看護師
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また、患者に有害の可能性があると思しき投薬を拒否する権利を有している[57]。日本では、指示簿など医師の指示に基づいて看護師が投薬することは認められているが、処方箋の疑義については調剤を行う薬剤師が事前に医師側へと照会することが法的に期待されている[58]。また患者の病態に応じた薬剤投与量調節も、事前に医師の指示がある場合は可能だが[59]、医師の指示なしに看護師自らが処方の変更をすることはできない。イギリスには、自らの実践範囲から任意の薬を処方できる追加の専門訓練を受けた看護師が存在する[60]
患者教育詳細は「患者教育」を参照

病状説明の際に、患者の家族が加わることも多い。患者とその家族に対して適切に病状説明すること(患者教育)が、合併症や病院訪問の減少につながる[61]
専門分野と実践場面

看護師は、全医療職の中で最も多様性に富んでいる。看護師は幅広い場面で実践にあたるが、概ね看護される需要に応じて分かれている。

主な分野は次のとおり。

コミュニティや公共の場(日本では
保健師が行う)

生涯にわたる家族や個人

成人老年学

小児科

新生児

婦人科やジェンダー関連

メンタルヘルス

情報学(eHealth

急性期病院

外来の場面(診療所、緊急看護現場、キャンプなど)

各種学校の保健室

このほか、循環器看護 、整形外科看護、緩和ケア周術期看護、産科看護、がん看護[62]、看護情報学、遠隔看護、放射線、救急看護,ストマケアといった専門分野もある。

看護師は、病院、個人宅、学校、製薬会社など幅広い場面で実践する。看護師は、企業の健康管理室、診療所や医師事務所、介護施設等で働いている[63]。他にも、クルーズ船や兵役で働く者もいる。看護師は、各企業のヘルスアドボカシー[注釈 4]や患者アドボカシー[注釈 5]部門で働き、様々な臨床上の問題や管理面の問題を支援している。中には弁護士を兼務したり弁護士と共に活動する者 (Legal nurse consultant) もいて、患者記録を見直して十分なケアが提供されたことを保証したり、法廷で証言している。看護師は臨時雇いで働くことも可能であり、契約を結ばず様々な設定でシフト入りすることも含まれ「看護師の日雇い派遣」[66]と通称されることもある。大学の研究室や研究機関の研究者として働く看護師もいる。他にも情報学の世界を掘り下げて、コンピュータ化されたチャートプログラムやその他のソフトウェア作成に関するコンサルタントを務める者もいる。作家として記事や書籍を出版し、重要な参考資料を提供する看護師もいる[67](日本では看護師兼作家として藤岡陽子が知られている)[68]
職業上の危険

国際的には、看護師不足が深刻である[69]。その理由の一つとして、看護師が実務を行う職場環境が原因だとされている。アメリカ看護師協会によると、30%の看護師たちが自分の働く現場を「劣悪な労働環境」と表現しており、40%以上もの看護師が12時間以上に及ぶ勤務を余儀なくされているという[70]。一部の国や州は受け入れ可能な看護師と患者の比率に関する法律を制定しており、例えば日本は一般病院の外来で「患者30人:看護師および准看護師1人」という人員配置標準を定めている[71]

速いペースかつ予測不可能な医療ケアの性質のため、看護師は高い職業性ストレスを含む傷病リスクにさらされている。看護は特にストレスの多い職業であり、看護師は絶えずストレスを仕事関連の主な懸念事項として認識しており、@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}他の職業と比較して最も高いレベルの職業性ストレスを抱えている[要出典]。このストレスは、環境、心理社会的ストレス要因、看護の要求(習得しなければならない新技術を含む)、看護に関連した感情労働、肉体労働、シフト勤務、高い作業負荷によって引き起こされる。このストレスは、睡眠障害うつ病、死亡、精神疾患、ストレスに関連した病気(一般的な病気も含む)を含む短期長期どちらの健康問題リスクにも看護師をさらしている。看護師は二次受傷と道徳的苦悩を催すリスクがあり、これが精神衛生を悪化させる可能性がある。また、看護師の燃え尽き症候群(40%)や心労(43.2%)も高率である。この両者は病気リスクのほか、医療過誤、最適でないケアの提供リスクをも高めている[72]

看護師はまた、職場内での暴力および嫌がらせのリスクにもさらされている[73]。暴力は通常、非職員(例えば患者やその家族)によって行われるのに対し、嫌がらせは典型的に他の病院職員によって行われる。アメリカの看護師は57%が職場で脅されており、17%が身体的暴行を受けた、と2011年に報じられた[72]日本看護協会の2017年調査でも、看護職の52.8%が勤務先や訪問先で暴力やハラスメントを受けたと回答しており、患者からの身体的攻撃が特に深刻であるとの実態が判明している[74]
予防

