砂の器
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

今西 栄太郎:丹波哲郎警視庁捜査一課警部補[20]

吉村 弘:森田健作西蒲田警察署刑事課巡査[21]

和賀 英良/本浦 秀夫:加藤剛天才ピアニスト兼作曲家 

高木 理恵子:島田陽子高級クラブ「ボヌール」のホステス(和賀の愛人)

田所 佐知子:山口果林前大蔵大臣・田所重喜の令嬢。和賀と婚約予定

田所 重喜:佐分利信(特別出演)*クレジット上では特別出演記載なし前大蔵大臣。和賀の後援者

三木 謙一:緒形拳元亀嵩駐在所巡査

三木 彰吉:松山省二謙一の養子

三木 謙一の妻:今井和子

三木の元同僚・安本:花沢徳衛

本浦 千代吉:加藤嘉秀夫の父。ハンセン病に侵されている

本浦 秀夫(少年期):春田和秀

警視庁捜査一課長:内藤武敏

警視庁捜査一課捜査三係長・黒崎警部:稲葉義男今西刑事の上司

捜査本部刑事:丹古母鬼馬二山崎満、松波喬介、渡辺紀行、山本幸栄、田畑孝、高橋寛、北山信、千賀拓夫、浦信太郎、中川秀人、沖秀一、三島新太郎

三森署署長:松本克平

三森署の若い巡査(ジープ運転):加藤健一

岩城(亀田)署長:山谷初男

岩城(亀田)署の刑事:森三平太

亀田の旅館「朝日屋」主人:今橋恒

村の巡査:浜村純本浦親子を村から追い出す巡査

毎朝新聞記者・松崎:穂積隆信

国立国語研究所地方方言研究室・桑原技官:信欣三

理恵子の勤めるクラブ「ボヌール」のホステス・明子:夏純子

理恵子の勤めるクラブ「ボヌール」のママ:村松英子(クレジット上では記載なし)

理恵子の住むアパート「若葉荘」住人:野村昭子

伊勢の旅館「扇屋」主人:瀬良明

伊勢の旅館「扇屋」女中:春川ますみ

伊勢の映画館「ひかり座」事務員:田辺和佳子(クレジット上では記載なし)

バァー「ろん」[22]のホステス・大塚きみ子:猪俣光世

バァー「ろん」のホステス:高瀬ゆり

バァー「ろん」のバーテン:別所立木

西蒲田署刑事・筒井:後藤陽吉

西蒲田署署長:西島悌四郎

西蒲田刑事課長:土田桂司

世田谷の安原外科病院の院長:櫻片達雄

世田谷の安原外科病院の院長の妻:村上記代

世田谷署の巡査:久保晶

警視庁刑事:今井健太郎、山本幸栄、小森英明、原田君事

警視庁科学検査所技師:藤田朝也(クレジット上ではひらがな名義)

浪速区役所係員:松田明

浪速区役所女係員:吉田純子

恵比須町の巡査:中本維年

和賀の友人:菊池勇一、大杉雄二伊東辰夫

亀嵩の農家の主婦:水木涼子

三木の元同僚:高木信夫

慈光園の係員:戸川美子

田所の秘書:加島潤

料亭の女中:坂田多恵子

列車のウエイトレス:東風弓子

山下 妙:菅井きん千代吉を知る縁者(義理の姉)

桐原 小十郎:笠智衆

通天閣前の商店街の飲食店組合長:殿山泰司

伊勢の映画館「ひかり座」支配人:渥美清(友情出演)*クレジット上では友情出演記載なし

映画版の特徴

『砂の器』のテーマ曲である、ピアノと管弦楽のための組曲「宿命」を劇的に使っていることが最大の特徴といえる。テーマ曲のみならず、邦画の音楽費が相場100万円の時代に、本作は300万円がかけられ、映画『犬神家の一族』が公開されるまでは、邦画で最も音楽にお金をかけた作品であった[23]
クライマックス

劇中での和賀は、過去に背負った暗くあまりに悲しい運命を音楽で乗り越えるべく、ピアノ協奏曲「宿命」を作曲・初演する。

物語のクライマックスとなる、捜査会議(事件の犯人を和賀と断定し、逮捕状を請求する)のシーン、和賀の指揮によるコンサート会場(撮影は埼玉会館が使用されている)での演奏シーン、和賀の脳裏をよぎる過去の回想シーンにほぼ全曲が使われ、劇的高揚とカタルシスをもたらしている。回想シーンでは、和賀英良が父と長距離を放浪していた際、施しを受けられず自炊しながら生活する様子、子供のいじめにあい小学校を恨めしそうに見下ろす様子、命がけで父を助け和賀少年がケガを負う様子などが描写されている。原作者の松本清張も「小説では絶対に表現できない」とこの構成を高く評価した[24]
原作と異なる点

