の平均の粒径とその分布の仕方によって番手が決まる。一般的に番手で#700未満を荒砥、#700?#2000を中砥、それを超えるものを仕上げ砥と呼ぶことが多いが、この分類の仕方に厳密な定義はなく、人によって違う場合が多い。また同じ番手であっても研いだ時の研磨性や研ぎ味は決して同じではなく、上記の砥粒や結合剤の違いで、大きく受ける感じが異なる場合がある。更には砥粒の種類によっては、元の粒径が破砕されて小さくなる場合もある。また天然砥石については、均一の砥粒を含むということはまずあり得ないため、番手を決めることは不可能であり、荒砥?中砥?仕上げ砥というざっくりした分類しか出来ない。
4.結合度

砥石の硬さを結合度という指標で表し、JIS R 6242:2006の6.6.3で規定されている。Aに近いほど軟らくなり、Zに近いほど硬くなる。一般的には研ぐものが硬い場合は軟らかい砥石を、軟らかい場合は硬い砥石を用いるのが良いと言われている[13]
文化草刈りしている人の図。定期的に研ぐため、腰のベルトに砥石を入れる入れ物(ドイツ語:Kumpf、フランス語:Coffin)を帯びている。

大工の世界では、「穴掘り三年、鋸五年、墨かけ八年、研ぎ一生」と言われるくらいに、納得できる仕事に至るまでが長い技術である。

日本刀研磨 - 古代の戦士は砥石を常備していた[14]研師という専門家もいる。日本のみならず、中国語の慣用句に磨刀霍霍(刀を霍霍と砥ぐ、戦闘に備える)という語があるように、多くの文化で戦士が砥石を常備していた様子がわかる。

このように、武器の製造に用いられていたことから古来から軍事物資と考えられた[15]。江戸時代には砥石の採掘・運搬・販売が幕府の直轄となり群馬の御蔵砥などが採掘された[15]。明治時代に討幕され民間による砥石の採掘・運搬・販売ができるようになった[16]
神話


北欧神話の主神オーディンが9本の鎌をオーディンの砥石で研ぎ、それが素晴らしかったので仕上げた砥石が欲しくなった農民たちが取り合いを始めるエピソードがある。

ブリテン島の13の宝(英語版)にはティドゥアル・ティドグリドの砥石というものがあり、勇者が研ぐと切れ味が抜群になるが、そうでなければ鈍ら刀になると言われる。

ゲーム


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