白熱電球
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1925年につや消しによる強度劣化を防止する方法を考案し、内面つや消し電球が完成した[13][6]。後年の1974年松下電器(現・パナソニックホールディングス)がシリカを内部処理に用いた「シリカ電球」を開発しまぶしさがさらに軽減された[14]

1950年通商産業省が白熱電球を産業標準化法に基づき「標準化指定商品」に決定。22の工場に新型標準電球の製造許可を出した。新型の標準電球は、以前の電球より同じワット数でも3%?8%明るくなる一方、寿命は多少短くなった。1951年よりJISマークが入った新電球の販売が開始された[15]。また、1950年には松下電器(現・パナソニックホールディングス)がフィラメントを二重コイル化(寿命の項を参照)した電球を発売。広告にて「二割明るい お徳用」とアピールを行った[16]

大出力電球や映写用ランプ等では電球にガスを入れたものでも電球の黒化が生じて問題であった。その対策として1959年、ゼネラル・エレクトリックのツブラーとモスビーが石英ガラス管の内部に不活性ガスヨウ素を封入することで電球の黒化を抑制するハロゲン電球を開発した[17][6]

1993年に中村修二により青色LEDが開発されたことにより白色LEDも可能になったが、最初の頃はかなり高価で白熱灯は使われ続けた。やがて多数のメーカーが白色LED製造に参入するようになり、2010年代には白色LEDの低価格化が進み、白色LEDの省エネ効果による電気料金の削減額が購入価格に見合う水準にまでなった段階で各国政府がLEDバルブへの置き換え政策を採用するようになって置き換えが進み、白熱電灯の製造・販売は急激に減少した。
白熱電球の種類・分類
用途による分類

一般形電球


耐震電球

封入ガスによる分類

ハロゲン電球

クリプトン電球

構造による分類

クリア電球

シリカ電球
- クリア電球のバルブ内面にシリカ塗装を施した電球。カバーのない器具で直視しても眩しさが低減するが、シリカ塗装による吸収がある分、同じ消費電力のクリア電球よりも全光束がわずかに減少する。寿命や消費電力は、クリア電球と変わらない。なお、シリカ電球の開発前に内面をつや消ししたものは「ソフト電球」と呼ばれていた[14]

口金の分類

口金の形状には多数の種類があり、電球の用途に応じ選択されている。口金は国際規格に整合されたものが多く、日本のJIS規格ではJIS C 7709において規定されている)。

一般照明用白熱電球では、ネジ式のE型口金(エジソンベース、Edison screw)が用いられている。自動車用など耐震性を要求される用途ではS、すなわちスワンベース(引っ掛け式)を用いる。英国では普通の電球にもスワンベースの電球を用いる場合がある。

E39 - 200W以上の大型の電球用である。

E26 - 一般の電球ソケット、特殊用途以外は200Wまでである(IEC 60061-1(7004-21A-2))

E17 - 小型の電球ソケット、クリプトン電球に多い(IEC 60061-1(7004-26))

E12 - 常夜灯や表示灯などに使われるソケット。

E11 - ハロゲン電球に用いられる。

E10 - 豆電球用。懐中電灯や表示灯に用いられる。
白熱電球のガラス球部分の形状の種類
ガラス管球の形状による分類

使用されるガラス管球の形状でも分類されている。右の図を参照のこと。
明るさの表示

白熱電球の明るさはかつてはカンデラ(cd)にほぼ等しい)を単位とする光度で表されていたが、現在はワット(W)を単位とする消費電力で、明るさの型式を表現されている[注 2]。ただし、明るさをWで表示するのは白熱電球だけであり、他の光源である電球形蛍光灯とLED電球は、全光束(単位:ルーメン[lm])表示する事と業界団体の規定で定められている[注 3]

かつて白熱電球が一般的に販売されていた時代には、40W・60W・100Wの3種類が一般的であった。この他メーカーにより、また稀に10W・30W・50W・80Wなどの種類も販売されていたが、20W刻みで連続数字だと40W・60W・80W・100Wとなるべきところ、80Wの電球の販売が稀であったのは、実際の明るさ的には80Wと100Wは差がなく、100Wの方がいくらか明るく感じるので80Wよりも100Wが出回るようになったためだという[18]
寿命

現在、市販されている白熱電球の多くは1000時間程度の寿命を持つ。ただ使用環境によっては電圧の高い(日本では許容最大値である110Vがかかる)場合もあり、この場合は100V用電球では寿命が短くなる。そのため、特に記載はないが、110Vの電圧を想定した電球も販売されている[注 4]。電圧が定格より下がると、効率が低下する一方で寿命は向上する(照度参照)。