今西・吉村が利用した列車が時代にあわせて変化しているほか(亀嵩へ向かう際、原作では東京発の夜行列車で1日かけてもたどり着かなかったが、映画版では当時の主流であった新幹線と特急を乗り継いで向かっている)、和賀英良の戸籍偽造までの経緯も異なっている[注 5]。また、中央線の車窓からばら撒かれた白い物(犯行時に血痕が着いたシャツの切れ端)は原作では今西が拾い集めたことになっているが、映画版では今西が被害者の生前の経歴を調べるために出張している間に吉村が1人で発見し、独断で鑑識課へ持って行ったという流れになっている。その他にも、原作ではハンセン(氏)病への言及は簡潔な説明に止められているが(言及箇所は第六章・第十七章中の2箇所)、映画版では主に橋本忍のアイデアにより、相当の時間が同病の父子の姿の描写にあてられている。なお、今西刑事がハンセン(氏)病の療養所を訪問するシーンは原作にはなく、映画版で加えられた場面である[25]。映画版では、和賀英良は原作どおりの前衛作曲家兼電子音響楽器(現在でいうシンセサイザー)研究家ではなく、天才ピアニスト兼、ロマン派の作風を持つ作曲家に設定変更された。また、前述の通り、超音波発生装置による殺人トリックは、この映画化以降、一度も映像化されたことがない。
「宿命」

「宿命」は音楽監督の芥川也寸志の協力を得ながら、菅野光亮によって作曲された。なお、サウンドトラックとは別に、クライマックスの部分を中心に二部構成の曲となるように再構成したものが、『ピアノと管弦楽のための組曲「宿命」』としてリリースされた。

2014年には『砂の器』公開40周年として、ビルボードジャパンにて西本智実指揮による組曲「宿命」が演奏された[26]
エピソード

『砂の器』製作以前に、橋本忍脚本・野村芳太郎監督のコンビは、『張込み』『ゼロの焦点』の映画化で松本清張から高評価を得ていた。『砂の器』を連載するに当たって、清張は二人に映画化を依頼している。しかし、送られてくる新聞の切り抜きを読みながら、橋本は「まことに出来が悪い。つまらん」と映画化に困難を感じるようになり、半分ほどで読むのを止めてしまった。しかし清張自らの依頼を断るわけにもいかず、ともかくロケハンに亀嵩まで出かけて行った。そこで後述する山田洋次とのやりとりがあり、帰京した後、わずか三週間、宿に籠っただけで脚本を書き上げた。後に橋本は「父子の旅だけで一本作る。あとはどうでもいいと割り切っていたからね。手間のかからん楽な仕事だった」と述べている。しかし、野村芳太郎が旅のシーンを撮り始めた矢先、企画はいったんお蔵入りになってしまう。当時の松竹社長・
城戸四郎の命令によるものだという(予算が膨大にかかることが予測された上、「大船調」を確立させた城戸が、殺伐とした刑事映画を好まなかったことなどが反対の理由だといわれる)[27]

橋本忍の父親は亡くなる直前、橋本のシナリオ2作品を枕元に置いていた。(橋本の妻が父親にシナリオを送っていた)その作品とは「切腹」と、その時点では映画化が宙に浮いていた「砂の器」だったという。そして、「お前の書いたホンで読めるのはこの2冊だけだ。出来がいいのは『切腹』の方だが、好きなのは『砂の器』だ」と言い、「砂の器」が映画化されれば絶対当たると述べたという。これが橋本忍に映画化を決意させるきっかけになった[28]

橋本忍は松竹に『砂の器』の映画化を断られた後、東宝、東映、大映に企画を持ち込むが、いずれも「集客が困難」という理由で断られている。業を煮やした橋本は、ついに製作のため、1973年に「橋本プロダクション」を設立した。野村芳太郎も「どうしてもこれを撮りたい」と希望したことで、当時東宝の製作の担当重役であった藤本真澄が橋本忍と話し合い、東宝での『砂の器』製作を内定、野村芳太郎も「松竹を離れてもやる」としていた。しかしその後、松竹専属の野村監督を東宝に貸し出すことを躊躇した城戸が翻意し、松竹・橋本プロの共同製作を橋本に持ち掛けた。橋本は、それを聞いて激昂したが、野村の顔を立てるにはやはり古巣の松竹での映画化が望ましいと考えて城戸と交渉、松竹での製作が決定した[24][29]。製作費に関しては、橋本プロダクションと折半することで決着がつけられた[30]

橋本忍が最初に本映画のタイトルとして考えていたのは、クライマックスの音楽と同じく「宿命」だった。理由は原作の「砂の器」の「器」が読みにくいと考えたためだった。そのため、最初の準備稿では表紙に「砂の器?宿命?」と書かれている。丹波哲郎も「宿命」というタイトルを推したが、「『砂の器』の方が売りやすい」と橋本が翻意し、原作通りとなった[31]

本映画の脚本を橋本と担当した山田洋次は、シナリオの着想に関して、以下のように回想している。「最初にあの膨大な原作を橋本さんから「これ、ちょっと研究してみろよ」と渡されて、ぼくはとっても無理だと思ったんです。それで橋本さんに「ぼく、とてもこれは映画になると思いません」と言ったんですよ。そうしたら「そうなんだよ。難しいんだよね。ただね、ここのところが何とかなんないかな」と言って、付箋の貼ってあるページを開けて、赤鉛筆で線が引いてあるんです。「この部分なんだ」と言うんです。「ここのところ、小説に書かれてない、親子にしかわからない場面がイメージをそそらないか」と橋本さんは言うんですよ。「親子の浮浪者が日本中をあちこち遍路する。そこをポイントに出来ないか。無理なエピソードは省いていいんだよ」ということで、それから構成を練って、書き出したのかな」[29]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:200 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef