看護師
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正看護師が「医師の指示のもと」各種ケアを行うのに対し、准看護師は「医師または看護師の指示のもと」同内容のケアを行うことになる(業務範囲に差はないが、自らの判断による看護業務ができない)[44]。資格に関しても、看護師は厚生労働大臣から免許を受けるが、准看護師は都道府県知事からの免許を受けることになる[44]

この違いは、両者の資格要件や取得までの履修時間にも表れている。日本で看護師として働くには、高校を卒業したのちに「大学または3年以上の看護系教育」を受けて、看護師国家試験に合格する必要がある。免許取得前の教育では、人間を幅広く理解する能力、根拠に基づき計画的に看護を実践する能力、他職種と連携・協働していく能力など、看護師の実務で求められる能力を培うための教育が行われる[45]。一方、准看護師になるための最終学歴は中学卒業以上であり、そこから「2年以上の看護系教育」を受けて、地方自治体(都道府県)が行う准看護師試験に合格する必要がある[44]

看護師は医師の助手ではない。ある特定の状況ではそれも当てはまるが、看護師は患者の世話をしたり、他の看護師を補助することが多い[46]。 看護師はまた、医師が行う診断検査の手伝いをする。看護師は、ほとんど常に他の看護師と一緒に働いている。看護師は、要請された場合に救急処置や外傷治療にあたっている医師を補助する[47]
ジェンダー問題

雇用機会均等法にもかかわらず、多くの国で看護師は女性中心の職業であり続けている。WHOの2020年『State of the World's Nursing』によると、看護労働力の約90%が女性である[48]。例えば、カナダおよび米国では看護師の男女比率が約1:19であり[49][50]、この比率は世界中で見られる。特筆すべき例外として、フランス語圏のアフリカ諸国 (Francophone Africa) [注釈 2]では女性よりも男性の看護師が多い[51]。欧州では、スペイン、ポルトガル、チェコ、イタリアなどの国で看護師の20%以上が男性である[51]。なお、米国の男性看護師の数は1980年から2000年の間に倍増しており[52]、日本でも2008年から2018年までの直近10年間で男性看護師の数が倍増している(それでも男女比率は男性7.8%、女性92.8%)[53]。依然として女性看護師は一般的であるが、平均して男性看護師のほうがより多くの給料を受け取っているというデータもある[54]。2014年に日本において男性看護師の職能団体として全国男性看護師会が設立された。
マイノリティ問題

統計によると、米国では看護職の19.2%がマイノリティ(少数民族)の背景を持つ人々で、 残る80.8%が白人の特に女性で占められている[55]。看護分野において人種多様性が少ないと、多様人種の患者治療で困難が生じる可能性がある。



名義貸し問題

特に看護師が常に看護業務をする必要がある訳ではない福祉施設などでは書類上だけ看護師を所属させる、所謂「名義貸し」が一定数見られ、行政処分例も相当数存在する。また、看護師が常に看護業務を行う必要がある医療・介護施設でも看護師の設置基準を登録上だけでも守ろうと名義貸しに頼るケースがある。
活動範囲
日常生活動作の支援詳細は「日常生活動作」および「リハビリテーション」を参照

看護師は、看護ケアを管理および調整して日常生活動作(ADL)を支援する。多くの場合そうしたケアの提供は介助に携わる人達に委託される[注釈 3]。これには、ベッド内にいる活動耐性低下患者の移乗動作など患者の移動を介助することも含まれる。
医薬品

医薬品の処方権限は国や地域によって異なる。米国では多くの地域で、医師やナース・プラクティショナー(上級看護職,NP)といった処方権限を持つ専門家によって処方された薬をレジスタードナース(登録看護師,RP)が管理している。日本では、薬剤師が医師の処方箋に基づいて薬を調剤するため、看護師は患者に対して薬の服用後に副作用が現れたか等を尋ねたりする。

看護師には薬物の投与前後を含むケア全体で患者を評価する責務があり、処方者と看護師との協力的な取り組みを通じて医薬品の調整が行われることが多い。米国では、処方者に関係なく看護師は自分達の投薬する薬に対して責務があり、処方箋に間違いがある場合は看護師がそれに気づいて報告することが法的に期待されている。また、患者に有害の可能性があると思しき投薬を拒否する権利を有している[57]。日本では、指示簿など医師の指示に基づいて看護師が投薬することは認められているが、処方箋の疑義については調剤を行う薬剤師が事前に医師側へと照会することが法的に期待されている[58]。また患者の病態に応じた薬剤投与量調節も、事前に医師の指示がある場合は可能だが[59]、医師の指示なしに看護師自らが処方の変更をすることはできない。イギリスには、自らの実践範囲から任意の薬を処方できる追加の専門訓練を受けた看護師が存在する[60]
患者教育詳細は「患者教育」を参照

病状説明の際に、患者の家族が加わることも多い。患者とその家族に対して適切に病状説明すること(患者教育)が、合併症や病院訪問の減少につながる[61]
専門分野と実践場面

看護師は、全医療職の中で最も多様性に富んでいる。看護師は幅広い場面で実践にあたるが、概ね看護される需要に応じて分かれている。

主な分野は次のとおり。

コミュニティや公共の場(日本では
保健師が行う)

生涯にわたる家族や個人

成人老年学

小児科

新生児

婦人科やジェンダー関連

メンタルヘルス

情報学(eHealth

急性期病院

外来の場面(診療所、緊急看護現場、キャンプなど)

各種学校の保健室

このほか、循環器看護 、整形外科看護、緩和ケア周術期看護、産科看護、がん看護[62]、看護情報学、遠隔看護、放射線、救急看護,ストマケアといった専門分野もある。

看護師は、病院、個人宅、学校、製薬会社など幅広い場面で実践する。看護師は、企業の健康管理室、診療所や医師事務所、介護施設等で働いている[63]。他にも、クルーズ船や兵役で働く者もいる。看護師は、各企業のヘルスアドボカシー[注釈 4]や患者アドボカシー[注釈 5]部門で働き、様々な臨床上の問題や管理面の問題を支援している。中には弁護士を兼務したり弁護士と共に活動する者 (Legal nurse consultant) もいて、患者記録を見直して十分なケアが提供されたことを保証したり、法廷で証言している。看護師は臨時雇いで働くことも可能であり、契約を結ばず様々な設定でシフト入りすることも含まれ「看護師の日雇い派遣」[66]と通称されることもある。大学の研究室や研究機関の研究者として働く看護師もいる。他にも情報学の世界を掘り下げて、コンピュータ化されたチャートプログラムやその他のソフトウェア作成に関するコンサルタントを務める者もいる。作家として記事や書籍を出版し、重要な参考資料を提供する看護師もいる[67](日本では看護師兼作家として藤岡陽子が知られている)[68]
職業上の危険

国際的には、看護師不足が深刻である[69]。その理由の一つとして、看護師が実務を行う職場環境が原因だとされている。アメリカ看護師協会によると、30%の看護師たちが自分の働く現場を「劣悪な労働環境」と表現しており、40%以上もの看護師が12時間以上に及ぶ勤務を余儀なくされているという[70]。一部の国や州は受け入れ可能な看護師と患者の比率に関する法律を制定しており、例えば日本は一般病院の外来で「患者30人:看護師および准看護師1人」という人員配置標準を定めている[71]

速いペースかつ予測不可能な医療ケアの性質のため、看護師は高い職業性ストレスを含む傷病リスクにさらされている。看護は特にストレスの多い職業であり、看護師は絶えずストレスを仕事関連の主な懸念事項として認識しており、@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}他の職業と比較して最も高いレベルの職業性ストレスを抱えている[要出典]。このストレスは、環境、心理社会的ストレス要因、看護の要求(習得しなければならない新技術を含む)、看護に関連した感情労働、肉体労働、シフト勤務、高い作業負荷によって引き起こされる。このストレスは、睡眠障害うつ病、死亡、精神疾患、ストレスに関連した病気(一般的な病気も含む)を含む短期長期どちらの健康問題リスクにも看護師をさらしている。看護師は二次受傷と道徳的苦悩を催すリスクがあり、これが精神衛生を悪化させる可能性がある。また、看護師の燃え尽き症候群(40%)や心労(43.2%)も高率である。この両者は病気リスクのほか、医療過誤、最適でないケアの提供リスクをも高めている[72]

看護師はまた、職場内での暴力および嫌がらせのリスクにもさらされている[73]


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