眼鏡
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1833年に、イギリスロンドンの眼鏡商が著した本では、レンズの大きさは直径にして、3/4インチから1インチ(メートル法換算で、19ミリから25.4ミリメートル)もあれば実用上十分であり、フレームが視界に入って気になるという例の十中九までは、眼鏡が顔に適切にかかっていないか眼から離れすぎているのが原因であるとしている[55]。昭和3年に日本の眼科医が著した本では、眼鏡レンズが大きくても小さくても結局その中心しか鮮明に見えないのだからレンズの大小は光学的には問題にならないとし、もっぱら顔に似合うかどうかでレンズの大きさを決めるように勧めている[56]

また、表記には総寸法の提示が無く、丁番部などがレンズから横に張り出したデザインやテンプルの曲げられてからのサイズは分からないため、同表記であっても横幅寸法はデザインによって違うため、実際に試着装用してみたり専門家による調整が必要である。

眼鏡は、横幅は眉毛の長さに合わせ、縦幅は鼻の上部にかかる程度が丁度良いサイズだが、あくまで目安とし、店員と相談をして合わせるのが望ましい。
装身具としての眼鏡

眼鏡は装身具としての側面も持っている。視力の改善でなく見た目の改善を目的として眼鏡が使われることは古くからあり、失明により見苦しくなった眼を隠すためにサングラスを使うことは19世紀から一般的であった[57][58]し、適切に調整された大きなレンズの眼鏡には顔を陽気に見せる効果がある[57]。顔面の中でも目立つ場所である目の周りに装着する眼鏡の装身具としての可能性は高い。

上記のように眼鏡のフレームには多種多様なものがあるが、実用品としてみればサイズ違いだけで十分である。壊れやすい縁無しなどは実用品としての性能は劣っているともいえる。多種多様なフレームが開発されてきたのは眼鏡が昔から装身具としての側面をもっていたことの証左である。

レンズの改良においても外観の改善つまり厚みの低減には大きな努力が払われてきた。高価な高屈折レンズも、利点は外観の良さが主であり、光学性能ではむしろ劣ってさえいる。

視力に問題がなくても装身目的で眼鏡を装用する者もいる。このような視力矯正作用を持たない眼鏡を伊達眼鏡という。昭和16年に著された本にも、伊達眼鏡をかける者は案外少なくないものだとの指摘が見られ、伊達眼鏡をかけることによって眼に病気が起こるわけでもないのでかけても差し支えないとして、伊達眼鏡が眼に悪いのではないかとの懸念を否定している[59]

特にまぶしいわけでもないのにサングラスを用いるのも装身目的といえる。サングラスを掛けると眼球に入る光量が減って瞳孔が開くが、紫外線(UV)カット性能が適切なレベルでない製品は、紫外線を余計に眼球に浴び、却って目を傷めることになるので注意が必要だとされる。また、レンズの小さなサングラスをかけていると、瞳孔が開いたところへ顔とレンズとの隙間から紫外線が射し込むので良くないともされる。

このような言説に対しては、

日本では、サングラスでない普通の眼鏡レンズでも紫外線カットが常識になっている程で、紫外線カットされていないサングラスはほとんど流通していない。

紫外線カット機能のないレンズでも、太陽光を素通しする訳ではなく、7割以上の紫外線がレンズで吸収され減衰する。

日中の屋外は屋内の何百倍も明るく、それだけ明るければ、濃いサングラスによって可視光線の9割が遮断されたとしても、依然として瞳孔を閉じさせるに十分な可視光線が残る。

顔とレンズとの隙間から紫外線が入るならば、同じ隙間から可視光線も入って瞳孔が閉じる。

とする反論があり、テレビや雑誌で大げさに誇張されて広まっている言説であり、理屈としてはそうでも、現実には殆ど心配する必要がない[60]
文化・芸術と眼鏡「眼鏡キャラクター」も参照

絵画や映画、漫画の中に描かれる眼鏡は描かれる人物の性格を表す象徴であることがあるが、その表す性格は、時代や場所によって異なる。

眼鏡が描かれた最も古い絵画は、トマッソ・デ・モデナが1352年に描いたヒュー・オブ・サン・シェールの肖像画である。ヒューの死後一世紀も経ってから描かれた絵画である(「歴史」を参照)。ヒューの生前には眼鏡は発明されていないが、尊敬のしるしとして描かれたものである。眼鏡が発明される以前に没した人物の肖像画に当時存在していなかったはずの眼鏡を描き入れる慣行はその後、数世紀にわたって続く。学識とか識字能力の持ち主、あるいは当代の実力者であることの証と考えられていたのであろう[61]。眼鏡が日本国内で一般化したのは江戸時代、元禄享保期頃である[62]。日本の江戸時代の浮世絵黄表紙本の挿絵に描かれる眼鏡は、知性よりもむしろ職人的な細かい手仕事の象徴であり、年配の職人が眼鏡をかける姿が多く描かれた[63]

