砂漠
[Wikipedia|▼Menu]
特にサハラ砂漠の一部であるリビア砂漠には大小の天然ガラスの塊で構成された領域が点在し(リビアングラス)、どのように生成されたのかが謎となっている。

逆にタクラマカン砂漠(36%)などはきわめて未成熟である[5]
気候地球の乾燥気候 .mw-parser-output .legend{page-break-inside:avoid;break-inside:avoid-column}.mw-parser-output .legend-color{display:inline-block;min-width:1.5em;height:1.5em;margin:1px 0;text-align:center;border:1px solid black;background-color:transparent;color:black}.mw-parser-output .legend-text{}  砂漠気候   ステップ気候   ツンドラ気候   寒帯

砂漠は植生の少ないことや晴天が続くことなどから、気温の一日の変動が非常に激しいのが特徴である。低緯度にある砂漠においては夏の日中には50度を超えるところもある一方で、冬の夜間には晴天のため気温が下がり、氷点下になる地域すらある。こうした気温変動の激しさと風の強さ、そして降雨時の流水の激しさは岩石の風化を促し、風化した岩石は砂となって砂丘を形成する。風が強いため、風食作用によってつくられる三稜石が多く存在するのも砂漠の特徴のひとつである[6]

砂漠は降雨量が非常に少ないが、それは湿度が低いことを必ずしも意味しない。大部分の砂漠においては確かに空気は乾燥しているが、海岸部に存在する砂漠の場合、隣接する海からの水蒸気が空気中に含まれており、湿度は高くなる傾向にある。砂漠気候に属するアラブ首長国連邦ドバイがその代表的な例であり、6月から9月にかけての夏季においては湿度が100%に達することすらある。また、アフリカのナミブ砂漠やペルーの海岸部といった海岸砂漠(西岸砂漠)の場合、砂漠の上に朝になるとが漂うことが多く、そうした霧を取り込んで降雨の少なさを補う植物も存在する[3]
降雨と流水イスラエル・ネゲブ砂漠のワジナイル川は砂漠の中で巨大なオアシスを形成している

砂漠は降雨量が非常に少ない地域であるが、ほとんどの砂漠ではまったく雨が降らないわけではなく、年に数度から数年に一度降水があるところが多い。この場合、数日間に分けて雨が降るのではなく、一度に大量の降水があることがほとんどである。降雨の間隔は不規則で、量も一定しないため、年によって降水量の変動が激しい。サハラ砂漠の極乾燥域の場合、24時間の降水量が年間平均降水量を上回ることも珍しくない[7]

砂漠は乾燥しているため地面は急速に水を吸収するが、森林が存在しないため降った雨は地表にプールされることなく、降雨の大量さも相まってかなりの水が一気に地表を流れ下るため、この降雨地点近くに人間がいた場合、砂漠で洪水に見舞われることになる。こうした大量の流水はワジと呼ばれる河道を形成するが、ワジには降雨時以外に水が流れることはない。ワジは地形が低く地下水も得やすいためにしばしばオアシスが形成されることがあるが、もともと河道であるため降水時には洪水となる。また、ワジ以外の地形にも流水の影響は色濃く表れている。山岳の斜面にある緩やかな斜面はその形状から山麓緩斜面(ペディメント)と呼ばれる[8]。ペディメントの下には礫で覆われた扇状地が広がり、これをバハダと呼ぶ。バハダのさらに下、盆地の底部には粘土に覆われた平坦な地形が広がることが多いが、これはプラヤ(粘土平野)と呼ばれる。プラヤは豪雨時の流水によって運ばれてきた堆積物によって形成されたと考えられている。プラヤにはこの豪雨時に周囲から運ばれてきた塩分も堆積することが多く、しばしば岩塩を産出する。また、プラヤの土壌の多くはアルカリ性を示す。

また、ワジではなく通年流水のある河川が砂漠の中を流れることがある。こういった河川は砂漠の外で大量の降雨がある地域から砂漠に流れ込むもので、外来河川と呼ばれる[9]。砂漠の河川にはタリム川アムダリア川シルダリア川のように砂漠の中で完結して外部へと流出しない内陸河川が多い。こうした内陸河川の末端には、アムダリア川やシルダリア川の注ぎ込むアラル海ヴォルガ川の流れ込むカスピ海、タリム川のかつて流れ込んでいたロプノールのようにが形成されることが多い。こうした砂漠の湖のほとんどは、流入河川から長年かけて流れ込んだ塩分が凝縮され、塩湖となっていることがほとんどである。また、湖を形成する前に砂漠の途中で消滅してしまいワジとなる河川も多い。こうした中、チグリス川ユーフラテス川ナイル川コロラド川のように砂漠を貫流し海へと注ぐ河川も存在する。こうした河川は砂漠の住民にとって貴重な水の供給源であり、中でもナイル川は巨大なオアシスを形成し、人類最古の文明のひとつである古代エジプト文明を育んだ。
生態系サボテン。多肉植物は砂漠に適応した植物のひとつであるアメリカ西部から南西部にかけて生息するハラタケ科のキノコ Agaricus deserticola 。表皮が乾燥・ひび割れると、成熟した胞子が放出される

この節は検証可能参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。出典を追加して記事の信頼性向上にご協力ください。(このテンプレートの使い方
出典検索?: "砂漠" ? ニュース ・ 書籍 ・ スカラー ・ CiNii ・ J-STAGE ・ NDL ・ dlib.jp ・ ジャパンサーチ ・ TWL(2023年4月)

砂漠は植生がほとんど存在しないため、植物を食料とする動物の生息も少ないが、植物・動物ともにまったく存在しないわけではなく、乾燥地に適応した種が各地に生息しており、独自の生態系を形成している。砂漠に生育する植物は大きく分けて、アカシアなどのように根を深く張りめぐらせて地中深くの地下水やわずかな降雨から水分を得るタイプ、などの内部の柔組織に大量の水を蓄える、サボテンに代表されるいわゆる多肉植物、そして種子などの形で休眠し、降雨があると急速に成長し花を咲かせて大量の種子を残し、短い期間で枯れるタイプに分けられる。乾燥地の土壌は塩分を含んでいることが多いため、耐塩性も高い植物が多い。砂漠内の例外としてオアシスは水を得ることができるため、多様な植物・動物が生育できる場所である。砂漠に生えるキノコは、襞が傘の内部に取り込まれたセコティオイド菌類(英語版)が多く、胞子が成熟したあとで表皮が割れ、胞子が露出するのが特徴である。

また、砂漠の砂は風によって巻き上げられ、遠く遠洋や他大陸にまで到達する。たとえばサハラ砂漠において巻き上げられる砂塵の量は年間20億から30億トンにもなり、2月から4月にかけてはカリブ海や南アメリカ大陸に、6月から10月にかけてはフロリダ州などに降り注ぐ[10]が、こうした砂は各地に害をもたらす一方、各大陸や海洋生態系にとって重要な栄養素の供給源ともなる。また、サハラ砂漠の熱はシロッコとして南ヨーロッパに運ばれ、緯度のわりに温暖な気候をもたらしている。
関連項目


休眠 ‐ 雨季が来るまで、一部の動物の卵や植物の種子は休眠状態となる。

スーパーブルーム(英語版) ‐ 雨季に砂漠で休眠していた草花が開花する現象。

海霧 ‐ 一部の砂漠は海からの朝霧によって水分が供給され、その水分を動植物はうまく活用する。

乾性動物(英語版)

人文カナートの横断面オアシス(リビアアルジェリアヒトコブラクダキャラバン。ラクダは砂漠に適応した家畜であり、砂漠交易を飛躍的に拡大した

砂漠の大部分は農耕が不可能であり、大部分は人類が定住することが不可能な地域となっているが、古来よりオアシスに農耕民が定住し、ナツメヤシなどの栽培を行い生計を立てていた。こうしたオアシスにおいては、しばしばフォガラカナートといった地下水路が建設され、オアシスにまで水を引き込んでいた[11]。こうしたオアシス農業はしばしば多くの人口を支えるに十分なものとなり、オアシス都市を形成する基盤となった。こうした砂漠定住民の伝統的生活様式は、たとえば家屋においては雨がほとんど降らず排水の必要がないため屋根が平らであり、また外気を遮り直射日光を避けるために窓が非常に小さく、そして多くが日干し煉瓦を用いて作られていたり、また衣服においては直射日光や砂塵から身を守るために、ゆったりとした衣服で全身を覆い露出部分を非常に小さくするなど、砂漠の気候に適応したものとなっていた。

こうしたオアシス定住民のほかに、旧大陸の各地の砂漠には遊牧民が存在していた。砂漠の有用性が飛躍的に向上したのは、ラクダを家畜化することに成功したのちのことである。ラクダは乾燥地に適応した家畜であり、を食用とすることもでき、ラクダ乳はしばしば遊牧民の主食ともなっていた[12]が、もっとも有用性を発揮したのは運輸の分野においてである。ラクダは荷役動物として使用することが可能であり、ラクダを使用することでそれまで不可能であった砂漠越えの交易が可能になった。これによりオアシス都市をつなぎながらタクラマカン砂漠を越える東西交易のメインルート、いわゆるシルクロードが使用可能となり、大航海時代の到来まで東西交易の柱となっていた。こうした交易の利益によって、オアシス都市はしばしば小規模な都市国家(オアシス国家)を形成した。また、3世紀にはサハラ砂漠にもラクダが伝来し[13]、これによってサハラ砂漠を南北に越える商業ルートの開設が可能となり、サハラ交易が開始された。このサハラ交易は北のと南のの交易を柱とするものであり、この交易の生む富によってサハラの南に位置するサヘル地帯には、ガーナ王国マリ王国ソンガイ王国カネム・ボルヌ帝国といった大規模領域国家が成立することとなった。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:73 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef