睡眠欲
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ネコの場合も15日で死亡した記録がある[6]。これらの動物が死に至った死因は特定できていないが、可能性が高いのはストレス反応であると考えられている[7]

ヒトにおいては、睡眠科学の分野で最も有名な記録として、1946年に行われたランディ・ガードナーの断眠実験(英語版)がある。その記録は、クリスマス休暇中の自由研究課題を「睡眠不足が人体に与える影響」とした仲間たちがコイントスで被験者を決め、当時16歳のガードナーが断眠することとなった。スタンフォード大学の睡眠学研究者William C. Dement(英語版)が立ち合い、断眠終了後に海軍病院でアメリカ海軍医官 John J. Ross 少佐らが脳波を取るなどの健康への影響や記録をとった[8]。結果として、264時間の連続不眠時間というギネス記録と研究者の貴重な記録となった[9][8][7]

ギネス記録は1986年に453時間40分の最長記録を記録したが、1997年以後は複数の理由から記録の受付を行っていない。その理由として「精神的および身体的健康に悪影響を与える可能性」、「記録が難しいマイクロスリープと呼ばれる短時間の睡眠状態が発見されたこと」、「非常にまれな遺伝性疾患である致死性家族性不眠症患者の中に記録を破って致死に至った可能性」などがあげられている[9]

これらの多くの記録では、分析能力、触覚・嗅覚などの知覚、記憶、意欲、発話、運動機能に悪影響や異常を起こし、数日間睡眠を奪われると妄想幻覚などが現れた[9]。さらに、身体的にも体重減少、免疫力の低下などの異常がみられる[5]
眠気を起こす要因

疲労感、酸素の濃度低下による疲労感[10]、食後の眠気(英語版)、病気、認知症などによって、眠気が引き起こされる[2]

また、前日の睡眠不足、睡眠の質が悪いと睡眠負債となり、日中に眠気として現れる[11]
メカニズム
睡眠物質の増加

覚醒し続けていると、脳内に睡眠物質 (Sleep-promoting substances)が蓄積され、睡眠への欲求である睡眠圧(sleep pressure)となる。この睡眠物質が溜まると眠気を引き起こし、睡眠を維持する[12]
プロスタグランジンD2
ヒトにおいては、プロスタグランジンD2(英語版)は、DP1受容体を刺激しアデノシン濃度を上げることでアデノシンA2A受容体を活性化させ、ヒスタミン系覚醒中枢を阻害することで眠気を引き起こす[13]

同じようなメカニズムで、第1世代の抗ヒスタミン薬は、ヒスタミン系覚醒中枢を阻害することで眠気を引き起こす[13]
アデノシン
生物がエネルギーとして利用しているアデノシン三リン酸(略称:ATP)が分解されると疲労物質アデノシンとなる。アデノシンがアデノシン受容体A1、A2Aを活性化させ、疲労回復を行うために睡眠が誘発される[12]
メラトニン
概日リズム(生体時計)に関与する細胞に時間を教えるホルモンで睡眠物質ではないが、メラトニンを生成する能力がない場合は不眠症となり、メラトニンを補給すると睡眠が誘発される[12]
サイトカイン
病気になると、免疫機能が活発となりインターロイキン-1β腫瘍壊死因子を含むサイトカインが増加し睡眠を誘発させる[14][12]

そのほか、ウリジン、ビタミンB12、酸化型グルタチオン (GSSG)睡眠薬ベンゾジアゼピンラメルテオン)なども睡眠を誘発させる[12]
覚醒物質の抑制

睡眠物質とは逆に覚醒状態を維持するための覚醒物質がある。覚醒物質の量が低下すると眠気を生じる[15]
オレキシン
オレキシンは、食欲・覚醒状態を生み出す神経ペプチドである。食欲が満たされることで産出量が低下したり、オレキシンをつくる神経細胞が破壊されていると眠気が起きる[16]

そのほかに、ヒスタミンノルアドレナリンなども覚醒に関わる[17]
眠気覚ましのメカニズム「精神刺激薬」も参照

眠気覚ましとして、カフェインを含む飲料などが利用される。カフェインは先の説明にあったアデノシンに似た構造を持ちアデノシン受容体を阻害することで、疲労感をごまかし眠気覚ましとなる[18]
検査
他者評価


顔表情眠気評定尺度(facial expression evaluation)
[19]

ドライバーモニタリングシステム(英語版)という車に装備された運転手の覚醒状態を評価し、ドライバーの意識レベルが低下した場合には車を停止させるシステムでは、表情の画像データ、座席への圧力のかかり方、呼吸情報、心拍などからドライバーの眠気の推察が行われる[20][21]

自己評価法


エプワース眠気尺度(英語版)

スタンフォード眠気尺度(英語版)

カロリンスカ眠気尺度 (Karolinska Sleepiness Scale) [19]

出典^ 『五欲』 - コトバンク
^ a b “高齢者に多く見られる「傾眠」の原因6つ 医師が解説”. マネーポストWEB (2019年10月18日). 2023年1月8日閲覧。
^ 『嗜眠』 - コトバンク
^ “疾病、傷害及び死因の統計分類(基本分類)(ICD-10(2013年版))”. 政府統計の総合窓口. 2023年1月8日閲覧。
^ a b c “理学の謎 第19回 眠りを奪われたネズミはなぜ死んだ? - 東京大学 大学院理学系研究科・理学部”. www.s.u-tokyo.ac.jp. 2023年4月1日閲覧。
^The Effects of Sleep Deprivation
^ a b Keating, Sarah. “The boy who stayed awake for 11 days” (英語). www.bbc.com. 2023年4月4日閲覧。
^ a b “A Boy Went Without Sleep For An 11-Day School Project ? And Hallucinations Kicked In” (英語). IFLScience (2021年8月2日). 2023年4月4日閲覧。
^ a b c “What’s the limit to how long a human can stay awake? And why we don’t monitor the record” (英語). Guinness World Records (2023年1月17日). 2023年4月1日閲覧。
^ Sung, Eun-Jung; Min, Byung-Chan; Kim, Seung-Chul; Kim, Chul-Jung (2005-01). “Effects of oxygen concentrations on driver fatigue during simulated driving” (英語). Applied Ergonomics 36 (1): 25-31. doi:10.1016/j.apergo.2004.09.003. https://doi.org/10.1016/j.apergo.2004.09.003. 
^ “何とかしたい! 不意に訪れる眠気の原因と具体的な対処法&予防法”. panasonic.jp. 2023年4月5日閲覧。
^ a b c d e 藤谷靖志、裏出良博、早石修「睡眠物質」『日本老年医学会雑誌』第35巻第11号、1998年、811-816頁、doi:10.3143/geriatrics.35.811、.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISSN 0300-9173。


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