近現代の創作を含めた、眼鏡をかけた登場人物の描写については「眼鏡キャラクター」を参照。また装用者を「メガネ」(片仮名表記が多い)と渾名で呼ぶこともある。2023年には、内閣総理大臣である岸田文雄に「増税メガネ」という渾名がつけられた[64][65][66]。ジャーナリストの鮫島浩は、以前から眼鏡好きとして知られ男前とも評されてきた岸田にとって眼鏡はお洒落のキーアイテムであり、それを不名誉な渾名に転化したことにこの渾名の秀逸さがあると分析した[67]

片眼鏡は、今日の映画や漫画では悪人や盗人の象徴として描かれる。ドイツでは、第一次世界大戦時の軍作戦本部で地図を見るときに目が悪い者は片眼鏡を用いるという習慣があった。他国で片眼鏡が廃れた後も、ドイツでは第二次世界大戦までその習慣を続けた者が多く居たため、ナチスの軍人と片眼鏡のイメージとが重ね合わされたのかもしれない。今日では悪人の象徴として描かれる片眼鏡だが、かつては事情が異なった。P・G・ウッドハウスが1930年に示した小説家向けの眼鏡装用基準では、眼鏡の種類ごとにそれを掛ける人物を列挙しており、当時で言うスペクタルズ、現在でいう一山を掛ける者の筆頭に善良なおじさん(good uncle)、鼻眼鏡を掛ける筆頭に善良な教師、片眼鏡を掛ける筆頭に善良な公爵と、多くの種類で善良な人物を筆頭に挙げていた。鼻眼鏡と片眼鏡については悪人はこれを掛けないとも述べている[68]手塚治虫スター・システムの最古参である花丸博士も多くの役柄で片眼鏡をかけているが、もっぱら善人を演じた「スター」である[69]

近年の漫画・アニメでは、逆ナイロール形式[注 3]の眼鏡が、キャラクターの外観を大きく変えることなく、眼鏡キャラクターとしての個性も表現するための漫画的デフォルメ描写に好んで使われる。キャラクターの瞳の印象が見た者に素直に伝わるため、瞳を大きく描く萌え絵においてはこの表現が用いられることがある。また、キャラクターの造形もしくは絵柄によってはフルリムの眼鏡を掛けさせる事が困難な(あるいは、掛けさせると不恰好となる)ため、それを回避するためにこの表現を用いることもある。現代のアニメは眉の形状によって表情を表現することが多く、上半分のないフレームとすることで表情を容易に表現できるというメリットもある。一方、『涼宮ハルヒシリーズ』に登場する長門有希が使用しているのは、逆ナイロールでない、普通のナイロールフレームの眼鏡である。また、漫画イラストにおいて眼鏡のテンプルの描写は、鼻と同様[注 4]、往々にして省略される。このため登場人物が鼻眼鏡を掛けているのかテンプル付きの通常の眼鏡なのかは一見して分からない。

日本では、10月1日が「メガネの日」とされている(1001すなわち一〇〇一が、眼鏡のツルとレンズの並びに似ているため)。徳島県鳴門市葛城神社は眼病の治癒にご利益があるとされ、眼鏡を供養する「めがね塚」が1998年に建立されている[74]

2019年12月3日、#KuToo運動を進める女性グループが、外見・服装について不要なルール強制はパワーハラスメントにあたると明記するよう緊急要望書を出した。美容部員や企業受付の女性だけに課せられているメガネ禁止などがこれに当たる[75][76]
治療用眼鏡等の保険適用

日本では2006年4月より乳幼児の弱視先天性白内障手術後の治療用眼鏡(コンタクトレンズも含む)に対して、健康保険の療養費が支給(保険適用)されるようになった。詳しくは「弱視」の項目を参照のこと。
検眼

眼鏡を調製するに当たって適切な度数を調べるための検査を検眼という。日本国外では検眼に国家資格を要する国が多く、それらの国では眼科医(Ophthalmologist)の他に、眼鏡やコンタクトレンズの処方を主たる診療範囲とするオプトメトリスト(Optometrist)のような医療職を設けている。

日本では、眼鏡店の店頭で客がレンズを選ぶのを店員が補助しているが、これは実質的には眼鏡店員による検眼である。2022年4月より職業能力開発促進法 第47条第1項の規定に基づき眼鏡作製職種が設けられ、眼鏡作製技能士(1・2級)という国家資格が成立したが、他の技能士と同じく名称独占資格であり、眼鏡作製技能士でない者による検眼を禁止するものではない。検定合格者は眼鏡作製技能士を名乗ることができ、合格せず名乗った者は法律で罰せられる(職業能力開発促進法 第五十条4→第百二条八)。
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