真菌類
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しかし、菌類についての理解が深まるにつれ、細胞構造や分子遺伝学的な系統解析などの研究から得られる情報などから、植物とは異なる、独自の生物群であると考えられるようになり、五界説の頃より独立した界として広く認められるようになった[5]。現在の分子遺伝学的情報からは、植物よりも動物に近い系統であることがわかっている。動物と菌類を含む系統のことをオピストコンタという。

なお、かつてはその胞子形成の類似などから、粘菌類を菌界に含めて扱っていた。変形菌類、細胞性粘菌ラビリンチュラ類をまとめて変形菌門とし、他の菌類を真菌門とするのが通例であった。また、卵菌類・サカゲツボカビ類なども菌類と考えられていたため、これらをツボカビ類とあわせて鞭毛菌亜門に位置づけていた。しかし、現在ではこれらは別の系統に属するものと判明したため、菌類として扱っていない。それらをまとめて偽菌類と呼ぶことがある。

系統学的には、以下の種全てを含む最小のクレードとして定義されている[6]

Rozella allomycis(ロゼラ類)

Batrachochytrium dendrobatidis(ツボカビ門

Allomyces arbusculus(コウマクノウキン門

Entomophthora muscae(ハエカビ亜門

Coemansia reversa(キックセラ亜門

Rhizophagus intraradices(グロムス門

Rhizopus oryzae(ケカビ亜門

Saccharomyces cerevisiae(子嚢菌門

Coprinopsis cinerea(担子菌門

以上の定義はPhyloCodeでも有効なものとして登録されている。

その一方で、形態上あるいは細胞学・生化学的な、明快な共有派生形質は存在していない。一般的な特徴としては、キチン質細胞壁を持つ菌糸から構成され、鞭毛を欠き、中心小体が出現せず核内有糸分裂を行うことが挙げられる。しかし真菌には、単細胞のもの、中心小体が出現するもの、細胞壁を欠き鞭毛を持つ時期があるものなども含まれている。不動性で専ら吸収栄養により生活すると形容されることもあるが、ロゼラのように貪食能を持つものもある。キチン質の細胞壁はほぼ一貫して見られる特徴であるが、しかしこれは真菌以外の生物にも認められるため祖先形質だと考えられる[6]
菌類の系統進化様々な菌類の図

一般的に、菌類にはツボカビ門接合菌門子嚢菌門担子菌門の四群が含まれるとされてきたが、近年の分子系統解析により接合菌類が単系統でないこと、これまで原生動物とされてきた微胞子虫が菌類に含まれるであろうことが示されている。このうちで鞭毛細胞を持つのはツボカビ類のみである。水中生活をするものがあるのも大部分がこれで、他の群では水中生活のものはあるが、陸上のものが二次的に水中に入ったと考えられるものが多い。したがって、ツボカビ類がもっとも原始的なものと考えて良い。また、接合菌類は形態・構造に単純な面が多いため、これも比較的下等なものと見なされる。そして、子嚢菌、担子菌類がより高等なものと考えられていて、この2群をまとめたものをディカリアとする分類の仕方も提唱されている。しかし、これらの関係については明らかではない。

子嚢菌、担子菌にはそれぞれに酵母型、糸状菌型の生活をするものが含まれる。これらが進化の系列を示すものか、適応放散の結果であるかは判断が分かれる。中には、生活環の中でそれらの型を行き来するものがあるので、少なくともたとえば酵母型は単細胞だから下等、といった単純な判断はできない。
不完全菌類

このほか、重要な菌類の群として、不完全菌類 (Deuteromycetes, Imperfect fungi, Fungi imperfecti) と呼ばれるグループが存在する。これらは無性生殖だけで繁殖しているように見える子嚢菌(しのうきん)または担子菌(たんしきん)である。体細胞分裂によって形成される分生子(ぶんせいし)と呼ばれる胞子により、あるいは胞子を作らずに菌糸の栄養成長のみによって、または酵母として増殖する。不完全菌類はその分生子形成様式などによって便宜的に学名が与えられているが、完全世代(有性生殖を行う世代)が発見・命名されればその学名がその生物の正式な名として使用される。不完全菌類としては同じ属に分類されていたものが、完全世代では別の属に分類されることもあり、不完全菌類としての分類はあくまで暫定的なものである。しかし、たとえばアオカビコウジカビなど身近に見られるカビのほとんどはこれであり、また植物病原菌など実用上重要なものが多く含まれている。

