真菌類
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たとえば原生生物という言葉を初めて用いたエルンスト・ヘッケルは、細菌などのなんの構造も持たない生物を原生生物の中のモネラとして区別し、後に藍藻をここに含めている[14]
生態系における菌類
分解者としての菌類

菌類は栄養を吸収するために、酵素によって他の動植物を構成する高分子を分解している。 特に、セルロースリグニンコラーゲンといった他の生物にとって分解の難しい高分子を炭素窒素リンの低分子化合物に分解することができるので、それらの物質を生態系のサイクルに戻す分解者としての役割を担っている。

たとえば、森林内では生産者である植物の現存量は、そのかなりの部分が、消費者に回る前に材や落葉などの枯死(こし)部分として蓄積される。これら植物遺体は主成分がセルロースリグニンであり、窒素、リンなどの含有量が少ない。そのため多くの動物はこれを直接利用することができない。しかし、これを菌類が分解し、なおかつ周囲から無機窒素化合物などを吸収してその体を作ることで、動物は植物遺体と菌類を同時に摂取し、それを餌として利用することが可能になる。
共生

菌類は他の生物の病気の原因となるが、その一方、多くの菌類が他の生物と共生している。

地衣類は菌類と緑藻シアノバクテリアとの共生体である[15]。維管束植物の根と菌類との共生によって形成される器官は菌根と呼ばれる[16]。菌根は植物が水分や養分を吸収する上で重要な役割を果たすことがあり、菌根の種類によって植物に対して主としてリンを供給するものや窒素を供給するもの、さらには有機物を供給するものも知られている。また,土壌病原菌から植物を防御する機能を持つ場合もあると推測されている。一方、菌類の側は植物から同化産物を供給されている。種子植物ではラン科イチヤクソウ科、シダ植物ではマツバラン科やハナヤスリ科ヒカゲノカズラ科の植物は発芽の初期に特定の菌類との共生が成立しないと生育できない。植物の葉などの組織内に共生している菌類は内生菌(エンドファイト)と呼ばれ、その機能についてはまだよく分かっていないが摂食阻害物質などの生成に寄与していると考えられるケースが知られている。アーバスキュラー菌根という型の菌根は陸上植物のひどく広範囲に見られるもので、やはり植物にとって有用な栄養素などの運搬に与っているらしい。

なお、ラン科のムヨウランやイチヤクソウ科のギンリョウソウなど、いくつかの種子植物は光合成色素を持たず、地下部の菌根に頼って生活している。従来はこれを腐生植物と呼んだ。菌根であるので、植物と菌類の共生と見ることもあるが、最近ではむしろ、植物が菌類を一方的に収奪している寄生とみなされている。かつてはネナシカズラなどと同じような生息基質への寄生と見て、土壌中の腐植質に寄生しているとして死物寄生という言葉もあった。最近の研究では、これらの植物が依存している菌類は主として他の植物と共生している菌根菌や植物病原菌、一部は木材腐朽菌であり、腐生植物は菌類を介して他の生きている植物や枯死植物から、間接的に栄養分を摂取していることが明らかになりつつある。イチヤクソウ科の植物は光合成をする種であっても栽培困難なものが多いが、これも菌類を介して周囲の菌根形成植物から栄養分を収奪して生活しているためである。そのため、外生菌根を形成した樹木とイチヤクソウ類を一緒に鉢植えにすると、長期間の栽培が可能であることが実証されている。

昆虫と菌類との共生も知られている。アンブロシアビートルと総称されるキクイムシは菌類を運搬するためにマイカンギアと呼ばれる器官を持ち,自身が樹幹内に掘った孔道の内側に持ち込んだ菌類を繁殖させ、それを摂食している。菌類の側から見ると、こうした昆虫は菌類を生育に適した環境に運搬していることになり、菌類の分散に寄与していると考えられる。また,熱帯に住むハチ目のハキリアリと、シロアリ目の高等シロアリの一部は、巨大な巣を作り、その中に外部から植物片を運び込み、かみ砕いて「苗床」を作り、そこで菌類を「栽培」し、食料としている[17]。シロアリにおいては、外部の菌類がシロアリの卵に擬態して菌核を保護させるターマイトボールというものも発見されている。
人類とのかかわり
食材、食品加工、薬品

人間は古くからキノコを食品として利用してきた。世界に存在する約10000種のキノコのうち、食用キノコとなるものは約1000種あるとされ、日本では80種から100種が食用とされている[18]。全世界の食用キノコのうち30種はシイタケエリンギのようにキノコ栽培されているものは少なく、多くの食用キノコは栽培されていない[18]。乾燥させた干しキノコ(ドイツ語版)(乾燥キノコ)は、ビタミンDやB1が増加するなどの栄養の変化が起きる[19]

各種の発酵産業において、カビ酵母は細菌とともに最も重要な地位を占めている[20]酵母ブドウ糖ショ糖エタノール発酵する。この能力はビールワイン日本酒といったアルコール飲料の醸造に用いられている[21]日本酒焼酎醤油味噌など、日本古来の発酵食品では、コウジカビ穀物に培養し、繁殖させた(こうじ)を用いて醸造を行う[22]

パンには無発酵のものも存在するが、酵母(イースト)を用いて発酵させると柔らかさや香気が大きく向上し美味となるため、一般的なパンのほとんどは酵母による発酵を経たものである[23]。また、カビや酵母はチーズを作るために重要な役割を果しており、ブルーチーズや白かびチーズなどが知られている[24]鰹節は食材を冷暗所に保管し、表面にカビを生やせて熟成させる[25] 食品も多く、金華ハムもそのうちの一つである。

そのほか、貴腐ワインの生産には果実につくハイイロカビが必要であるなど、カビが関わる食品は様々である。

菌類には様々な有機化合物を生産するものがいる。例えば、アオカビの一種は抗生物質ペニシリンを生産する[26]。また他にもシクロスポリン[27]クレスチン[28] などが菌類に由来する薬品として用いられてきた。 ベニテングタケは猛アルカロイドアミノ酸を含んでいる。マジックマッシュルームのように動物の中枢神経に作用し、幻覚症状を引き起こす成分を含んでいる菌類もある。
病原体としての菌類
植物病原菌

様々な植物に寄生する菌類が知られている。中には農作物に重大な被害を与えるものも多々ある。植物に寄生する菌類は様々な群に含まれる。代表的なものを以下に挙げる。

ツボカビ門:サビフクロカビ
(Synchytrium ジャガイモ癌腫病)

接合菌門:コウガイケカビ(Choanephora コウガイケカビ病など)

子嚢菌門:タフリナ(Taphrina 桜のテング巣病など)・ウドンコカビ(Erysiphe うどんこ病)、ハイイロカビ(Botrytis 各種植物の灰色カビ病など)

担子菌門

サビキン綱:サビキン(Puccinia 各種植物のさび病など)

クロボキン綱:クロボキン(Ustilago コムギ・オオムギの裸黒穂病など)、(Tilletia 小麦・大麦のなまぐさ黒穂病など)

なお、卵菌類にも植物寄生菌があり、アブラナ科の白さび病など菌類の起こすものと似た病気が知られる。
真菌症詳細は「真菌症」を参照


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