高温(2200 - 2700°C)となるフィラメントではその構成する素材(今日ではほとんどがタングステンとなっている)が点灯時間の累積と共に徐々に蒸発し、細くなることで素材強度がなくなり、最後に折損(俗に言う「.mw-parser-output ruby.large{font-size:250%}.mw-parser-output ruby.large>rt,.mw-parser-output ruby.large>rtc{font-size:.3em}.mw-parser-output ruby>rt,.mw-parser-output ruby>rtc{font-feature-settings:"ruby"1}.mw-parser-output ruby.yomigana>rt{font-feature-settings:"ruby"0}球(たま)切れ」)することで寿命となる[注 5]。また昇華したタングステンがガラス球内に付着し、可視放射効率低下の原因ともなる。フィラメントを真空中に置いた真空電球ではこの昇華が大きい。

ガラス球内を不活性ガスで満たすことで昇華を抑えることが出来るが、ガス中への熱伝導による損失が大きくなる。今日用いられる白熱電球のほとんどがこのガス入り白熱電球と呼ばれるタイプのもので封入する不活性ガスとしては通常、希ガスが用いられるがその分子量が大きいもの程熱伝導による損失が少なくなるため窒素アルゴン以外に高価なクリプトンあるいはキセノンを用いたものもある。

封入ガスにハロゲンヨウ素臭素塩素あるいはその化合物)を微量混合し、ガラス球部が高温になるように設計することで、昇華したタングステンをフィラメントへと還元するようにしたものもある(ハロゲンランプ)。

フィラメントの温度を高く設定すると放射光中の可視光成分が多くなり、発光効率が上昇するが、その分フィラメントの蒸散も大きくなり、電球の寿命が短くなる。ハロゲンランプの場合、フィラメントの温度が同じならば通常のガス入り白熱電球の数倍の寿命となるが、その温度を高く設定し、寿命は同じだが効率が高い電球とすることもできる。

フィラメントの温度を低く設定し、長寿命化した製品も存在する。例えばキセノンランプの中には、効率が低く光色も赤色味が強くなる代わりに10000時間前後の寿命を持つものがあり、電球交換の頻度を減らす必要がある、交換が困難な場所(高所など)で用いられている。交流点灯の場合、ダイオードによりフィラメントに流れる電流を半減させ効率と引き換えに寿命を延ばすという手法もある。

他に寿命を伸ばす手法としては、制御回路により、フィラメントが切れることが多い電源投入時に流れるラッシュカレント(電源投入の瞬間からフィラメントの温度が安定するまでの間、規格の8倍程度の電流が流れてしまう現象。消灯時の冷えたフィラメントの抵抗値は点灯中の高温時に比べ低いために発生する。突入電流とも言う)を軽減し、電源投入時のストレスを減らすというものがある。

フィラメントは、通常単コイルまたは二重コイル(小径のコイルを巻き、そのコイル線で大径のコイルを巻く)となっている。これはフィラメントの封入ガスとの接触面積を減らすことで、熱伝導を抑え発光効率を改善するとともにその寿命を延長するのに有効である。

戦間期には、大手白熱電球メーカーがポイボス・カルテルを結成し、白熱電球の寿命を1000時間に制限していた。第二次大戦後にはカルテルは消滅しているが、1000時間の寿命はその後も引き継がれた形となっている。
発光ダイオード(LED)照明への移行

家庭向けには、主にLED電球への移行が推奨されている。電球型蛍光灯への置き換えも行われたが、LEDより寿命が短いなどの点があるため、あまり使われなくなっている。
使用中止に向けた法令等

地球温暖化防止・環境保護として、白熱電球の生産・販売を一切終了し電球形蛍光灯やLED電球への切替を消費者やメーカーに促す動きが世界的に広がっている。オーストラリアフランスやアメリカ(州による)などは白熱電球の生産・販売が今後法律で禁止される。

日本では、2008年4月、2012年末までに生産と販売を自主的にやめるよう電機メーカーなどに要請する方針を甘利明経済産業大臣(当時)が表明した[20]。これに応える形で東芝ライテックは同年4月14日2010年度を目途に白熱電球の生産を原則中止すると発表し[21]、2010年3月17日に国内大手電機メーカーで初めて白熱電球生産事業より撤退(交換用途は除く)。続いて三菱電機照明も(当初の2012年より1年前倒しし)2011年3月限りで生産を終了(一部製品を除く)、NECライティング(現:ホタルクス)・パナソニック ライティングデバイスも2012年内に生産を終了した。


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