眼鏡
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紫外線カットの眼鏡レンズは、バイオレットライト(波長が360?400nm)もカットするが、バイオレットライトに近視の進行を抑制する効果があるとして、メガネによる紫外線カットが近視を増加させているという報告もある[35]。これに対応してバイオレットライトを選択的に透過するレンズも登場している[36]。さらには、紫外線そのものに近視抑制効果があるとする説もある[37]
ハードコート
レンズに傷がつくのを防止する。ハードコートの技術が開発される前のプラスチックレンズは極めて傷つきやすいため販売量が伸びなかったが、ハードコートが施されるようになってからは実用上問題ない傷つきにくさを得、販売量でガラスレンズを凌駕するに至った。現在ではハードコートの施されていないプラスチックレンズは生産されていない。
汚れ防止
水や皮脂を弾きやすくすることで、汚れにくく拭き取りやすくなる撥水コート、湯気で曇らない防曇コート、が付きにくい帯電防止コートなど。防曇コートは付属の液体(界面活性剤)を定期的につけるタイプが主流だったが、不要なコーティングも登場している。
反射防止コート
光の反射を防止する。これが施されていないと、装用者自身にとってはレンズ裏面に自分の目が映って見えたり、背後から来る光が反射したりする。写真撮影の際、カメラのフラッシュ光が反射して目が透けず真っ白に写り、運転免許証パスポート個人番号カードの申請では、差し替えや撮り直しを指示される。現代ではキズ防止、紫外線カット、撥水、反射防止は標準コートであるため、より性能を高めたコーティングをオプションとして設定しているレンズが多い。
耐熱レンズ
レンズの各コーティングは、膨張率が異なるため、熱が加わるとコート層の境目から剥がれやすい。対策として、各コーティングの膨張率を揃えることで剥がれを抑えたレンズ。熱に弱いプラスチックレンズの耐熱性を高めるものではない。
衝撃吸収(プライマー)
強度を高めるコーティング。レンズに衝撃がかかった際に割れにくくなる。縁なしやナイロールフレームに有用である。
偏光
水面や雪面からの表面反射光をカットする偏光板を使用する。
ミラー加工
レンズ前面に光を反射するコートを施す。
カラーレンズ
プラスチックが着色しやすいことを利用し、素材自体が着色されたプラスチックレンズ。ファッション用の他、眩しさの軽減や視力矯正機能のあるサングラスとしても利用できる。
調光レンズ
紫外線量や温度により、透過率が変わるレンズ。眼鏡兼サングラスとて利用出来る。
ブルーライトカット
高エネルギー可視光線(波長が380?500nm)を軽減するレンズ。ガラスではコーティングとなるが、プラスチックでは添加剤や薄茶色の着色により、レンズ自体でカットするものがある。カット率が高いレンズは、視界が黄色がかって見えるものもある。デジタル機器による睡眠障害や眼精疲労、眼の障害の防止を謳って販売されている。日本眼科医会は2021年4月、睡眠障害の防止については効果を期待できる可能性があるとしながらも、それ以外の効果は期待できないとし、さらに小児にブルーライトカット眼鏡を装用させては自然のままの太陽光を浴びる機会を奪い近視進行のリスクを高めるとして、小児の装用に対して慎重意見を表明した[38]。米国眼科学会も、ブルーライトが眼に悪いとする科学的根拠はなく、ブルーライトカット眼鏡の使用を推奨しないとしている[39]
視力矯正以外

サングラス、色覚補正眼鏡、防塵眼鏡、3D眼鏡伊達眼鏡、PCグラス(ブルーライトカット)などがある。
フレーム

眼鏡のレンズを眼前に固定するための構造をフレームまたは枠という。眼鏡フレームの世界三大産地はイタリア、日本、中華人民共和国。日本での生産地は福井県鯖江市福井市であるが、低価格品は割安な中国製に代替されつつある。
眼の前に固定する方法による分類

