白蛇伝_(1958年の映画)
[Wikipedia|▼Menu]
この企画のために集められたスタッフには、赤川次郎の実父である教育映画部の赤川孝一、キャラクター原案と美術を担当する岡部一彦(漫画家岡部冬彦の実兄[6])、NHK技研出身で美術担当の橋本潔、演出担当の藪下泰司などがいる。

とはいえこの当時の日本には、アニメを制作する会社は影絵動画を含めてもごく少なく、そのいずれもが僅かの社員を抱えるのみの小会社だった。例えば業界最大手だった日動映画ですら、社員20数名の社屋のない会社であり、高校の空き教室を間借りしアニメ製作をしているような状態だった。

また、それまでに作られた最大規模のアニメ映画は大戦中の国策映画『桃太郎 海の神兵』(1945年松竹動画研究所、白黒)で、上映時間は74分だった。アニメーションの専門家と言える人材がいない状況で、2時間規模のカラーアニメをつくろうとするこの試みは、当時の常識から考えて極めて無謀とも言えた。

東映は、動画会社の吸収、短編動画の制作、動画スタジオの建設、スタッフ養成など、数年がかりでアニメーション制作の体勢を整えつつ、その集大成として長編アニメ『白蛇伝』を完成させるという大がかりな計画を立てた。1957年昭和32年)6月末、『白蛇伝』の制作が正式に記者発表された。
東映動画の誕生と動画スタジオの建設

1956年昭和31年)、東映は手始めとして、負債を抱えていた日動映画株式会社[注 2]を社員ごと買収し、東映動画株式会社へと商号変更させた。この東映動画に『白蛇伝』のために集めたスタッフを送り込み、『白蛇伝』へ向けた慣らしの意味も込め、短編アニメ『こねこのらくがき』の制作を開始させた。

建設中の動画スタジオのために、スタッフの養成も始まった。日動映画を吸収することで、東映はベテランのアニメーター達を手に入れた。その中には、山本早苗(後、戸田早苗)、大工原章、森康二などがいる。しかし長編『白蛇伝』のような大がかりなアニメを制作・量産していくためには、圧倒的に人数が足りない。そこで美術大学などにアニメーターとなる人材を求め採用した。この東映動画一期生達は、日動映画のベテラン達に指導を受け、日本アニメの基礎を担う人材へと育っていく。この時に入社した新人には、後に『ルパン三世』や『未来少年コナン』の作画監督を務めた大塚康生や、『銀河鉄道の夜』を手掛けたアニメーション監督の杉井ギサブローなどがいる。杉井によれば、入社当時の世相は絵描きが仕事になる時代ではなく、芸大出の卒業生や普通の画家などが食い扶持を稼ぐために入社試験を受けに来ており、漫画が上手い人はほとんどいなかったと証言している[7]

1957年昭和32年)には東映東京撮影所東大泉)の敷地内に動画スタジオが完成。東映動画は日動時代の新宿区原町から同スタジオに移転した。やがて大泉周辺には、大小のアニメスタジオが集まるようになっていく。
フィルムボードとライブアクションの試み.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

この節の加筆が望まれています。

大工原章と森康二が原画を担当し、新人の動画担当アニメーター42名が参加して、約7カ月の作画期間と4,047万1,000円の製作費、1万6,474枚の原画、6万5,213枚の動画が費やされた[3]。当時はアニメーション制作の経験者が少なく、順次募集されたスタッフにノウハウを教育しながら制作を進めたという[3]

キャラクターデザインの段階から人形を作って作画の参考にした他、ディズニーの長編作品でも既に採用されていた「ライブアクション」を日本で初めて採用し、俳優の動きを撮影したフィルムを紙に写し人物の動作を描くライブアクションには、当時の東映ニューフェイスだった水木襄佐久間良子らが参加した[3]
公開

予告編」では大川博が自ら出演、また当時の東映動画スタジオと、製作風景も映し出されていた[注 3]。この予告編は後述のDVDに収録されている。

1958年当時、東映は既にオープニングに「荒磯に波」を使用していたが、本作では「荒磯に波」を使用せず、「2つの円状の放射線と東映マーク」という独自のオープニングを使用した[注 4]

本作品では、中国にしか生息しないジャイアントパンダレッサーパンダが紹介された。公開当時、日本では未だジャイアントパンダがいなかった[注 5]
公開後

この節の加筆が望まれています。

宮ア駿は主人公の許仙を演じた森繁の演技に深く感銘を受け、1997年公開の自作『もののけ姫』の制作に際して自ら森繁の元に足を運んで依頼し、乙事主役として出演させた。この経緯は『「もののけ姫」はこうして生まれた』内の映像でも確認できる。

2001年放送の東映特撮番組仮面ライダーアギトの第39話ではアギトの力を失った真島浩二が木野薫を呼び出した映画館内でこの映画の一部シーンが放映されている。

2016年YouTubeに開設された「東映アニメーション創立60周年公式チャンネル」(現:東映アニメーションミュージアムチャンネル)で、本作が2017年7月末まで無料配信された[8][9]

2017年、日本動画協会が旗振り役となっている「アニメNEXT_100」プロジェクトが、日本でアニメが初めて制作されたとされる1917年から100周年となる同年、本作の公開初日(10月22日)を「アニメの日」と制定、日本記念日協会に登録した[10]。この日が選ばれたのは、本作の制作にあたって掲げられた志が、日本のアニメ史において重要なマイルストーンとするに相応しいものと関係各位が認識を同じくしたことによる[11]

草創期の日本のアニメーション界を描いた2019年度前期放送のNHK連続テレビ小説なつぞら』では、仕上課員として東洋動画(東映アニメーションがモデル)に入社したヒロイン・なつが、最初に仕上としてアニメーションに関わる劇中アニメ『白蛇姫』のモデルとして用いられた[12][13][14]

2023年、YouTubeの「東映シアターオンライン」で、前年の2022年12月から始まった「東映オンデマンド」サービス開始を記念した企画の一環として、本作が同年1月12日21:00(JST)から同年1月19日23:59(JST)まで無料配信が行われた(2022年12月からは「予告編」も配信)。同チャンネルでのアニメ映画配信は2022年12月に配信された『サイボーグ009』(第1作)に続く。
受賞ほか
海外

第9回ベルリン市民文化賞

第11回ベネチア国際児童映画祭特別賞
[4]

メキシコ名誉大賞

国内

文部省選定

第9回ブルーリボン特別賞[4]

第12回毎日映画コンクール特別賞[4]

第13回文部省芸術祭奨励賞[4]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:133 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef