石炭
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ジュラ紀(1億5千万年前頃): ヨーロッパ中南部、北米大陸、アジア東部

白亜紀(1億2千年万前頃): ヨーロッパ中部 北米、南米大陸、アフリカ大陸

新生代第三紀(7?2千万年前)の植物は、現在に近い樹種が主体。産出する石炭は、外国では石炭化の低い褐炭が主体だが、日本の炭鉱では瀝青炭が産出される。

ドイツ、北米、中米、オーストラリア、日本

植物の体はセルロースリグニンタンパク質樹脂などなどで構成されている。このうち古生代に繁茂したシダ類ではセルロースが40?50%リグニンが20?30%であり、中生代以後に主体となる針葉樹類ではセルロースが50%以上リグニンが30%である(何れも現生種のデータ)。これらの生体物質を元にして石炭が形成された。石炭の成り立ちの主な参考文献 - 『石炭技術総覧』Batman、『太陽の化石:石炭』第1章石炭の生い立ち

シルル紀後期にリグニンを有した植物が登場した。歴史上上陸した植物が立ち上がるためにはセルロース、ヘミセルロースを固めるためのリグニンが必要であった。リグニンを分解できる微生物がその当時はいなかったので植物は腐りにくいまま地表に蓄えられていった。これが石炭の由来となる。石炭紀に石炭になった植物はフウインボクリンボクロボクなどであり、大量の植物が腐らないまま積み重なり、良質の無煙炭となった。石炭紀以降も石炭が生成されたが時代を下るに従って生成される石炭の量も質も低下することとなった[8]白色腐朽菌は、地球上で唯一リグニンを含む木材を完全分解できる生物で、リグニン分解能を獲得したのは古生代石炭紀末期頃(約2億9千万年前)であると分子時計から推定された。石炭紀からペルム紀にかけて起こった有機炭素貯蔵量の急激な減少は白色腐朽菌のリグニン分解能力の獲得によるものと考えられている[9][10]
石炭の種類石炭の化学構造の例:瀝青炭
石炭化度による分類

石炭は炭素の濃集度合(炭素の濃縮の程度) により石炭化度の高い方から、無煙炭、瀝青炭、亜瀝青炭、褐炭、亜炭、泥炭に分類される[5][3]。日本で一般に石炭と呼ばれているものは、このうち無煙炭から褐炭までである[5]。なお、石炭化度は発熱量と燃料比(固定炭素÷揮発分、通常では無煙炭:4以上、瀝青炭:1?4、褐炭:1以下)を用いているが、国際的には一般に揮発分が用いられている[5]

(石炭化度の高い順に)
無煙炭 (anthracite)
炭素含有量90%以上[5]。最も石炭化度(炭素分)が高く燃やしても煙をほとんど出さない[5][3]カーバイドの原料、工業炉の燃料に使われるほか、家庭用の練炭や豆炭の原料となることもある[5]。かつては軍艦用燃料に重んじられた。ただし揮発分が低く、着火性に劣る。焼結に使用可能な低燐のものは原料炭の一種として高価格で取引される。
半無煙炭 (semianthracite)
炭素含有量80%以上。無煙炭に次いで石炭化度が高いが、粉鉄鉱焼結にも適さない一方、電力等微粉炭ボイラー用としては揮発分が少なすぎて適さず、比較的安値で取引される一般炭。セメント産業の燃料や流動床ボイラに使われる。着火性に劣るが比較的発熱量が高く、内陸工場への輸送コストが安く済む。
瀝青炭(れきせいたん) (bituminous coal)
炭素含有量70?75%[5]。石炭として最も一般的なもの[3]。加熱により溶けて固まる粘結性が高く、コークス原料や製鉄用燃料となる[5]
亜瀝青炭 (subbituminous coal)
瀝青炭に似た性質を持つが、水分を15?45%含むため比較すると扱いにくい[5]。粘結性がほとんどないものが多い。コークス原料には使えないが、揮発分が多くて火付きが良く、熱量も無煙炭・半無煙炭・瀝青炭に次いで高い。特にボイラー用の燃料として需要がある[5]。豊富な埋蔵量が広く分布しており、日本で生産されていた石炭の多くも亜瀝青炭であった[5]
褐炭 (brown coal)
炭素含有量60%以上[5]。石炭化度は低く植物の形を残すものも含まれ、水分・酸素の多い低品位な石炭である[5][3]練炭・豆炭などの一般用の燃料として使用される[5]。色はその名の示す通りの褐色。水分が高すぎて微粉炭ボイラの燃料としては粉砕/乾燥機の能力を超えてしまう場合が多く、重量当たり発熱量が低いので輸送コストがかさみ、脱水すれば自然発火しやすくなるという扱いにくい石炭なので価格は最安価で、輸送コストの関係で鉱山周辺で発電などに使われる場合が多い。褐炭を脱水する様々な技術の開発が行われている。また、水素原料として有望視されている[11]
亜炭 (lignite)
褐炭の質の悪いものに付けられた俗名[5]。炭素含有量60%未満[5]。ただし、亜炭と呼ぶ基準は極めて曖昧である。学名は褐色褐炭。埋れ木も亜炭の一種である。日本では太平洋戦争中に燃料不足のため多く利用された。現在では亜炭は肥料の原料としてごく少量利用されているにすぎない[5]
泥炭 (peat)
泥状の炭。石炭の成長過程にあるもので、品質が悪いため工業用燃料としての需要は少ない[5]ウイスキーに使用するピートは、大麦麦芽を乾燥させる燃料として香り付けを兼ねる[5]。このほか、繊維質を保ち、保水性や通気性に富むことから、園芸用土として使用される。

