石器
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歴史
初期の石器

人間と石器とのかかわりは250万年以上前までさかのぼる。この石器製造の証拠が残っている最初期の時点で、すでに打ち割り面を複雑に組み合わせた加工がみられるので、単純な石の利用はさらにさかのぼるだろうと推察される[1]人類が使い始めた時期は、約330万年前とする説もある[6]
石器の発展

アフリカやユーラシアの初期人類による礫器は数10万年以上ほとんど変化せず同じような作り方で製作されていた[3]。人類史的な区分では約260万年前から1万年前頃までを「旧石器時代」あるいは「旧石器文化」という[3]

最も古いとされるホモ属のホモ・ハビリスは、240万年ほど前に現れ、オルドワン石器と呼ばれる原始的な石器を使用していた。


遅くともおよそ170万年前までには登場したホモ・エレクトスは、それまでよりも精巧なアシュレアン(Acheulean)石器を使用した。

彼らの亜種であるホモ・ハイデルベルゲンシスは、アフリカから出て中東を経由し、30万年ほど前にヨーロッパまで進出したが、使用していた石器は、より古い時代のホモ・エレクトスとそう変わらなかったとされ、両者を別種と見なさない説もある。

40万年ほど前に登場したネアンデルタール人は、ホモ・サピエンスよりも前にホモ・ハイデルベルゲンシスから枝分かれした。彼らはルヴァロア技法という洗練された石器加工技術を持ち、ホモ・サピエンスよりも数十万年も前にヨーロッパにまで進出していた。また、アスファルトなどを使用し石器を他の素材と接着して使用していた痕跡もある。


5?4万年ほど前、ホモ・サピエンスが遅れてアフリカから進出。まもなくネアンデルタール人は絶滅するが、ユーラシア大陸に後からやってきたホモサピエンスと出会い(両者間の争いもあっただろうが)、両者が交わり子孫が生まれるということも起きていたようで、残された骨からDNA解析したところ、ホモサピエンスの遺伝子の1?2%程度がネアンデルタール人由来のものと判明している。[注釈 2])。

石器の衰退

1万年前をすぎると人類は煮沸具や貯蔵具、食器として土器を利用するようになり世界各地に普及した[3]。また、土器につづき金属器が世界各地に普及したことで道具は石器は金属器に置き換わっていった[3]
分類の体系

石器の分類には技術形態学的に基づく分類と機能形態学に基づく二つの体系がある[3]

代表的な分類にフランスの著名な先史学者フランソワ・ボルド(fr:Francois Bordes、1919-1981)が案出した厳密な石器分類基準がある。

以下は色々な観点からの分類である[7]

石器は、加工方法によって大きく2種類に区分される。石同士を打ち付けたり、あるいは道具を使用して打ち叩くことによって、剥片をはいで道具として使用するのにかなった形に成形する打製石器(だせいせっき)と、石を磨き上げた磨製石器(ませいせっき)[8]とがある。

「石核石器」(せっかくせっき)[注釈 3]、「剥片石器」(はくへんせっき)[注釈 4]という区分もある。

石器製作の過程で大小様々なカケラが出てくる。それらを総称して「石製遺物」という。またそれらは石器・剥片[注釈 5]、石核[注釈 6]、砕片[注釈 7]などに分類される。

砂岩玄武岩のような礫状のものを材料とした重量のある大型石器と、黒曜石サヌカイトなどのような緻密な材料の石の剥片を材料とした軽量の小型石器に分けることも多い[5]

前期・中期・後期の各時期に使用された石器に分類することもある。例えば、前期旧石器時代に主に使用された石器としては、礫器(チョッパー、チョッピング・トゥール)、祖型ハンドアックス、握斧(クリ-ヴァー)、手斧(ハンドアックス)、尖頭石器、祖型彫器(プロト・ピュアリン)、叩石(ハンマー・ストーン)、剥片、ルヴァロア型石核などがある[9]

打製石器・磨製石器・礫塊石器
打製石器

打製石器は人が石に打撃または圧力を加えて石を割ってできあがった石器である[3]

このうちオルドワン型石器群は、ヒト科人類による最古の石器群と言われている[注釈 8][10]。礫の一部を打撃して造るチョッパー・チョッピングツールを主体とする。この石器群は、ケニアトゥルカナ湖東海岸の諸遺跡やタンザニアオルドヴァイ峡谷の遺跡などで出土している。因みに、この石器の担い手はホモ・ハビリスもしくは頑丈型猿人と推測されている。
磨製石器磨製石器製の斧頭(斧の刃)。fr:Museum de Toulouseにて展示。

磨製石器は人が石を磨いてできあがった石器である[3]

J.ラボックによって新石器時代の指標とされたが、実際には中石器時代に当たる紀元前9000年に北西ヨーロッパ西アジアで局部磨製石器が出現している。

日本列島では後期旧石器時代である3万?4万年前のものと推定される局部磨製石斧が、群馬県岩宿遺跡栃木県磯山遺跡、長野県野尻湖遺跡群杉久保遺跡・日向林B遺跡など)、東京武蔵野台地栗原遺跡千葉県三里塚55地点遺跡などから出土し、旧石器時代に磨製石器が存在したことが明らかになった[11]。小田静夫によれば、日本列島の旧石器時代の磨製石斧は、3-4万年前に集中し、一旦消滅してその後は縄文時代草創期にならないと出現しないが、現在、世界最古の磨製石器とされる[12][13]。「局部磨製石斧」および「石斧」も参照
礫塊石器

礫塊石器は打製石器や磨製石器のように製作する過程の痕跡をとどめず使用の痕跡だけが残されている石器をいう[3]。打製石器を作るための敲石(たたきいし)、磨製石器を作るための砥石、穀物や堅果類を調理するための石皿などである[3]
主な石器
石刃、ブレード (blade)
後期旧石器時代に特徴的な石器の素材。石核から大量の石刃を創り出し、これを加工して石器にする。日本では後期旧石器時代の最終末期に沖縄を除き日本列島全域に広がった細石刃がある。
石核石器 (core tool)
素材となる石(母岩)を打ち割り、形を整え、刃をつけた石器
剥片石器 (flake tool)
母岩から破片(剥片)を割り取り(?離)、剥片の形を整え、割れ目を刃に利用した石器
礫器 (pebble tool)
最も原始的な石器の一つである。
チョッパー (chopper)
礫の一部に片面から数回の打撃によって打ち欠いて刃をつけた石器。片刃の礫器とも呼ばれる。刃の断面の角度は20° - 30°くらいが多い。
チョッピング・トゥール (chopping tool)
礫の一部に両面から交互に打撃を加えて、表面を剥離させジグザグ状の刃をつけた石器。
握斧、握槌、ハンド・アックス (hand axe)
礫の全体を両面から打ち欠いて刃をつけた石器。上端が尖る形状が多く、舌状、フィクロン形、槍先形あるいはミコク形、卵形、心臓形、アーモンド形などと呼称される場合がある。
尖頭器 (point)
先端を鋭く尖らせた石器。槍先に付けたと考えられる。細長く鋭く尖る形のものが典型的だが、それ以外にも多くの種類の尖頭器がある。石槍とも言う。斜軸尖頭器という種類は、狩猟用の槍先とされ、中期旧石器時代(約12万、13万年前 - 約3万年前、旧人の時代)の指標である。岩手県宮守村(現在の遠野市)の金取遺跡から出土している。
削器、スクレーパー (scraper)
F.ボルドによると剥片の先端部分を打ち欠いて刃をつけた石器。
掻器、端削器、エンド・スクレーパー (end scraper)


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