盗聴
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しかし、ひたすら聞き耳を立てるタイプの盗聴の場合は、盗聴器の存在に気付かないケースも多い。

電話線に仕掛けられたタイプの物ではノイズが入るなど、電話の通話品質に影響が出る場合もあり、不審に思って修理屋を呼んだ際に発覚したケースがあるほか、FMラジオ放送などの帯域を利用する市販盗聴器も多く、ラジオへの混信で気付いたケースもみられる。

無線式盗聴器の場合は、ワイドバンドレシーバー(広帯域受信機)で盗聴電波を確認し、電波の発信源をフォックスハンティングと呼ばれる手法で、おおよその位置や方向を特定して発見する方法が取られている。

また、市販の盗聴器は概ね使用されている周波数が決まっているため、その周波数にのみ反応する比較的安価な電波受信機も市販されており、その機器の反応の強弱で位置を特定、発見することも可能である。ラジオの放送帯域を利用するタイプでは、屋内で音を出したまま、家の外でラジオ放送の選曲をしてみるなどの方法で発見も可能である。
市販の無線式盗聴器で使用頻度が高い周波数
UHFタイプ
398.605MHz(Aチャンネル)399.455MHz(Bチャンネル)399.030MHz(Cチャンネル)
VHFタイプ
139.970MHz(Aチャンネル)139.940MHz(Cチャンネル)* いずれもモードはナローFMである。
通信システムと盗聴

一般的に「盗聴」というと、特定個所に設置された「盗聴器」ばかりが話題となるが、通信というサービスを提供しているシステム全体が、その様々な通話経路での傍聴も可能である。例えば電話局交換機には「回線モニタ」という経路が付加されており、本来は通話品質をチェックするためのこの経路を傍聴することは、技術的には可能である。これにより「盗聴器という証拠を残さず」に盗聴は可能だとも考えられる。

電話交換機は電話回線局の構内にあって警備されているため、こういった操作を行える者は逆に限られてしまう。日本では戦前の二・二六事件の前後に、事件関係者(当時の陸軍皇道派につながるとされた者)に対して、東京憲兵隊や陸軍省軍務局、事件発生後は戒厳司令部が当時の逓信省の協力を得て電話局で電話の傍受・盗聴を行っていたことが戦後明らかになっている[8]。この行為は戦前においても憲法に定められた「信書の秘密の不可侵」を破るものであった[注 1]。戦後の日本ではこういった盗聴事件の報告はない。

近年、アメリカ・イギリスが全世界的な電子盗聴網「エシュロン」をひそかに構築して大規模な盗聴行為を行っていることが欧州議会により告発されているほか、nytimesが2005年2月20日に報じたところでは、アメリカ海軍が保有するシーウルフ級原子力潜水艦「ジミー・カーター」が海底ケーブル傍聴用の設備を搭載しているという。こういった活動は諜報機関などがテロの動向を探るために行われているとも報じられているが、日本でも同様な電子盗聴網は運用可能である[9]

ただ、こういった通信経路そのものを傍聴する場合には、通信内容による情報の取捨選択が必要で、現実レベルとしては膨大なコストが掛かる。何故ならテロリストが爆弾を仕掛けるための指示も蕎麦屋への出前の注文も、どちらも電話を使えば同じ通信経路を流れ得るためである。こういったノイズの取捨選択には高い技術的なハードルが存在し、ストーカーが意中の誰かの通話を盗み聞くためには余りに無駄が多いといえよう。これを応用して、無関係な電子メールの中に「爆破」「暗殺」「同時多発」といった単語をわざと混入させて特定の一日に一斉に発信し盗聴システムを混乱させる、反盗聴サイバーデモも行なわれている。
雑情報による防衛

盗聴は、盗聴されている側が気付かずに重要な話を盗み聞かれた場合には、非常な痛手となるが、逆に盗聴を被っている側が盗聴されていることに気づいている場合には、「意図して偽情報を盗聴させる」ことで欺くことも可能である。この「偽情報」は第二次世界大戦の頃より通信が戦術戦略の上で重要な役割を果たすようになると、意図してダミー情報を流布させる場合もあった[10]

