皮膚
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しかしこの角質はセロテープを皮膚に貼って剥がせば簡単に剥離するが、すぐ下のケラチノサイトが脂質を放出して再生が加速され、1日で80%程度が回復する[20]。また、繰り返し圧迫されるとたこのように局所的に厚くなることが知られる[20]。空気が乾燥した状態に1週間程度置かれると、表皮は角質の厚みを増す事も実験で確かめられている[20]。その一方で、角質を剥離させた箇所にプラスチックフィルムなど水を通さない障害物を貼ると修復は行われないが、ゴアテックスでは貼っても角質は修復される[20]。このように皮膚は環境に対応するが、これは神経系循環器系から独立した自己適応能力と、保護機能が働く状態をモニターする能力を、どちらも自立的に備えていることを示す[20]

これらの自己修復能力は、皮膚の表面電荷が影響するという説がある。によって電気抵抗値が変化することは古くから知られ、その原理は嘘発見器に応用された。しかし近年、など汗腺がない箇所や無毛マウスでもマイナスの電位差があることが明らかになった[21]。この電荷は、アジ化ナトリウムでケラチノサイトの呼吸を止めたり、イオンチャネルを止める薬剤に浸漬すると即座になくなる[21]。皮膚の電荷は、角質のすぐ下にカリウムカルシウムイオンが偏在することが生じ、この電荷の変動をケラチノサイトが感知することによって修復が働くと考えられる[22]。逆に外から電荷を皮膚にかけると、マイナスの電荷では再生が早まり、プラスだと遅れることが実験で確認された[22]
物質の透過

皮膚は物質の排泄する役割も持つ[1]。動物によって特に大きく異なっている機能は、皮膚の物質透過性である。ほとんどの陸上動物は、体内の水分を体外に奪われないよう、皮膚は水分を通さないようになっている。これはその動物がどのぐらい乾燥した環境に適応できるか、ということと密接に関連している。それに対し、水中で生活する動物の場合はもう少し複雑である。海中で生活する動物の場合、海綿クラゲなどの比較的単純な動物であれば、体内で細胞外にある液体(体液)は海水とその成分は同じであるため、皮膚は海水が体内に入るのを遮断する必要がない。こういう動物は、逆に、皮膚を通して酸素を含んだ新しい海水を取り入れたり、老廃物を含んだ体液を排出することも可能である。しかし、海産魚など、より複雑な構造を持つ動物になると、体液の濃度は海水そのものよりも薄いため、この場合には皮膚を通して海水が浸入しないように、同時に、浸透圧の差の関係で、体内の水分がより高い塩濃度の海水に奪われないように、水分をできるだけ通さない構造になっている。逆に、淡水で生活する動物では、体内の塩分が重要であり、これが体外へ奪われないようになっている。淡水魚や両生類もこれに属する。
また、水分の透過性のある皮膚ではそれに溶け込んだ空気を一緒に透過させることも可能である。海中の無脊椎動物などのほか、一部の両生類などでも発達しており、皮膚呼吸と呼ばれる。
熱交換

皮膚は外界と体内との熱エネルギーのやり取りをする場所でもある[1]。特に、恒温動物の皮膚では、一定の体温を維持するために重要な役割を担っている。例えば、体温が上昇しかけると、皮膚を走る血管血液がより多く運ばれるように調節し、体外へより多くの熱を排出するようにし、逆に体温が下がりかけると、血管は縮み、体外へ血液のが奪われるのを抑える。また、汗腺からを分泌し、汗の蒸発時の気化熱を利用して体温を下げる働きもある[13]。ヒトの場合全身にあるエクリン腺から分泌される汗がその役を果たすが、ウマなどはアポクリン腺からの汗で体温調整を行う[13]イヌは汗をあまりかかず体温調整はパンティング(英語版)(浅速呼吸)を主に使い、ゾウはその大きな耳からの放射熱を利用する[13]
刺激の受容

主な刺激感覚には、温度変化や化学物質との接触などがある。熱や酸などの刺激性化学物質との接触などは、真皮の神経線維のうち無髄繊維(C繊維)に因子が接触する事で感知される。この部分は温度・化学刺激以外にも接触も感知する多能性を持つため、ポリモーダル侵害受容繊維と呼ばれる[15]

表皮にも熱や化学刺激を感知する能力がある。ケラチノサイト細胞のイオンチャネルを働かせる受容体の一種TRPVIは、実験から43℃以上の温度、pH6.6以下の酸性トウガラシに含まれる辛味成分カプサイシンへの反応が確認され、逆に遺伝子操作でTRPVI受容体を持たないマウスにこれら因子への反応が見られないことが確認された[23]。この他にも、温度52℃以上で働くTRPV2受容体、32?39℃で働くTRPV3受容体、27?35℃で働くほかにも浸透圧や機械刺激にも反応するTRPV4受容体、25?28℃で働きメントールなどの爽快さを感じ取るTRPV8受容体、17℃未満で働くTRPA1受容体がケラチノサイトでそれぞれ見つかっている[23]

このほか、皮膚が光を感知することは視覚障害者の生理変化や実験から確かめられ、概日リズムの調整に膝の裏に光を当てる治療の効果が報告されている。ただし、このメカニズムははっきり分かっていない[24]
ビタミンDの生合成詳細は「ビタミンD#生合成」を参照

皮膚は紫外線を受けてビタミンD生合成する。の形成に不可欠なビタミンDを得るため、かつて乳児には日光浴をさせるべきと母子手帳などにも書かれていたが、現在は削除されている[19]。これは、通常の生活で生合成に充分な光を受けられる事や、かえって紫外線が与える悪影響が問題になるためである[19]。しかし、日本においてはビタミンD不足によるくる病の増加が指摘されている[25]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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