真核生物
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それに対して、エキソサイトーシスによって小胞から放出される細胞産物もある[28]

核は核膜と呼ばれる二重のリン脂質二重層に囲まれており、核膜孔が物質の出入りを可能にしている[29]。核膜のさまざまな管状や板状の延長部分が小胞体を形成し、タンパク質の輸送(英語版)と成熟に関与している。粗面小胞体は、タンパク質を合成するリボソームで覆われた小胞体である。生成したタンパク質は内部空間あるいは内腔に入り、その後一般に、滑面小胞体から出芽した小胞に取り込まれる[30]。ほとんどの真核生物では、これらのタンパク質を輸送する小胞が放出された後、ゴルジ槽(英語版)と呼ばれる扁平な構造が積み重なってできたゴルジ体で更なるタンパク質の修飾が行われる[31]

小胞は特殊化することもあり、たとえばリソソームは、細胞質内の生体分子を分解する消化酵素を含んでいる[32]

真核生物の細胞内膜系は原核細胞の陥入により形成され、それが発達してできたと考えられている[26]
ミトコンドリア基本的に真核生物にはミトコンドリアが存在する。核DNAと異なる、原核細胞に似た独自のDNAを持つ。詳細は「ミトコンドリア」を参照

ミトコンドリアは真核細胞に存在する細胞小器官である。ミトコンドリアは、「細胞の発電所[33]」と形容され、糖や脂肪を酸化してエネルギーを貯蔵するアデノシン三リン酸(ATP)分子を生成し、エネルギーを供給する機能を持つ[34][35]。ミトコンドリアは、リン脂質二重膜2枚の膜で覆われ、内側にある内膜クリステという折り畳まれた構造になっていて、そこで好気呼吸が行われる[36]

ミトコンドリアは核DNAと異なる独自のミトコンドリアDNAを持ち、そのDNAは起源とする細菌の環状染色体(英語版)と構造的に類似しており、ミトコンドリア内の翻訳装置のためのrRNAtRNAの遺伝子や、ミトコンドリア内で合成されるタンパク質の遺伝子がコードされている[37]

一部の真核生物、たとえばメタモナダジアルジア属 Giardia やトリコモナス Trichomonas、アメーバ動物門ペロミクサ Pelomyxa はミトコンドリアを欠いているように見えるが、いずれもハイドロジェノソームマイトソームのようなミトコンドリア由来の細胞小器官を持っており、ミトコンドリアは二次的に失われたものである[38]。これらは細胞質内の酵素作用によってエネルギーを得ている[39][38]
プラスチドプラスチドの最も一般的な種類は葉緑体で、葉緑体はクロロフィルを含み、光合成によって有機化合物を生成する。種々のプラスチド。細胞によってさまざまな形態をとる。詳細は「プラスチド」を参照

植物やさまざまな藻類は、ミトコンドリアだけでなくプラスチド(色素体、plastid)と呼ばれる細胞小器官を持っている。プラスチドは、ミトコンドリアと同様に独自のプラスチドDNA(英語版)と2枚の生体膜を持ち、シアノバクテリア内部共生に起源する。プラスチドの多くは普通、葉緑体(クロロプラスト、chloroplast)として存在する。葉緑体はシアノバクテリアと同様にクロロフィルを含み、光合成によってグルコースなどの有機化合物の生合成を行う。

光合成色素を持たないプラスチドは白色体(leucoplast)と呼ばれる[40]。白色体の中にはアミロプラスト(amyloplast)やエライオプラスト(elaioplast)のように栄養の貯蔵を担うものもある[40][注釈 3]。その他果実の色素や赤色細胞に含まれる有色体や黄化葉に見られるエチオプラストなどが知られ、いずれもプロプラスチドから分化してできる[41]

プラスチドはおそらく単一の起源を持つが、プラスチドを持つ分類群がすべて近縁というわけではなく、葉緑体を持つ真核生物(一次植物)を細胞内に取り込んで共生させた二次共生(英語版)によってプラスチドを獲得した二次植物(あるいはさらに高次の植物)も知られる[42][43]。他の生物から光合成細胞や葉緑体を捕獲して再利用する盗葉緑体現象も、多くの種類の現生真核生物で見られる[44][45]
細胞骨格顕微鏡下で観察したウシ肺動脈の内皮細胞の細胞骨格。細胞核は青、微小管は緑、アクチンフィラメントは赤で標識されている。詳細は「細胞骨格」を参照

細胞骨格(cytoskeleton)は、細胞の形態を決め、細胞運動や細胞小器官の移動などの基本的役割を持つ構造要素である[46]チューブリンからなる微小管や主にアクチンからなるマイクロフィラメント(微小繊維)、デスミンなどからなる中間径フィラメントからなる[46]

微小管のダイニンキネシン、そしてアクチンフィラメントのミオシンといったモータータンパク質が細胞骨格のネットワークに結合し、物質の輸送を担っている[47][48]

マイクロフィラメント(微小繊維)は重合した2本のアクチン繊維にα-アクチニン(英語版)やフィンブリンといった束化を行ったり、フィラミンのように架橋を行ったりするアクチン結合タンパク質が結合することで形成されている[49]。細胞膜直下の細胞皮質や繊維束に存在する。

多くの真核生物は、鞭毛と呼ばれる細長い運動性の細胞質突起、あるいは繊毛と呼ばれる多数の短い構造を持っている。これらは波動毛(英語版)と総称され、原核生物のべん毛とは違い主にチューブリンから構成されており、運動、摂食、感覚などさまざまに関与している。これらは中心小体から生成する微小管の束によって支えられており、2本の1本鎖を9本の2本鎖が取り囲むように配列する「9 + 2」構造を持っているのが特徴である。鞭毛は、ストラメノパイル(Stramenopiles)の多くに見られるように、管状小毛(マスチゴネマ、mastigoneme)を持つこともある。それらの内部は細胞質と連続している[50][51]


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