このほか、皮膚が光を感知することは視覚障害者の生理変化や実験から確かめられ、概日リズムの調整に膝の裏に光を当てる治療の効果が報告されている。ただし、このメカニズムははっきり分かっていない[24]。
ビタミンDの生合成詳細は「ビタミンD#生合成」を参照
皮膚は紫外線を受けてビタミンDを生合成する。骨の形成に不可欠なビタミンDを得るため、かつて乳児には日光浴をさせるべきと母子手帳などにも書かれていたが、現在は削除されている[19]。これは、通常の生活で生合成に充分な光を受けられる事や、かえって紫外線が与える悪影響が問題になるためである[19]。しかし、日本においてはビタミンD不足によるくる病の増加が指摘されている[25]。
皮膚の器官
毛
爪
皮脂腺
皮膚移植と人工皮膚詳細は「植皮」を参照
上述のように、皮膚は非常に繊細かつ複雑な組織で、かつ自己以外の異物を排除する免疫の働きによって、基本的に自己自身由来の皮膚しか生着しない。熱傷や放射線被曝で皮膚の産生機能が失われると命を落とすこともある[注釈 1]。
大規模な皮膚移植は、移植用にヒトの皮膚を大量に確保しなければならないという難題を伴う。ヒトに近い機能を持った動物皮膚の植皮も研究されているが、まだ本格的な実用化に至っていない。
「人工皮膚」も研究・製造されている。移植医療用としては、患部から一時的に体表を覆う代替として使用し、失われた皮下組織や皮膚の再建を待たなければならない。このほか、真皮まで含めたヒトの皮膚に近い構造を持ち、医薬品や化粧品などによるヒトの皮膚に対する作用を調べるための人工皮膚も開発されている[27]。 汗腺と皮脂腺は哺乳類特有のものだが、他の脊椎動物からも皮膚腺は見つかっている。魚類の多くは皮膚に粘液を分泌する細胞があり、保温や保護の役目を果たしている。中には毒を分泌する腺や発光器や、より水っぽい漿液を分泌する細胞を持つ種類もいる。両生類には粘液を分泌する細胞が集まって嚢のような腺を形成している。また、ほとんどの両生類には皮膚に粒状の腺を持ち、刺激性または毒性の化合物を分泌する[28]。 魚類や両生類・爬虫類の皮膚からもメラニンは発見されているが、表皮は比較的無色のものが多い。実際に見えている体の色は真皮の色素胞のものである場合が多く、メラニン以外にもグアニンやカロテノイド色素が含まれている事もある。カメレオンやヒラメなど多くの種が、この色素胞の大きさを変えてカモフラージュをする[28]。 鳥類や爬虫類の表皮は哺乳類に近く、角質化しケラチンで満たされた細胞が水分の蒸散を防いでいる。これはヒキガエルのような両生類の一部にも見られる。しかし、これらの動物は表皮から真皮に至る細胞分化がヒトのような明瞭さがなく、あいまいである。哺乳類の表皮には少なくとも一層の基底層と角質層があるが、ヒトが持つような中間層の明らかな区別はつけられない。髪は哺乳類の表皮に特有のものであり、羽毛は少なくとも現在まで絶滅していない種に限れば鳥類特有のものである[28]。 鳥類と爬虫類は比較的わずかな皮膚腺しか持たず、爬虫類のフェロモン分泌細胞やほとんどの鳥類が持つ尾脂腺のように、決まった機能に特化していると考えられる[28]。
動物の皮膚
魚類と両生類
鳥類や爬虫類
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 東海村での放射線被曝事故では被害者は即死には至らなかったが、多臓器不全に加えほぼ全身の皮膚の産生機能喪失が長期にわたり患者を苦しめた[26]。
出典^ a b c d e f g h i j k l m 生化学辞典第2版、p.1068 【皮膚】
^ a b c 解剖学第2版、p.26-31、外皮構造(皮膚)
^ a b c d e f 傳田(2005)、p.6-8、にれ1.皮膚は最も大きな臓器「外臓」である 皮膚の階層構造