看護の職業上の危険を軽減できる介入は数多くあり、個人と組織どちらを対象に絞ったものも存在する。個人に焦点を当てた介入にはストレス管理プログラム等があり、個人に合わせて調整可能である。ストレス管理プログラムは、不安、 睡眠障害、 ストレスの兆候を軽減させることができる。組織的介入は、ストレスの多い局面を定めてそれらに対する解決策を生み出すことによって、作業環境でのストレスの多い局面を減らすことに焦点を当てている。組織的介入と個人介入を一緒に使うことが、看護師のストレスを軽減するのに最も効果的である[72]。日本の一部医療機関や介護施設では、(看護の肉体的負担を軽減する)動力付きのパワードスーツが使用されている[75]。四肢や腰椎のサポートスーツも試行されている[76][77]
世界各国
南北アメリカ
アメリカ合衆国アリゾナ州の看護師2人(1943)

米国では、実践範囲が看護師を認可する州または地域によって決定される。州ごとに看護ケアを管理する独自の法律、規則および規制がある。通常こうした規則や規制の策定は看護委員会に委任され、この委員会がこれら規則の日常的な管理、看護師や看護助手のための免許手続きを行い、看護問題に関する決定を行う。一部の州では、「看護師」という用語をレジスタード・ナースと有資格の准看護師 (Licensed practical nurse) の組み合わせにのみ使っている。

病院の場合、レジスタード・ナースはしばしば有資格の准看護師および国家資格を持たない介助要員 (Unlicensed assistive personnel) に職務を委任する。

レジスタード・ナースは、臨床看護師としての雇用に限定されない。医師のほか、弁護士、保険会社、政府機関、地方機関、公衆衛生機関、民間企業、学区、通院外科診療所等から雇用される。レジスタード・ナースの中には、自営の独立したコンサルタントもいれば、大手メーカーや化学会社で働く者もいる。治験コーディネーター(Research nurse)[78]は、生物学、心理学、人間開発、医療システムなど、多くの分野で研究や評価(結果と過程)の実施および支援をしている。

多くの雇用主が、柔軟な勤務スケジュール、育児給付金、教育給付金、賞与を提供している。レジスタード・ナースの約21%が組合員または組合契約の対象である[79]

看護は国内最大の医療職である。2017年には、全米で400万人超のレジスタード・ナースと92万人超の有資格准看護師がいた[80]。免許交付されたレジスタード・ナースのうち260万人(84.8%)が看護に従事している。看護師は病院職員で最大規模の単一要員を構成しており、病院患者ケアの主要な提供者であり、同国の長期ケアの大部分を提供している。職業看護者になるための主な課程は、技術レベルの実践に照らした4年間の看護学の理学士号(BSN)である。レジスタード・ナースはBSNプログラムを通じて準備が整い、3年間の看護学の短期大学士号または3年間の病院研修プログラムで 病院のディプロマを受け取る。全員がこれら受験要件を得たのと同じ州で資格試験を受け、これに合格すると看護資格を取得する。
人員不足
レジスタード・ナースは米国で最大規模の医療従事者群で、2011年には約270万人が雇用されている[81]。それでも、新卒者や諸外国で訓練を受けた看護師の数はレジスタード・ナースの需要を満たすのに不十分だと報じられている[誰によって?]。看護不足は自発的な不足であるという考察を裏付けるデータが存在しており[82]、言い換えれば看護師は自分の意志で看護を離職している。2006年には、約180万人の看護師が看護師として働かないことを選択したと推定されている。

アメリカ合衆国労働統計局は2011年に約29.7万人の医療雇用が創出されたと報告した。レジスタード・ナースが医療従事者の大部分を占めているため、これらは主に看護師によって埋められたものであろう。また同局は、2020年までに労働力の増加と交代により120万人の看護職求人が出ると述べている[83]
継続教育
医療知識が着実に高まる中、看護師は継続的な教育を通じて医療ケアの前線に居続けることができる。継続的な教育プログラムにより、看護師は可能な限り最高のケアを患者に提供し、看護職のキャリアを高めて、看護委員会の要件を保つことが可能である。米国看護師協会 (American Nurses Association) と米国看護資格センター (American Nurses Credentialing Center) が、質の高い継続的な教育を看護師が受けられるよう尽力している。継続的な教育講習は、あらゆるレベルの看護師に向けた強化学習を提供するよう調整されている。また多くの州が継続的な看護教育(CNE)を規定している。初回免許や免許更新の条件としてCNEを必要とする看護免許認可委員会は、他州の認可委員会や米国看護資格センター(と同センター指定の組織)により提供される教育コースを受け入れている[84]


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