目の見えない音楽家
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19世紀のフランスとイングランドにおけるピアノ調律師には、目が見えない人も多かった。最初の目の見えないピアノ調律師はクロード・モンタルといわれている。モンタルは1830年、国立青年盲学院の在学中、独学でピアノ調律の方法を学んだ。モンタルの教員たちは当初、目が見えないのであれば実際に必要な機械的作業はできないのではないかと思った。それでもモンタルの技術は紛れのないものだったので、モンタルはすぐに学友に調律の授業を教えるように頼まれた。最終的にモンタルは差別を乗り越え、教授やプロの音楽家の調律師として、権威のある仕事に複数従事した。モンタルの例や教え方は、英国王立盲人協会の創設者トーマス・ローズ・アミテージに取り入れられ、モンタルの成功がフランスやイングランドのほかの目の見えない調律師へも道を開くこととなった。現在でも調律師は目が見えないというイメージは根深く、目の見えるピアノ調律師に遭遇すると、驚くイングランド人もいる[19]。目の見えないピアノ調律師の組織は、イングランドで現在も活動中である[20]
アメリカのカントリー・ブルース

目の見えない音楽家は、アメリカのポピュラー音楽に大きく貢献をした。ゴスペルをレコーディングした最初期のピアニストであるアリゾナ・ドレインズや、アル・ヒブラー、レイ・チャールズは目が見えなかったが、ソウルミュージックの創出に重要な役割を果たした[21][22][23]。史上最高のジャズピアニストとして挙げられるアート・テイタムも同じく、ほとんど目が見えなかった[24]スティーヴィー・ワンダーも生まれつき目が見えなかったが、30曲以上でアメリカのトップ10に入るヒットを記録し、2019年時点で25のグラミー賞を受賞している[25]

一方、目の見えない黒人の音楽家たちは、今でもカントリー・ブルースと最も強く関係している。最初に成功した男性カントリー・ブルース演奏家であるブラインド・レモン・ジェファーソンをはじめ、ブラインド・ウィリー・マクテルブラインド・ウィリー・ジョンソン、ソニー・テリー、ブラインド・ボーイ・フラー、ブラインド・ブレイク、レヴァランド・ゲイリー・デイビスなど、多くのカントリー・ブルースマンはほとんど目が見えなかった。目の見えないカントリー・ブルースマンの姿は象徴的だったため、目の見えるジャズギタリストのエディ・ラングが、ロニー・ジョンソンとブルースのレコードを録音するため黒人の仮名を決めようとしたときに、ラングは当然のごとくブラインド・ウィリー・ダンに決めた[26]
クラシック音楽

イタリアのテノール・ポップス歌手、アンドレア・ボチェッリは先天性緑内障を患っており、12歳の時、サッカー時の事故によって悪化し失明した[27]。のちにクラシック音楽史上、最高の売り上げを記録した歌手になった[28][29][30][31]

2009年、日本の辻井伸行(当時20歳)は、主要な国際コンクールの一つである第13回ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールにおいて、視覚障害を持つピアニストとしては初めての優勝をおさめた(同時に、同コンクールのために書かれた新曲の最も優れた演奏に対して授与される「ビヴァリー・テイラー・スミス賞」も受賞している)[32]。予選では、ショパンの「12の練習曲 作品10」を全て演奏した。生まれつき目が見えなかった辻井は、複雑なクラシックピアノを独自の方法で習得し上達していった[33]。辻井のピアノ演奏の動画はインターネット上で公開され、コンクールでの優勝は世界的な評判を巻き起こした。コンクールの翌年の2010年の時点で、辻井のディスコグラフィには10枚のCDがあり、なかには10万枚以上を売り上げているものもあった[34]。ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールの優勝者として、辻井は世界中でコンサートを開催し続けている[35]
脚注^ Taesch, Richard. “Quick Facts - Braille Music, Music Technology”. National Resource Center for Blind Musicians. 2008年10月20日時点の ⇒オリジナルよりアーカイブ。2009年1月25日閲覧。
^ “Music Library”. 2005年3月13日時点の ⇒オリジナルよりアーカイブ。2005年6月17日閲覧。
^Guiding the Blind, Archived 24 September 2005 at the Wayback Machine.


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