フレームの第一の目的は、眼の前の適切な位置にレンズを固定することである。固定する方法は、以下のように様々なものが試みられてきた。鼻眼鏡の例(人物はヴァルター・ネルンスト一山の例(人物はジャン・レノ
柄付眼鏡
眼鏡に持ち手がついていて、それを持って使用する。最初期の眼鏡はこの形態だったが、現在では日常的に使われることは少ない。現在では、役所などで貸し出し用の老眼鏡として、また、眼鏡店などで試用や検査のために使われる。虫眼鏡とは、(1)虫眼鏡が一枚のレンズから成るのに対して、柄付眼鏡は二枚のレンズから成る(2) 虫眼鏡は見たいものに近づけて使われるのに対して、柄付眼鏡は目に近づけて使われるという違いがある。
紐つき眼鏡
紐で眼鏡を顔に押し当てて安定させるもの。今日では視力矯正用眼鏡よりも保護眼鏡や水中眼鏡で多く使われる方式である。視力矯正用としても江戸時代の日本で使われ、大戦中にはガスマスクの下にかける眼鏡としてドイツの兵士に支給された。現代の日本でも剣道の面の下にかける眼鏡として市販されている。
片眼鏡
片方の眼の周囲の肉に[40]はめ込んで使う。過去に何度か流行したが、現代では一般的でない。モノクルとも。落下に対する備えとして紐や鎖が付けられることがあった。
鼻眼鏡
鼻をばねで挟むような形で装用する。耳かけ、いわゆるテンプルが発明される以前からある形式である。テンプルが発明された後も使用され続け、19世紀末から20世紀初頭にかけて流行したが、現代では一般的でない。目立たず、審美上の利点があるが、顔の形によっては掛けるのがほとんど不可能である[41]。フィンチ、パンスネ、鼻掛眼鏡とも。英語の eyeglasses はかつて、少なくとも眼鏡商の間ではこの形式のものをのみ指した[42]。落下に対する備えとして紐や鎖が付けられることがあった。詳細は別項を参照。
一山(いちやま)
テンプルはあるが鼻当てがなくブリッジが直接鼻に当たって眼鏡を支えるもの。現代では少数派である。今日では両者は眼鏡を指す同義語となっているが、英語の spectacles はかつて、少なくとも眼鏡商の間ではこの形式のものをのみ指し、鼻眼鏡を指す eyeglasses と区別された[42]。鼻当てつきのものと違って鼻の高さに合わせて調整することができないので、同一デザインでブリッジ高さを変えたフレームが多数用意された中から、鼻の高さだけでなく出目奥目の具合をも考慮して適切なブリッジ高さのものを選ばなければ正しくかけられない。鼻が高さが同じでも、出目であれば張り出したブリッジを選択すべきではないし、奥目であれば張り出したブリッジが必要になる。一山フレームが一般的だった時代の眼鏡処方箋には、ブリッジの高さ、幅、深さの記入欄があった[43]。落下防止のため、縄手や長手が持ちられることが多い。1912年のアメリカン・オプティカル・カンパニーの一山フレームには、瞳孔間距離、ブリッジの鼻に接する部分の幅、同じく高さ、そしてレンズに対してブリッジが張り出しているか同一平面上か引っ込んでいるかの順列組み合わせで180種のブリッジが用意されていた[44]。店頭に一山フレームが一つあるいは数個しか在庫されていないようでは、そのフレームがたまたま自分の顔に合っているのは幸運な場合のみである。
つる付き眼鏡
鼻当てとテンプルによって支える形式。英語では当初、eyeglasses に spectacles のテンプルを取り付けたものであることから spectaclettes スペクタクレッツと呼ばれた[45]。1913年の書籍では鼻の斜面が垂直に近かったり肌が敏感だったりで一山をかけられない人に勧められるフレームとして位置づけられていた[45]が、現代では最も一般的な形式である。鼻眼鏡と対比しては耳掛眼鏡とも。
素材による分類
メタルフレーム
金属製のフレーム。古くから存在し、
真鍮が用いられてきた。近代ではステンレスの導入例が見られるが、強度が高い一方で可塑性に難がある。また材質の性質から重量がかさむため、レンズ周囲は細いワイヤー状、テンプルもワイヤー状かテーパー状の薄板で極力軽量に形成することが一般的である。金属アレルギーの者には不適な場合がある。
金無垢
メタルフレームのうち、材質にを使ったものをいう。実際には純金(24金)は軟らかすぎるので適さず、実用的な硬度が得られる合金の18金や14金の合金が使われる。表記は18K、14K。柔軟性がある、腐食しにくい、金属アレルギーを起こしにくい、などの長所がある一方、貴金属だけあって高価である。
チタンフレーム
チタンで作られたフレーム。加工が難しいため、鉄やステンレスよりも高価であるが、腐食が起こりにくく丈夫で軽いことから、シニア向けフレームに用いられることが多くなった。表記はTi-PまたはTi-C。なお、-Pは純チタン、-Cはクラットチタン。後者はチタンを芯材(ベースメタル)とし、その周囲をニッケル合金等で覆ったもので、ニッケルめっきの表面処理を、通常合金と同様に行うことができる。フレームカラーの種類を限定されないことから、多様なニーズに合わせることができる。また、パッド足等のパーツがろう離れした際にも、店頭で修理を行えるので、βチタンはチタン合金の中でも通常合金に近い扱いが可能である。チタンフレームは「タイタニウムフレーム」「チタニウムフレーム」とも称される。チタンは、素材の軽さや丈夫さにより数多くのスポーツブランドも製造している。
銀縁
メタルフレームのうち、で作られたもの。銀は眼鏡フレームには適さないので、商品としてはあまり流通していない。銀色をした、銀でないめっき加工されたフレームをいうこともあるが、眼鏡店の店頭では誤解を避けるため、この意味では使われず、俗称である。
形状記憶合金製フレーム
メタルフレームのうち、現代におけるスポーツフレームに多く用いられるもので、激しい運動でずれにくく、運動での衝撃で曲がったり折れたりする事が殆ど無い合金素材を用いた物。反面、衝撃で曲がらないとは裏を返せばフィッティングのために意図的に曲げようとしても曲げられないことでもあるので、レンズの位置角度が正しく合っておらず頭痛や眼精疲労を起こしかねない状態でも、フレームをフッティングで修正することができない。この種のフレームを選ぶ際は、鏡の前で色々掛け比べて、フッティングするまでもなく初めからレンズが瞳に対して正しい位置角度に来ているものを選ぶ必要がある。
軽量チタン合金製フレーム
チタンフレームを極限まで軽量化した物。フレームの重さでずり落ちにくいと宣伝されているが、その一方でフレームが軽すぎるとレンズの重さにより眼鏡全体の重心が前に偏りかえって重さが気になるとする主張もある。変わり種としてリムからブリッジ部分を軽量樹脂製にした物もある。


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