日本産業規格による分類 (JIS M 1002[12])分類発熱量
補正無水無灰基
kJ/kg (kcal/kg)燃料比粘結性主な用途備考
炭質区分
無煙炭 (A)
AnthraciteA1---4.0 以上非粘結一般炭
原料炭
A2火山岩の作用で生じたせん石
瀝青炭 (B, C)
BituminousB135,160 以上
(8,400 以上)1.5 以上強粘結一般炭
原料炭
B21.5 未満
C33,910 以上 35,160 未満
(8,100 以上 8,400 未満)?粘結一般炭
原料炭
亜瀝青炭 (D, E)
Sub-BituminousD32,650 以上 33,910 未満
(7,800 以上 8,100 未満)?弱粘結一般炭
E30,560 以上 32,650 未満
(7,300 以上 7,800 未満)---非粘結一般炭
褐炭 (F)
LigniteF129,470 以上 30,560 未満
(6,800 以上 7,300 未満)---非粘結(一般炭)

F224,280 以上 29,470 未満
(5,800 以上 6,800 未満)---

用途による分類

原料として製鉄用コークス、石炭化学工業、都市ガスなどに使用されるものを原料炭、燃料として火力発電や一般産業用ボイラー、セメント回転炉燃料などに使われる石炭を一般炭という[5][3]
粒度による分類

石炭は形状または粒度から、大きい順に切込炭、塊炭、中塊炭、小塊炭、粉炭、微粉炭に分類される[5]
石炭の採掘ワイオミング炭鉱の露天掘り詳細は「炭鉱」を参照

石炭は太古の植物の遺体が堆積したものであるため、地中には地層の形で存在する。石炭の鉱山を特に炭鉱と呼び、炭鉱が集中している地域を炭田と呼ぶ。

石炭の層(炭層という)が地表または地表に近いところに存在する場合、地面から直接ドラッグラインという巨大なパワーショベル等で掘り進む露天掘りが行われる。アメリカやオーストラリアの大規模な炭鉱で多く見られる。中国の撫順炭鉱は、700年ほど前から露天掘りがなされたと言われており、当時は陶器製造のための燃料として用いられたとされる。その後、朝は「風水に害あり」との理由から採掘禁止としていたが、1901年、政府許可のもとで民族資本により採掘が始まった。その後、ロシア資本が進出、さらに日露戦争後は東清鉄道及びその付属地日本の手に渡ることとなり、1907年には南満州鉄道の管理下に移って、鞍山の鉄鋼業の発展に寄与した。

20世紀初頭、英国のウェールズには600以上もの炭鉱があり、約20万人が働いて経済を支えていた。1911年には石炭は重量で輸出の9割を占めていた。

一方で地下深いところに石炭がある場合、日本の在来採炭法では炭層まで縦坑を掘り、その後炭層に沿って水平または斜め(斜坑)に掘り進む。石炭は層状に存在するので採掘は広い面積で行われるため、放置すれば採掘現場の天井が崩れ落ちる危険性が非常に高い。石炭を採掘する際には、天井が崩れないように支柱を組むなど様々な対処を行いながら掘り進む。従来採炭法では手持ち削岩機とダイナマイトの併用が多かったが、採掘も手間がかかり、崩した石炭をトロッコに積むのも手作業で、掘ったあとに支柱を組むので能率が悪かった。

オーストラリアやアメリカ合衆国などでは日本に比べ坑内掘りでも炭層が水平で厚く、厚さ数メートルにも及ぶ場合があり、ロングウォールという一種のシールドマシンによって機械採炭を行っている。


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