直接民主主義(ちょくせつみんしゅしゅぎ、英: direct democracy)とは、国民が代表者などを介さずに所属する共同体の意思決定に直接参加し、その民意を政治に反映させる政治体制のことである[1]。直接民主制(ちょくせつみんしゅせい)とも呼ばれる。
直接民主主義の原理は、イニシアティブ(住民発案・国民発案)、リコール(国民解職)、レファレンダム(国民表決・住民投票・国民投票)の3つの要素の集合である。
対比概念は間接民主主義である。現在ほとんどの国家では間接民主制を採用しているが、憲法改正など一部の事柄において直接民主制を併用している。 直接民主制の起源は、紀元前800年ごろの古代ギリシアの民主主義政治である。政治参加資格のある自由市民(一定資産を持つ成人男性、女性・奴隷・外国人は除く)が直接議論して決定し、役職は抽選で選出された。主な利点には、有権者全員参加のため、公開性が高く、自治意識に貢献し、最新の住民意思が直接反映でき、正統性が高い。反面、主な難点としては全員が集合し議論する時間・場所・費用などの負担、専門的分野での知識経験の不足、個々の時点で相反する決定をするなど継続性への不安、いわゆるポピュリズムに陥る懸念、などがある。このほかには、共和政ローマにおける民会が実例として挙げられる。 こうしたことから、17世紀から、都市国家の伝統を持つスイスでは、スイス連邦議会(国会)の決議や、国民が作成した法案について、国民自らがイニシアチブ(国民発議)を行使し、レファレンダム(国民審議と国民投票)によって、その是非を決する参政権が広く浸透している。イニシアチブは、議題の内容を問わず、年間500件以上行われている[2]。また、地方自治における直接民主制(ランツゲマインデ (Landsgemeinde
概説
18世紀にジャン=ジャック・ルソーは直接参加型民主主義のみを「真の民主主義」と考えた[4]。マックス・ウェーバーは近代国家は官僚制などの機能集団により議会制(間接民主主義)は形骸化していると主張した。カール・シュミットは民主主義の本質は人民の同一性と考えて、多様性を進めて同一性の障害物となる議会制を補う制度として、国民発案と国民票決を主張した。
19世紀中期の、主にヨーロッパ諸国では、間接民主主義である議会制(代表制、代議員制)を採用し、重要な決定に限り国民投票や住民投票など、直接民主主義を併用した政治と制度が用いられるようになった。
直接民主主義の理念を掲げていた国家の例として、リビアにかつて存在した大リビア・アラブ社会主義人民ジャマーヒリーヤ国などがある。直接民主制(ジャマーヒリーヤ)を標榜し、議会や政府を持たなかったが、実質的には革命指導者の地位にあるカダフィによる独裁国家であったと解釈されている[5]。