なお、不完全菌の名は、かつては正式に分類群の名としても用いられたが、現在では次第に使わない方向に向かっており、代わりにアナモルフ菌 (Anamorphic fungi) や分生子形成菌 (Mitosporic fungi) などの名が使われる。
地衣類

地衣類は、コケ類と間違われやすいが、菌類の作った構造の内部に藻類が共生して成立している、複合的な生物体である[7]。これらを分けることも不可能ではなく、それぞれに独立した生物と見なすことも可能である。しかし、地衣類を構成するのは菌類であるから、菌類の分類体系に組み込まれている。実際には、地衣類における藻類と菌類は強く結びついて生活しており、両者が揃うことで形成される成分があったり、特殊環境で生活できたりといった面もあることから、以前は独立した生物群と見なす考えもあった。地衣類を構成する菌類としては子嚢菌が多く、担子菌もある。あるいは複数の分類群の菌類から構成される地衣類もある。構成する菌類が不完全菌からなる地衣類は、不完全地衣と呼ばれる。構成する菌類が複数系統あることから、平行的に地衣類が出現したと考えられている。
菌類の進化と植物

菌類は植物との関係が深く、動物との関係ははるかに薄い。例えば植物寄生菌には実に多くの種類が存在し、サビキンやクロボキンなど、レベルの大きな分類群が丸ごと植物寄生である例も見られる。それに比べると動物寄生のものははるかに少ない。また、その遺体を分解する場合にも、動物の遺体は主として細菌類によって分解され、植物の遺体は菌類が担当する傾向がある。また、共生関係においても現在ではほとんどの陸上植物が菌根を持っていることが知られている。また、この型の菌根が古生代から存在したらしい証拠も見つかっている。

他方、菌類の進化は主に陸上で起こったものと考えられる。接合菌、子嚢菌、担子菌はどれも大部分が陸生であり、水中生活のものはごくわずかである。その点、植物界の主要な群であるコケ類、シダ類、種子植物も陸上で進化したものであり、両者のそれは並行的である。このようなことから、菌類は植物と共進化してきたと考える見方がある。植物は陸上進出の段階で丈夫な繊維質を持つ茎や根を材木として発達させた。これを分解するように進化したのが子嚢菌や担子菌ではないかというのである。植物の側でも菌根などによって菌類の恩恵を受けているから、両者は共進化の関係にあるとも言える。
分類

古典的には、菌界の大分類は以下のようになっていた[8]。下記の亜門を門として扱った例もある。現在においても、教科書などではこれを踏襲している事がある。
古典的な分類体系

変形菌門(アクラシス綱水生変形菌綱変形菌綱・ネコブカビ綱)

真菌門

鞭毛菌亜門:ツボカビ綱・サカゲカビ綱・卵菌

接合菌亜門:接合菌綱トリコミケス綱

子嚢菌亜門:半子嚢菌綱・不整子嚢菌綱・盤菌綱・ラブールベニア綱・小房子嚢菌綱

担子菌亜門:菌蕈綱・腹菌綱・半担子菌綱

不完全菌亜門

これ以降の大きい変更としては、まず変形菌門が菌界から外されたことが挙げられる。上記の体系では真菌門のみが菌界とされた。また、鞭毛菌に含めていたサカゲカビ類と卵菌類は菌界から外され、ストラメノパイルに分類されるようになった。この見直しで菌界から外された群は時に偽菌類と呼ばれる。

21世紀初頭の現在、菌類の分類体系には手が入り続けている。2007年に見直された分類体系では子嚢菌門担子菌門ツボカビ門、コウマクキン門、ネオカリマスティクス門(以上の三門が旧ツボカビ門)、グロムス菌門、微胞子虫門、および門としての分類の難しい4亜門(主に旧接合菌門に由来)に分類されている (Hibbett et al. 2007 [9])。
国際原生生物学会の分類体系
上位の系統

国際原生生物学会(ISOP)がまとめ、改定を繰り返している真核生物の分類体系があり、2020年現在の最新版である2019年のもの[10] では下記の系統が採用されている:


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