石鹸
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乾燥するとひび割れることから、防湿包装される。プラスチック包装が普及するまではパラフィン紙(グラシン紙)が用いられた。
紙石鹸

固形石鹸を紙のように薄く削いだもので、手洗い一回分として携帯可能である。もともとは子供向けで駄菓子屋などで売られていた[注釈 1]

売り上げ下火となっていたが、新型コロナウイルスの流行に伴い手指の洗浄や除菌への関心が高まり、再び注目されつつある[12][13][14]
粉末石鹸

主に洗濯用石鹸の形状。必要量を計量しやすく、溶かしやすい。
液体石鹸

常温でゼリー状から粘液状になるカリ石鹸を適度に加水したもの。ホテルなど宿泊施設では減った分だけ補充すればよい点が管理に有利なため普及している。手洗い用(ハンドソープ)と浴用(ボディソープ)があり、前者は殺菌と洗浄を、後者は香料や保湿を重視している。液状以外にゲル状、状(プッシュ式容器による)の製品がある。
石鹸ではないもの

界面活性剤として脂肪酸塩を利用していないため石鹸ではないが、一般に、または法令上「石鹸」とされているものがある。
逆性石鹸(陽性石鹸)

界面活性剤として脂肪族アミン第四級アンモニウムイオン)を用いる。界面活性を持つイオンが陽イオンであるため、陽イオン界面活性剤に分類される。石鹸の脂肪酸イオンは陰イオンであり、性質が逆なので逆性石鹸と呼ばれる。

洗浄力は低いが殺菌力が強く、殺菌剤消毒薬として利用される。石鹸と混合すると界面活性剤同士が中和反応を起こして相殺し、効果が減じる。

塩化ベンザルコニウム塩化ベンゼトニウムが外用の消毒薬として器具や手などの消毒に用いられている。
両性石鹸

両性イオン界面活性剤に分類される殺菌剤。消毒薬に利用される。普通の石鹸と混合しても殺菌力がある程度維持される。
ステンレスソープ

金属のイオン性を利用した臭い消し製品。作用原理が全く異なる。石鹸が作るミセルの構造。石鹸の分子は、その一つ一つの両端に親油基と親水基を持ち、汚れ(≒油)があると、そこに多数の石鹸の分子の親油基の側が次々と着き、結果として内側に親油基を向け外側に親水基を向けた状態で多数の分子の向きが揃い、包み込むようにして球状のミセルとなり、水とともに流れてゆく状態になる。
歴史
起源17世紀中頃の石鹸工場を描いた版画

石鹸の歴史は紀元前3000年代に始まるといわれている[15]

古代から水だけで落ちにくい汚れに対して粘土灰汁、植物の油や種子[注釈 2]などが利用されていたが、やがて動物のを焼くときに滴り落ちた脂肪の混合物に雨が降り、アルカリによる油脂鹸化が自然発生して石鹸が発見されたと考えられている。石鹸の「鹸」は「灰汁」や「塩基(アルカリ)」を意味する字であり(鹸性=塩基性、アルカリ性)、石鹸を平たく解釈すれば「固形塩基」「固形アルカリ」となる。

伝説では神への供物として羊を焼いたときの脂と灰で石鹸らしきものが誕生したとされ、それが古代ローマの「サポーの丘(英語版)」での出来事であり soap の語源になったとされている[15][16]。一方、シュメール粘土板に薬用石鹸の記述がみられる。中東では現在でも石鹸が地場産業となっている地域(ナーブルスアレッポなど)がある[17]
普及

ヨーロッパではプリニウス博物誌の記載が最初で、ゲルマン人ガリア人が用いていたこと、すでに塩析が行われていたことが記されている。その後いったん廃れるが、アラビア人に伝わり生石灰を使う製造法が広まると8世紀にスペイン経由で再導入され、家内工業として定着していった。12世紀以降、それまでのカリ石鹸に替わりオリーブ油を原料とする固形のソーダ石鹸が地中海沿岸を中心に広まり、特にフランスマルセイユ9世紀以降主要な集散地から生産の中心地となった。

18世紀末には産業革命のもとで原料のアルカリ剤の大量生産が可能となったことで、石鹸も大量生産されるようになり普及した[15]。医学の進歩ともあいまって、皮膚病や多くの経口伝染病が減少した[18]

1916年にはドイツで世界初の合成洗剤が誕生[15]。1933年にはアメリカで世界初の家庭用合成洗剤が発売された[15]
日本

日本には安土桃山時代に西洋人により伝えられたと推測されている[19]。最古の確かな文献は、1596年慶長元年8月)、石田三成博多の豪商神屋宗湛に送ったシャボンの礼状である。

最初に石鹸を製造したのは、江戸時代蘭学者宇田川榛斎宇田川榕菴で、1824年文政7年)のことである。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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