真核生物は多くの点で原核生物とは異なっており、たとえば、ステラン合成のような独特な生化学的経路を持っている[21]。真核生物のそのシグネチャータンパク質は、他の生命ドメインのタンパク質とは相同性をもたないが、真核生物の間では普遍的なもののようである。これらのタンパク質には、細胞骨格、複雑な転写機構、膜選別システム、核膜孔、および生化学的経路におけるいくつかの酵素などである[22]。
内膜詳細は「細胞内膜系」を参照原核生物, 同じスケール内膜系を持つ真核細胞真核細胞は体積で原核細胞の約10,000倍大きく、膜結合細胞小器官を含んでいる
真核生物の細胞にはさまざまな膜結合構造があり、それらの集まりが内膜系を形成している[23]。小胞や液胞と呼ばれる単純な区画は、他の膜からの出芽によって形成される。多くの細胞は、エンドサイトーシスという過程(外膜が陥入
(英語版)してからつまみ取るように小胞を形成する)を通じて食物やその他の物質を摂取する[24]。それに対して、エキソサイトーシスによって小胞から放出される細胞産物もある[25]。核は核膜と呼ばれる二重膜に囲まれており、核膜孔が物質の出入りを可能にしている[26]。核膜のさまざまな管状や板状の延長部分が小胞体を形成し、タンパク質の輸送(英語版)と成熟に関与している。粗面小胞体は、タンパク質を合成するリボソームで覆われた小胞体である。生成したタンパク質は内部空間あるいは内腔に入り、その後一般に、滑面小胞体から出芽した小胞に取り込まれる[27]。ほとんどの真核生物では、これらのタンパク質を輸送する小胞は放出され、ゴルジ装置と呼ばれる扁平槽(シスターネ(英語版))が積み重なった小器官でさらに修飾される[28]。
小胞は特殊化することもあり、たとえばリソソームは、細胞質内の生体分子を分解する消化酵素を含んでいる[29]。
ミトコンドリア詳細は「ミトコンドリア」を参照基本的に真核生物にはミトコンドリアが存在し、独自にDNAを持つことから原核細胞にも似ている
ミトコンドリアは真核細胞に存在する細胞小器官である。ミトコンドリアは、通称「細胞の発電所[30]」と呼ばれ、糖や脂肪を酸化してエネルギーを貯蔵するアデノシン三リン酸(ATP)分子を生成し、エネルギーを供給する機能を持つ[31][32]。ミトコンドリアは、リン脂質二重膜でできた2つの膜で覆われ、内側の膜はクリステという折り畳まれた構造になっていて、そこで好気呼吸が行われる[33]。
ミトコンドリアは独自のDNAを持ち、そのDNAは起源とする細菌DNA(英語版)と構造的に類似しており、真核生物のRNAよりも細菌のRNAに近い構造的のRNAを生成するrRNAとtRNAの遺伝子をコードしている[34]。
一部の真核生物、たとえばメタモナス類のジアルジア属(Giardia)やトリコモナス(Trichomonas)、アメーバ動物門のペロミクサ(Pelomyxa)はミトコンドリアを欠いているように見えるが、いずれもハイドロジェノソームやマイトソームのようなミトコンドリア由来の細胞小器官を持っており、ミトコンドリアは二次的に失われたものである[35]。これらは細胞質内の酵素作用によってエネルギーを得ている[36][35]。
プラスチド詳細は「プラスチド」を参照プラスチドの最も一般的な種類は葉緑体で、葉緑体はクロロフィルを含み、光合成によって有機化合物を生成する。
植物やさまざまな藻類は、ミトコンドリアだけでなくプラスチドも持っている。プラスチドは、ミトコンドリアと同様に独自のDNA(英語版)を持ち、内部共生(この場合はシアノバクテリア)から進化した。それらは通常、葉緑体の形を取り、シアノバクテリアのようにクロロフィルを含み、光合成によってグルコースなどの有機化合物を生成する。また、栄養素の貯蔵を担うものもある。プラスチドはおそらく単一の起源を持つが、すべてのプラスチドを持つグループが密接に関連しているわけではない。それどころか、真核生物の中には、二次的な内部共生(英語版)あるいは摂取によって、他の生物からそれらを獲得したものもある[37]。光合成細胞や葉緑体の捕獲と隔離、すなわち盗葉緑体化は、現代の多くの種類の真核生物で見られる[38][39]。
細胞骨格詳細は「細胞骨格」を参照顕微鏡下で観察したウシ肺動脈の内皮細胞の細胞骨格。細胞核は青、微小管は緑、フィラメント状アクチンは赤で標識されている。
細胞骨格は、細胞が動いたり、形を変化させたり、物質の輸送を可能にするモーター構造のために、剛構造と結合点を提供する。モーター構造はアクチンのマイクロフィラメント(微小線維)であり、α-アクチニン(英語版)、フィンブリン、フィラミンなどのアクチン結合タンパク質が膜下の皮質や繊維束に存在する。微小管のモータータンパク質、ダイニンとキネシン、そしてアクチンフィラメントのミオシンが、ネットワークに動的な特性を与える[40][41]。
多くの真核生物は、鞭毛と呼ばれる細長い運動性の細胞質突起、あるいは繊毛と呼ばれる多数の短い構造を持っている。これらの細胞小器官(英語版)は、運動、摂食、感覚などさまざまに関与している。それらは主にチューブリンから構成され、原核生物の鞭毛とはまったく異なる。これらは中心小体から生成する微小管の束によって支えられており、2本の1本鎖を9本の2本鎖が取り囲むように配列しているのが特徴である。鞭毛は、ストラメノパイル(Stramenopiles)の多くに見られるように、管状小毛(マスチゴネマ(英語版))を持つこともある。それらの内部は細胞質と連続している[42][43]。