石油
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これらは岩盤内の隙間を移動し、貯留層と呼ばれる砂岩や石灰岩など多孔質岩石に捕捉されて油田を形成する。この由来から、石炭とともに化石燃料とも呼ばれる。

有機成因論の根拠の一つとして石油中に含まれるバイオマーカーの存在がある。光合成生物の葉緑体に由来するポルフィリン、真核生物が生産するステロールコレステロールなど)に由来するステラン、同様に細菌が生産するホパノイドに由来するホパン、あるいは酵素の関与しない化学反応では生成が困難な光学活性をもつ有機化合物などがバイオマーカーとして石油に含まれている[5][6]。これらバイオマーカーの組成と石油の熟成度には関連性が見出されている。また、石油中に含まれる炭化水素の炭素同位体比に関して、炭素数の少ない炭化水素ほど質量の軽い炭素同位体を含む割合が多くなるという傾向が、熱分解による炭化水素の生成の傾向と同じであることが知られている[要出典]。この結果は、メタンのような炭素数の少ない炭化水素の重合によって石油が生成したとする無機成因説とは矛盾する。

地球物理学者の石井吉徳は「2.25億年前に超大陸パンゲアが次第に分離、現在の姿になるまでの過程で2億年前の三畳紀(Triassic)以後に存在したテチス海(Tethys)が地球史上の石油生成に極めて特異だった。中生代は二酸化炭素の濃度が今より10倍も高く、気温は10℃も高かった。つまり地球温暖化で、植物の光合成は極めて活発であった。しかもこのテチス海は赤道付近に停滞し、海水は攪拌されず長く酸欠状態が続いた。このため有機物は分解されず、石油熟成に好条件であったことが中東油田の始まりである。石油は探せばまだまだあるという単純な発想は地球史から見て正しくない。」と有限性を強調している[7]

また、2021年に石油と同等の炭化水素を合成する植物プランクトンのDicrateria rotunda (D. rotunda)が発見された。このプランクトンの合成する一連の飽和炭化水素の炭素数は10から38までであり、これはガソリン(炭素数10-15)、ディーゼル油(炭素数16-20)、燃料油(炭素数21以上)に相当する[8][9]
非生物由来説(無機成因論)

石油「無機」由来説は、1940年代にBP(ブリティッシュペトロリアム)の研究所内では、無機生成物であることが主要理論であったが、市場戦略的な理由で機密扱いにしていた[要出典]。1850年代以降ロシア帝国の化学者メンデレーエフなどが提唱して、旧東側諸国では従来から定説とされていた学説である[要出典]。旧西側諸国でも、天文物理学者であるトーマス・ゴールドなどが無機由来説を唱えた[10]

無機成因論の根拠としては「石油の分布が生物の分布と明らかに異なる」「化石燃料では考えられないほどの超深度から原油がみつかる」「石油の組成が多くの地域でおおむね同一である」「ヘリウムウラン水銀ガリウムゲルマニウムなど、生物起源では説明できない成分が含まれている」などが挙げられる[要出典]。また、生物起源論が根拠としている、炭素数の少ない炭化水素ほど質量の軽い炭素同位体を含む割合が多くなるという傾向は、地下から炭化水素が上昇する過程で、分子の熱運動により重い同位体が分離されたと解釈する[要出典]。この無機由来説に基づけば、一度涸れた油井もしばらく放置すると、再び原油産出が可能となる現象を説明することができる[要出典]。また超深度さえ掘削できれば、日本はもちろん世界中どこでも石油を採掘できる可能性があることになる。

石油の大部分が非生物由来であるとする仮説は、多くの地質学的および地球化学的証拠と矛盾しており、今日では認められていない[11]。非生物起源の炭化水素自体は存在するが、その量については商業的に有益な量ではまったくない[4]。米国石油地質学者協会のラリー・ネイションは「論争は、非生物起源の石油埋蔵量が存在するかどうかについてではありません」「論争は、それらが地球の全体的な埋蔵量にどれだけ貢献するか、そして地質学者がそれらを探すためにどれだけの時間と労力を費やすべきかについてです。」と述べている[12]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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