2020年1月に発表された研究結果によれば、この大量絶滅の気候モデリングの結果からは、絶滅の原因として小惑星の衝突が支持される一方、それまで天体衝突説に対抗されて唱えられていた火山活動は原因として支持されなかったという[16][17][18]。
このほかにも、大量絶滅の原因として、デカン・トラップに代表される火山活動[19][20]や、気候変動、海面変動などが寄与した可能性がある。
K-Pgの大量絶滅によって、多くの生物が絶滅した。この時に絶滅した生物としては非鳥類型恐竜が最もよく知られており、陸上では哺乳類や鳥類[21]、爬虫類[22]、昆虫[23][24]、植物[25]でも多くの生物が絶滅した。また海中においては、首長竜やモササウルス類が完全に絶滅し、サメやエイが属する軟骨魚類、現生魚類の多くが属する真骨魚類[26]、軟体動物(特にアンモナイトが完全に絶滅)、多くのプランクトンも大きな打撃を受けた。総じて、地球上の生物の75%以上の種が絶滅したと[27]されている。
一方でこの絶滅は、生き残った生物にとっては進化の機会となった。多くの分類群で顕著な適応放散が見られ、打撃を受けた生態的地位の中では多様な種が急速に形成された。特に哺乳類は古第三紀に多様化し[28]、この時代にはウマ類や鯨類、コウモリ、そして霊長類といった新しい形態が誕生している。恐竜のうち生き残ったグループは鳥類のみで、短期間で爆発的に進化し、現在の多様性が生まれた[29]。他には真骨魚類や[30]トカゲにも[22]適応放散が確認されている。 K-Pgの大量絶滅では、膨大な数の種が全地球で急速に失われた。海洋生物の化石からは、当時の全生物種のうち75%以上が絶滅したと推定されている[27]。 この絶滅はすべての大陸で一斉に起きたと考えられている。恐竜を例に挙げると、白亜紀末のマーストリヒト期からは北アメリカ、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、南極大陸のすべてで見つかっているが[31]、新生代以降は世界のどこからも見つかっていない。また、花粉化石から示されるように、アメリカのニューメキシコ州、アラスカ、中国、ニュージーランドなどにわたって植生が壊滅した[25]。 総じて被害は甚大であったにもかかわらず、絶滅した種の割合は分類群によって大きな違いが見られた。光合成への依存が大きかった種は、大気中にばらまかれた微粒子が太陽光を遮り、地上に到達する太陽エネルギーが減少したことで衰退・絶滅した。こうして多くの植物が絶滅し、優占する植物種のいわば“再編成”が起きた[32]。餌を利用しやすくなったためか、雑食動物や昆虫食・腐肉食動物は生き延びることができた。哺乳類のうち、純粋な草食動物や肉食動物にあたる種はすべて絶滅した。生き残った哺乳類や鳥類は、デトリタス食の昆虫やミミズ、カタツムリなどを捕食していた[33][34][35]。 河川の生物群集では、生きた植物への依存度がより低く、逆に陸地から流れてくるデトリタスへの依存が大きいため、絶滅した動物は少なかった[36]。より複雑だが、同様の事例が海中にも見られた。海底にすむ動物が栄養源としてデトリタス(マリンスノー)を利用しているのに対し、その上層の動物は植物プランクトンの一次生産にほとんど依存している[33]。このため、深海底に住む生物に比べ、その上層を泳ぐ生物のほうが多く絶滅したのである。 円石藻と呼ばれる植物プランクトンや軟体動物(アンモナイト、淡水生腹足類、厚歯二枚貝、その他の二枚貝を含む)は、食物連鎖上で関係する他の生物と共に、絶滅するか個体数が激減した。例えば、巨大な海生爬虫類であるモササウルスの餌は主にアンモナイトであったため、アンモナイトが絶滅すると共にモササウルスも絶滅した[37]。一方でワニ類やチャンプソサウルスは半水生であり、デトリタスを利用することもできたため、K-Pg境界を生き延びることができた。現生のワニも腐肉食が可能で、数か月間にわたって餌なしで生き延びることができる。さらに、幼体はサイズが小さい上に成長が遅く、初めの数年間は無脊椎動物や死んだ生物を食べる。こういった特徴が、白亜紀末を生き延びたことと関連があると考えられている[34]。 この大量絶滅によって数多くの生態的地位が空白となったにもかかわらず、それらが利用されて生物多様性が回復するまでには長い期間を要した[33]。
生物種ごとの絶滅のパターン