省スペースパソコン
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あるいはシャープMZ80シリーズコモドールのPET-2001などのオールインワンタイプも合った。もちろん、PC-8800シリーズなどキーボードと本体が分離したものもあったが、どちらかというと高性能・高級な機種に採用される例が多く、主流とはいえず、サイズもまちまちで今日的な基準からするとやや小ぶりのものが多かったように思われる。

1981年IBMIBM PCの登場と前後して16ビット機への移行が始まる中、以後事実上の標準とみなされることになるPC/AT1984年)や、日本国内において1980年代後半から1990年代前半にかけてデファクトスタンダードの地位を築いたPC-9800シリーズの登場などを境に、パソコンの主流が横置き型の独立した本体を持つ大型で拡張性の高い機種とみなされるようになってくる。このような条件がそろって初めて省スペースパソコンという概念もまた登場したといえよう。Apple III

アップルはこの時期にApple IIIという比較的コンパクトなデスクトップパソコンを作っているが、デザイン優先のあまり設計に無理をきたし不安定で、商業的にも失敗している。その後アップルは1984年、Macintoshを発売する。初代Macintoshは9インチディスプレイ一体型で3.5インチFDDを採用していた一方、拡張性はなく、コンパクトなパソコンであり、省スペースパソコンと呼べるものであった。以後もアップルはコンパクトな一体型Macintoshを作りつづける。

独立の本体を持つ省スペースパソコンとしては、日本国内ではNECのPC-9801U2(1985年)あたりが明確に省スペースパソコンの概念を打ち出した走りであると思われる。拡張スロットを通常の4個から2個へと削り、5インチFDDが主流であった時代に3.5インチフロッピーディスクドライブ (FDD) を採用している。当時の基準から言えば、CRT(ブラウン管)ディスプレイの横に立てて設置すると、ほとんど場所を取らないといってよいものである。Macintosh LC

アップルの独立筐体を持つ省スペースデスクトップ機としては1990年に発売されたMacintosh IIsiならびにMacintosh LCがある。特にLCは3.5インチFDDとHDDを搭載可能で拡張カードスロットも備えていながらとても小型であり以後シリーズ化された。デザイン的にマッチする12インチディスプレイと組み合わせると、一体型Macより一回り大きい程度のコンパクトなシステムを構成できた。

1980年代後半から、液晶ディスプレイ(や一部ではプラズマディスプレイ)などの薄型の表示装置が一部のPC用で使われるようになってきた。初めはNECのPC-9801LTやアップルのMacintosh Portableなどのラップトップパソコン、後にはアップルのPowerBookや東芝DynaBookなどのノートパソコンとなる系統である。特に初期のラップトップマシンは持ち運び用途もさることながら、省スペースデスクトップパソコンとしての性格も強いものであった。また、PC-9801Tなどラップトップパソコンの体裁を保ちながらキーボードと本体を分離できる機種もあり、今日的な液晶ディスプレイ一体型省スペースデスクトップ機の走りと見ることもできる。

1990年代も半ばに差し掛かると、日本語オペレーティングシステム (OS) 環境の整備と性能の向上ならびに低価格化によって、PC/AT互換機をベースとするいわゆるDOS/V機が日本でも認知されるようになる。普及初期は横置きの筐体を基本としたが、高性能で拡張性を特に重視するものを中心にタワー型の筐体を持つものが増えるようになった。それ以前の横型機種でも縦置き可能なものは存在したが、はじめから縦置きを前提にしたものは少なく、PC-8800シリーズの一部やFM-TOWNSシャープX68000シリーズなどに例を見るにとどまっていた。同時期にアップルでも高性能機種を中心にタワー型筐体を採用するようになっている。

1990年代後半、スリム型(スリムタワー型)・ブック型などと呼ばれる小型の縦置きパソコンが現れてくる。特に同時期にデスクトップパソコン用表示装置として普及の兆しを見せていた液晶ディスプレイと組み合わせて使用すると、一般的な横置き筐体のパソコンとCRTの組み合わせよりもはるかにコンパクトなシステムを実現できた。一時期は省スペースデスクトップパソコンといえばこの形式のものをさすのが普通であったほどである。1997年頃、まだまだ液晶ディスプレイ装置などは比較的高価格であったにもかかわらず、たとえばアキアはDOS/V機とMacintosh互換機の両方でこの形式のパソコンを中心に販売して一時期成功を収めた。アキアは後にアップルの互換機戦略変更のあおりを受ける形でパソコン業界から撤退しているが、今日でもビジネス用途などで用いられる低価格帯製品を中心に、この手の製品を大手パソコンメーカーのラインナップの中に多く確認することができる。

一体型パソコンでは、WindowsなどのGUI環境の普及に伴って大型のディスプレイが必要とされた事からCRTディスプレイが巨大化し、オーソドックスな横置きまたはタワー型のパソコンとCRTとの組み合わせよりはコンパクトであったとはいえ、依然としてあまり省スペースといえるものではなくなりつつあった。この時期の一体型パソコンの第一の売りはコンパクトさではなく、配線がいらないなどの簡便さであり、1990年代後半以降の機種ではあまり性能や機能を求めないことに由来する価格の安さであった。この路線の機種として、PC-9821シリーズの一体型機種(CanBe、1992年?)やPS/V Visionなどのいわゆるマルチメディアパソコンがある。1994年頃、日本でもパソコンの Windows化が本格的には進み始めたことで、周辺機能のハードウェアをあらかじめ備え、OSやアプリケーションソフトウェアプリインストールしたオールインワン型のパソコンが出現した。オールインワン型のCRT一体型パソコンが多く出現し、一時的なにぎわいを見せたものの、性能の低さのため短命に終わったものが多い。そこそこの性能で、安く必要な機能をそろえるという発想は、時期尚早だったものと考えられる。この時期のCRT一体型パソコンは汎用のパーツを使用する横置き型デスクトップパソコンやタワー型パソコンと比べて安価ではなかった。初代iMac

しかし、AppleからiMacが登場すると、再び省スペースパソコンとしての一体型機種の地位は向上することとなる。セットアップの簡便さという特徴はそのままに、レガシーデバイスの廃止や、思い切った拡張性の削減によってCRTディスプレイ一体型でありながら、十分なコンパクトさを備えることができた。しかも、同時のMacintoshラインナップの中では十分な性能を持つPowerPC G3をCPUに採用したことで、真の意味で家庭用としては十分な性能を持った廉価版コンパクト機種として登場することができた。また、デザインを重視したパソコンはiMac以前にも有ったとはいえ、一般家庭向けパソコンのデザインについてインテリアの一部としての側面を広く意識されるようになったのも、iMacの登場による影響の一つだと考えられ、このような風潮は現代の省スペースパソコンのデザインにも少なくない影響を与えていると考えられる。

この時期に、一般家庭へのインターネット接続環境の普及が始まったということもまた、このような使い勝手を重視したスタイルの省スペースパソコンの普及に拍車をかけたと考えられる。それまでは、ワープロ表計算などの実用目的にしろ、ゲームなどの趣味用途にしろ、パソコンの購入にあたっては分かる人が自分の目的に合わせて選択するのが当然であったのに対して、1990年代後半以降、とりあえず特別な目的がなくても、インターネット端末として利用し、必要になったときに、ワープロでも何でもその目的にあわせて使えばよいという意識が一般化することになる。


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