百科事典
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サイクロペディアにおいては各項目間の相互参照が初めて導入されており、のちの百科事典に大きな影響を与えた[15]。また、サイクロペディアはそれまでの事典が人文系に片寄っていたのに対し、科学や技術系の記述を大幅に増やしたのも特徴である。

しかし、一般に世界最初の百科事典と呼ばれているのは、フランス革命前夜の1751年に開始された、フランス啓蒙思想運動の一環としてダランベールディドロヴォルテールルソーらが企画した分冊の『百科全書』(L'Encyclopedie)である。彼らは予約購読者を募り、分冊販売としてそれを刊行した(販売形態は今日よく見られる「月刊○○百科」のようにあるテーマで定期刊行される分冊百科を思わせる)。この企てにより彼らは「百科全書派」と呼ばれている。ただし、それぞれの項目の執筆姿勢などで意見の食い違いが生じ、内紛から離脱者が絶えなかった。

この百科全書の特徴は、「」、「」、「音楽」といった大項目の他に、近代に登場した新しい技術を断面図などを含む絵入りの図解で分かりやすく解説、新知識を広く一般の共有財産にしようとしたことにある[16]。良く知られる項目では、「農機具」、「石炭の露天掘り」、「洗濯船」、「廻り舞台」などがある。これ以後、百科事典という語は知の一切を叙述する企ての異称としても用いられる。代表的な例としてヘーゲルの『エンチクロペディー』(ドイツ語で「百科事典」の意)が挙げられる。また、それまでの百科事典が編集者個人の著作、あるいはその傾向が濃いものであったのに対し、百科全書は名高い一流の学者たちがそれぞれ専門分野において寄稿を行い、それを集積して一つの巨大な事典を作るという方向性を明確に示し[17]、以後百科事典はこのスタイルによって作成されていくようになった。
百科事典の発展

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百科全書の刊行後、これに刺激を受けて各国で百科事典が刊行されるようになった。1768年にはスコットランドエディンバラにおいて「ブリタニカ百科事典」の刊行が開始され[14]1796年にはドイツライプツィヒブロックハウス百科事典が刊行を開始した。1829年にはフィラデルフィアアメリカ大百科事典の刊行が始まるなど、19世紀中はアメリカ、イギリス、フランス、オランダ、ドイツなどで百科事典の刊行が行われるようになった。こうした百科事典の編纂はしばしば強力な個性を持つ編纂者によって推進された。たとえばフランスにおいては、ピエール・ラルース1863年から1876年にかけて「19世紀大百科事典」を刊行したが、これはほぼ自らの一生をかけたものであり、ラルース自身は刊行が完了する前の1875年に死亡した[18]。この19世紀百科事典は彼の名を取ってラルースと呼ばれるようになり、以後もこのラルース百科事典は大規模な百科事典の一つとして長く存続している。

20世紀に入るとさらにそれまで百科事典の刊行されていなかったスペインや日本、イタリアなどの新興国や中小国でもさかんに百科事典の刊行が開始されるようになった。この時期に各国で競って百科事典が刊行されたのは、知の集大成たる百科事典を自国で刊行することによって国威を発揚するといった、国家間の競争の意味合いが存在した[19]
近代以後の日本の百科事典平凡社 世界大百科事典

近代の日本では、明治の文明開化の時期に西周によって『百学連環』という日本初の百科事典が作られた。他に小中村清矩らの尽力で成立した『古事類苑』がある。1879年、当時の文部省により編纂が開始され、後には神宮司庁が引き継いで1914年に完成された。各時代の事物についての古文献を集成したため、資料的価値が高い。

しかし、西洋式の近代的な百科事典としては、明治末に三省堂から刊行が開始された『日本百科大辞典』(全10巻、齋藤精輔の編纂で1907年刊行開始、1919年完結)が最も早いものである[20]。ついで昭和初期からは平凡社の『大百科事典』(1955年に『世界大百科事典』へ改題)(全28巻、1931年刊行開始、1934年完結)などが発刊された。新たに「辞典」ではなく「事典」という語を作り出して書名に使用したのは、この平凡社のものが最初で、以後「百科事典」という漢字表記が一般化する。

さらに昭和期の高度経済成長を経ると1960年代頃には各家庭に分冊の百科事典が置かれているのは珍しい風景ではなくなり、大衆化を果たした。平凡社からは、1961年に『国民百科事典』[21](全7巻)、学習研究社からは、1965年に『現代新百科事典』(全6巻)[22]、小学館からは、1962年に『日本百科大事典』[23](13巻、別冊)、続いて1965年に『世界原色百科事典』[24](全8巻)、さらに1967年には『大日本百科事典ジャポニカ』(18巻、別巻4)が発行された。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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