皮膚
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皮膚紋理は霊長類の手足にあり、クモザルオマキザルのようにを器用に使う種では尾の内側に持つ場合もある[10]。またコアラのような樹木に登る動物の指にも指紋がある[10]ウシの鼻にも皮膚紋理(鼻紋)があり、ヒトの個人識別と同様に個体管理に用いられる[10]

皮膚の老化で生じる(しわ)は、真皮の弾力性が失われて生じる。具体的には弾性の元になる真皮のコラーゲンや弾力繊維またはヒアルロン酸が減少することが原因である。要因は主に加齢と紫外線があり、前者は歳とともに弾性の元になる物質を生む酵素の働きが低下することが影響し、後者は光老化と呼ばれ特に長波長の紫外線が活性酸素を発生させ「マトリックス・メタロ・プロテアーゼ (MMPs)」というコラーゲンや弾性繊維を切断する酵素を生じさせる影響がある[12]。紫外線は表皮にも作用し、短波長がサイトカインという物質を生じさせ、これが真皮でMMPs生成を促す事も皺発生に関わる[12]赤外線も長波長のIR-Aは活性酸素発生を通じてMMPs生成を促し、皺の要因になる[12]
機能

動物の種類によって、皮膚の構造や役割は非常に多様性に富んでいる。様々な動物の持っている皮膚の主な機能を以下に挙げる。
感知

皮膚は触覚感覚器であり、外部からの刺激を伝える役割を持つ[1]。感覚を知る器官としては、表皮の基底部にあり部分的な圧力を検知するメルケル盤(英語版)、真皮の上方にあり正保が包む神経終末で触覚刺激を知るマルスネス小体、真皮下層の小胞内にある神経末端で引っ張りなど皮膚の変形を感知するルフィニ終末、真皮の下層や皮下組織にあり高い感度で最初に接触を感じるパチニ小体がある[15]

また、ケラチノサイト細胞膜には刺激を受けるとATPと結びついてイオンチャネルを働かせて内部にカルシウムやナトリウムイオンを透過させ、電気信号を発生させる物質がある。内臓の上皮細胞に見られるこれら物質のうち、P2X3という受容体は表皮細胞でも作られ、接触感知に関与する。[16]

高等動物の皮膚には、感覚性の神経終末が達しており、皮膚感覚と呼ばれる感覚を得る感覚器としても働いている。真皮の神経線維のうち有髄繊維のAδ繊維が、刃物で切られた際などの痛覚を感じ取り、侵害受容器と呼ばれる。絶縁体の鞘構造を持つAδ繊維が傷つくと電気信号が発し、神経を非常に早い速度で伝わり痛覚と認識される[15]。動物の種類や部位によってこれらの感覚の発達の程度は異なる。

また皮膚は免疫機能へも関与する。例えば白血球などで合成される免疫機能の情報伝達を司るタンパク質のサイトカインは、紫外線の照射や角膜剥離によってケラチノサイトでも合成・分泌される[17]。また表皮中にはランゲルハンス細胞という樹状細胞が散在し、細菌など異物が皮膚内に侵入すると感知し、免疫系へ情報を伝達する[18]。そのほか、ケラチノサイトは神経伝達物質カテコールアミン類やβ-エンドルフィンなども合成・分解する。これらが持つ役割ははっきりしないが、皮膚内での情報伝達を担うという考えもある[19]
境界の形成と保護

ほぼすべての動物の皮膚で共通なのは、体を包み、体の形を維持していることである。細胞が敷石状に並んでお互いがしっかりとつながりあったり、細胞外マトリックスや体表への分泌物などの働きで、体の内側の構造が外に飛び出さないような境界をつくっている。さらに、より厚く発達した皮膚を持つ動物では、皮膚が体を保護し、陸上生物では乾燥から守るという役割を果たす[1]。体の外側から皮膚に力が加わっても皮膚でそれを跳ね返したりできる。また、皮膚だけでなく、それに付随する構造がこの機能に大きく役立っている場合もある。頭髪や体毛などの鳥類羽毛爬虫類魚類節足動物の外骨格などは皮膚の一部が変化してできたものであり、さらに皮膚に強度を加えている。

境界形成と保護を主に担う部分が表皮の角質である[8]。しかしこの角質はセロテープを皮膚に貼って剥がせば簡単に剥離するが、すぐ下のケラチノサイトが脂質を放出して再生が加速され、1日で80%程度が回復する[20]。また、繰り返し圧迫されるとたこのように局所的に厚くなることが知られる[20]。空気が乾燥した状態に1週間程度置かれると、表皮は角質の厚みを増す事も実験で確かめられている[20]。その一方で、角質を剥離させた箇所にプラスチックフィルムなど水を通さない障害物を貼ると修復は行われないが、ゴアテックスでは貼っても角質は修復される[20]。このように皮膚は環境に対応するが、これは神経系循環器系から独立した自己適応能力と、保護機能が働く状態をモニターする能力を、どちらも自立的に備えていることを示す[20]

これらの自己修復能力は、皮膚の表面電荷が影響するという説がある。によって電気抵抗値が変化することは古くから知られ、その原理は嘘発見器に応用された。しかし近年、など汗腺がない箇所や無毛マウスでもマイナスの電位差があることが明らかになった[21]。この電荷は、アジ化ナトリウムでケラチノサイトの呼吸を止めたり、イオンチャネルを止める薬剤に浸漬すると即座になくなる[21]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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