真言
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『般若心経』では、「h?daya」は「神呪(真言)」であり「明呪」であると説いている[注 9]。『般若心経』より時代が下った密教経典の漢訳でも「h?daya」を「真言」、「明呪」と同一視している。[注 10]
陀羅尼

梵語の「dh?ra??(ダーラニー)」を音訳したもので、「総持」、「能持」等と意訳される[注 11]。「dh?ra??」は、「保つ」・「保持する」を意味する「dh?ra??(ダーラナー)」を起源とする語で、本来は「精神を統一しその状態を持続すること」を指していたが[12]、後に精神統一や諸尊の憶念や教義を記憶するための教え(持句)を指すようになった[13]。陀羅尼経典である『仏説無量門微密持経』(支謙訳)では、「陀羅尼」とは仏の功徳や徳性を列挙した持句で、これを思念することによって正覚にいたることを目的とするものとある。精神統一や仏随念のための手段である「陀羅尼」が次第に呪文化され、その神秘的な響きから唱えることによって現世利益を得られると信仰されるに至り、後に密教が成立すると「陀羅尼」は「真言」を包摂する形で説かれるようになり、やがて同一視されるようなった。陀羅尼の本文が、核心となる語を羅列した意味稀薄な文言であるのは、具体的な意味のある言葉だと日常的な連想や雑念を呼び起こすためとも、理解力の劣る仏教初心者やサンスクリット語を使用しない非インド・アーリヤ語系の者に仏教教義の核心を伝えるためとも言われる[14]。詳細は「陀羅尼」を参照
種子(種字)

仏尊を象徴する一音節の呪文であり、真言の一種。種子真言ともいわれる。サンスクリット語の「b?ja(種子、神髄)」+「ak?ara(文字)」から成る「b?j?k?ara(マントラの頭文字)」の訳。草木の種子が根茎を含蔵するように一字に無量の法を含み、種子から草木が生じるように功徳を出生することから種子という。種子は梵字を神秘的に解釈し、仏尊の名称や真言から取った一音節を梵字に表すもので「種字」とも書かれる。胎蔵の種字は真言の最初の音節を、金剛界の種字は真言の最後の音節を取ることが多いが、仏尊名の一音節を取ったものや仏尊の本誓を象徴する一字を取ったものもある[注 12]。真言には様々な形式があるが「帰命句+種字」で構成されるものも多い。詳細は「種子 (密教)」を参照
その他の分類

善無畏の『大日經疏』では真言を以下の五種に分類する。[注 13]
如来説 ? 大日如来や釈迦如来等の真言。

菩薩金剛説 ? 観音菩薩や地蔵菩薩等の真言。

二乗説 ? 舎利弗迦葉目連等の真言。

諸天説 ? 梵天や夜摩天薬叉などの諸天の真言。

地居天説 ? 龍・鳥・修羅等の真言。

真言を形式(長さ)によって、以下の三つに分類することもある。
大呪 ? 「根本呪(m?la mantra)」、「大心呪」ともいう一般的な呪。

中呪 ? 「心呪(h?daya)」、「心真言(dh?ra??-h?daya)」ともいう。

小呪 ? 「心中心呪」、「随心呪(upah?daya mantra)」ともいう。

成立

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出典検索?: "真言" ? ニュース ・ 書籍 ・ スカラー ・ CiNii ・ J-STAGE ・ NDL ・ dlib.jp ・ ジャパンサーチ ・ TWL(2021年3月)

仏教以前

真言(マントラ)の起源は仏教成立以前に遡る。アーリヤ人インドに侵入する以前のインド・イラン共通時代に、彼らは火神(アグニ)にマントラを捧げて敵を退け病を癒し害毒を除くことを祈っていた。インド侵入後に成立したとされる『リグ・ヴェーダ』の中には火神に捧げるマントラが多く記述されている[注 14]。アーリヤ民族と原住民族が接触し融合するにつれ[注 15]、その宗教信仰も習合することで『リグ・ヴェーダ』、『ブラーフマナ』、『ウパニシャッド』、『アタルヴァ・ヴェーダ』等が成立し、盛んに息災・増益・降伏等の呪術が用いられるようになった。

ヴェーダ時代のマントラは、神々への帰依、祈願、讃仰の聖句であり、除厄、招福のために唱えられた。当時は民衆の間にバラモン教の呪文が浸透しており、例えば一般家庭においても『家庭経(G?hya-s?tra)』等によって家庭内での祭式が詳しく規定され、出産時、命名時、結髪式、結婚式など万般の際に、必ず火を用いて神に捧げる呪文を唱えていた[注 16]
初期仏教

釈迦は当初呪術的行為を禁止したとされるが[注 17]、教団が拡張するにつれ、日常生活の中に習慣づけられている呪文を厳禁することが難儀になったとともに、広く民衆に布教するための方便として旧来の信仰と調和しこれを善導するために、仏教修行の妨げにならない限りは、世俗の呪文を用いることが容認された[15][16]。一般民衆とくに農村部への布教活動を展開していく過程で、教団内では呪文が多く用いられるようになっていたが、その中でも護身の呪文として、パーリ語で「パリッタ(paritta)」(護呪)といわれる経が知られている[注 18]。呪術的な「パリッタ」の一例として、比丘が毒蛇を避けるための『カンダ・スッタ(蘊経/khanda sutta)』が挙げられる。これは、蛇を含むすべての生類に慈悲を示し、その慈悲の力で毒蛇に咬まれることを避けようとする護身・除災を目的とした呪文である[注 19]。『カンダ・スッタ』は、こうした古くからあった蛇除けの習俗が仏教教団内に持ち込まれたものであり、これが発展して後の『孔雀王呪経』の成立に繋がったと考えられている。[注 20]

大乗仏教興起以前に唱えられていた呪文は、バラモン教に由来する護身の呪文や「パリッタ」等釈迦によって説かれた経典を唱えて障害を防ごうとするものであった。パリッタの護身呪はその後、南伝系・北伝系を問わず仏教経典に呪文として入りこみ、やがて個々の病気平癒の効果をもたらす呪文が用いられるようになり、後に真言へと成長していく[注 21][注 22]
大乗興起

紀元前後に、アーリヤ人の宗教であるバラモン教と先住民の信仰との融合が起こりヒンドゥー教が形成された。神にマントラを捧げれば救済されるというヒンドゥー教の単純明瞭で実践しやすい教え[注 23] は民衆の支持を受け隆盛し、仏教を圧倒する勢いを示すようになった。


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