こういった実際とはちがうダミー情報の流布は、盗聴側に対する牽制や無駄な動きを強いることにも繋がり、盗聴を逆に利用した「攻撃」だということもできる。また通信自体を雑情報に紛れ込ませることで、情報価値を損なわせることも出来る。例えば子供のなぞなぞ遊びにある「たぬき」はその好例である。「たぬき:あたす、じゅたうよたじにえたきまえ」と言う文では、そのまま聞いたら意味不明だが、「た」を抜く(た抜き)することで「明日、14時に駅前」となるのである。諜報合戦では、しばしばこれに似た騙しあいのケースが存在した。

この他、可逆圧縮など符号化による暗号を用いた通信も有効である。平壌放送乱数放送も、読解用の乱数表が無ければ文字の組み合わせが膨大でもあるため、傍聴は短波ラジオさえあれば誰にでも可能だが、その内容解読が困難になる。(→暗号史
無線電波の傍受

無線によっても各種通信が行われている。たとえば業務無線警察無線消防無線航空交通管制、タクシー無線、鉄道無線)、コンサート会場などで歌手や演奏者の楽器に取り付けられたワイヤレスマイク、身近なところでは携帯電話コードレス電話などである。これらの無線通信は暗号化されているものもあれば、暗号化されていないものもある。

こうした無線通信は電波によって行われるため、適した受信機があれば、電波の届く範囲でなら傍受することができる。受信機は無線機器を扱う店などで誰でも購入することができるので、暗号化されていない無線通信ならば容易に傍受することができる。

日本の電波法では、単にこれらの無線通信を傍受(音声なら聴くこと、画像なら見ること)することを直接は禁止していない。このため、日本では誰でも合法的にすべての無線通信を傍受することができる。ただし、特定の相手方に対して行われる通信を傍受してその存在や内容を誰かに漏らしたり、窃用(せつよう。通信内容を自己または第三者の利益のために利用すること)したりすることは電波法59条で禁止されている[11]

また、通信の当事者以外のものが暗号化されている無線通信を傍受して、その内容を漏らす又は窃用する目的でこれを復調しても電波法違反となりうる[12]
関連事象

刑事訴訟法上の「盗聴」は「公開をのぞまない人の会話をひそかに聴取または録音すること[13]」と定義される。この定義は対象を会話に限定しており、会話そのままの盗聴と有線通信の盗聴に区分される。

盗聴は法的には有線電気通信法違反や電気通信事業法違反で電話など通信の盗聴を取り締まることは出来るが、通信以外は「盗聴」行為を取り締まる法律はない[14]。しかし、警察は「盗聴の氾濫は見逃せない」としており、電波法違反や住居侵入罪など様々な法令を適用して摘発している[14]。盗聴事件に使われた延長コード付きコンセント型盗聴器を販売していた東京都千代田区の二業者について、電気製品に刻印が義務づけられている製造者番号や型式番号が盗聴器に転換される際に削り取られていた電気用品取締法違反容疑で摘発した例もある[14]

盗聴が捜査方法として許容されるか、許容されるとしてもいかなる要件の下でか、ということについては争いがあるが、捜査機関による有線通信の盗聴(傍受)については、日本国内では2000年8月15日に通称通信傍受法(正式名称「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」)が施行され、電話等の盗聴を含めた通信傍受による捜査が一定の要件の下に可能となった。この法律でいう「傍受」とは、「現に行われている他人間の通信について、その内容を知るため、当該通信の当事者のいずれの同意も得ないで、これを受けることをいう(通信傍受法2条2項)」という意義である。この法律に対しては日本国憲法第21条によって保障された通信の秘密が阻害されるとして反対意見がある。

なお、会話当事者の一方が相手方の同意を得ずに会話を録音することは秘密録音として盗聴と区別される。
盗聴で注目された有名事件

ウォーターゲート事件

日本共産党幹部宅盗聴事件

宮本顕治宅盗聴事件

オウム真理教事件 - オウムが敵対者などへの盗聴を多数実行した。

早稲田大学学生部長宅盗聴事件

ジャーナリスト宅盗聴事件

ニューズ・インターナショナル電話盗聴スキャンダル

脚注[脚注の使い方]
注釈^ 事件収拾後の帝国議会(秘密会)で逓信省は戒厳令布告後の傍受については戒厳令第14条の「郵信電報の開緘」を根拠とすると説明したが、当時隠匿された布告前の傍受は完全な違法行為であった。

出典^ KATZ v. UNITED STATES(389 U.S. 347)
^ KATZ v. UNITED STATES(389 U.S. 347)CONCUR/MR.JUSTICE HARLAN, concurring.


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