白夫人の妖恋
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美術監督には、武蔵野美術大学教授の三林亮太郎が起用され[出典 6]、単なる宋代の再現ではなく、現代的な中国美術の人工美を取り入れることを本作品の狙いとした[9]

カラー撮影の技術を習得するため、特撮班は撮影前に1ヶ月東洋現像所へ通い、研修を行った[17]。当時のカラーフィルムは感度が低く、忠実な色の再現にはライトの調整を必要としており、セット内はライトの熱で蒸し風呂のような熱さであった[18][10][注釈 3]。また、緑のものは青く映ってしまうため、緑の色調を落とさねばならず[出典 7]、美術助手の井上泰幸は、植物の造形も撮影前に多くテストを行ったと証言している[出典 8]

ブルーバック背景の色の配合から試行錯誤が繰り返され、合成作業もすべて手作業であった[14][10]。合成を手掛けた向山宏は、カラーになったためオプチカル・プリンターの光量も大きくなり、電球が熱くなるためファンで風を当てながら作業を行っていたが、それでも電球が膨らんでいたと証言している[14]。また、クライマックスでの昇天シーンでは、ワンカットを完成させるのに12時間ほどかかったという[14]

その他の特撮描写では、暴風雨・竜巻・津波などの水の表現が特徴であり、本作品のテーマである「女の情念」を具現化しているとされる[4]。金山寺の屋根は実物大セットが制作され、洪水を受ける寺は泥で作られた[4]。寺のセットの設計は、本編・特撮ともに特撮班に参加していた宮大工が手掛けた[9][19]。竜巻の描写には、7台のタービンポンプとドラム缶20本分の水が用いられた[14]。洪水シーンの撮影の間、機材は1ヶ月水浸しであったという[14][4]

昇天シーンの撮影では、池部と山口を吊り上げているが、特撮班カメラマンの富岡素敬によれば吊りが初めてであった山口が恐怖で騒いでいたことが忘れられないという[12]。造形助手の開米栄三は、同シーンでは木下サーカスから借用した空中ブランコ用の網を張っていたと証言している[21]

蛇の造形物は、美術助手の開米栄三が眠らせた本物の蛇から型取りし制作した[22]。開米によれば、型取りの石膏は硬化時に熱を持つため蛇の油が染み込んでしまい、臭いがすごかったという[22]
映像ソフト

LD 品番 TLL2426[11]

DVDは、2015年7月15日に東宝DVD名作セレクションとして発売された。

サウンドトラック
白夫人の妖恋 オリジナル・サウンドトラック(2019年12月18日/CINEMA-KAN/CINK-93)
2枚組CD。2枚目は未使用音源や、雨や扉の音などのSEなどが収録されている。また、
團伊玖磨の『宮本武蔵』『孫悟空』『ゲンと不動明王』の音楽もボーナストラックとして収録されている。
影響

日本発の初のカラー長編アニメ白蛇伝』が作られるきっかけとなった映画は、本作品とされる。中国の説話『白蛇伝』を題材にしていた本作品は香港で興行的に大成功を収めた。これを受け、『白夫人の妖恋』をアニメ化する企画が、香港の映画界から東映に持ち込まれた[23]

これがきっかけとなり、東映社長(当時)・大川博は、香港の下請けとしてでなく、独自の本格的なアニメ映画をつくることを考え始めた。当時大きな興行収益を上げるアニメはディズニー映画のみだったが、日本においてアニメ映画製作の体勢を整えていけば、将来大きな産業になるのではないかという、鉄道省の役人から東急の専務、そして東映の社長へと叩き上げてきた大川の、経営者としての予測もあった。
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 資料によっては、「6月22日」と記述している[4][7][8]
^ 特撮班カメラマンの富岡素敬は、アグファカラーであったと証言している[12]
^ 有川貞昌は、モノクロの約8倍の光量が必要であったといい、セットのプールをステージいっぱいに作ったためライトの置き場も少なかったと証言している[17]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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