文化庁長官は、登録無形民俗文化財の保存のため必要があると認めるときは、記録の作成や保存のため適当な措置をとることができ、地方公共団体や保存に当たることが適当と認められる者(保存地方公共団体等)に対し、経費の一部を補助することができる[16]。保存地方公共団体等は、文部科学省令で定めるところにより、登録無形民俗文化財の保存及び活用に関する計画(登録無形民俗文化財保存活用計画)を作成し、文化庁長官の認定を申請することができる[17]。文化庁長官は、登録無形民俗文化財の記録の所有者や、保存地方公共団体等に対して、必要な指導又は助言をすることができる[18]。 2021年(令和3年)6月14日に文部科学大臣によって告示された「登録無形民俗文化財登録基準」では、登録の基準を、保存及び活用の措置が特に必要な風俗慣習、民俗芸能又は民俗技術のうち、下記のいずれかに該当するものとしている[14]。ただし前述のとおり、重要無形民俗文化財として国または地方公共団体が指定していないものに限られる。 登録無形民俗文化財の文化財登録原簿には、次に掲げる事項が記載される[19]。 国に登録されていない無形民俗文化財であっても、地方公共団体が条例や規則に基づいて登録をしている場合は、これを都道府県あるいは市区町村登録無形民俗文化財と称する場合がある[20]。具体的な登録の仕組みは各地方公共団体によって異なるが、地方登録制度自体は文化財保護法に規定があり、第百八十二条第二項に「(前略)当該地方公共団体の文化財に関する登録簿に登録して、その保存及び活用のため必要な措置を講ずることができる」と定められている。また、都道府県又は市町村の教育委員会は、登録簿に登録した文化財のうち適当なものについて、国の文化財登録原簿に登録するよう文部科学大臣に対して提案することができる[21]。この提案を行うときは、都道府県又は市町村の教育委員会は、あらかじめ当該地方公共団体の文化財保護審議会の意見を聴かなければならない[22]。 登録無形民俗文化財の第一号として、「讃岐の醤油醸造技術」と「土佐節の製造技術」の2件が2021年(令和3年)9月30日に登録された[12]。2023年(令和5年)3月22日に、「能登のいしる・いしり製造技術」と「近江のなれずし製造技術」の2件が[23]、2024年(令和6年)3月21日に、「庄内の笹巻製造技術」と「薩南諸島の黒糖製造技術」の2件が登録され[24]、合計6件となっている。香川県小豆島のマルキン醤油記念館.mw-parser-output .locmap .od{position:absolute}.mw-parser-output .locmap .id{position:absolute;line-height:0}.mw-parser-output .locmap .l0{font-size:0;position:absolute}.mw-parser-output .locmap .pv{line-height:110%;position:absolute;text-align:center}.mw-parser-output .locmap .pl{line-height:110%;position:absolute;top:-0.75em;text-align:right}.mw-parser-output .locmap .pr{line-height:110%;position:absolute;top:-0.75em;text-align:left}.mw-parser-output .locmap .pv>div{display:inline;padding:1px}.mw-parser-output .locmap .pl>div{display:inline;padding:1px;float:right}.mw-parser-output .locmap .pr>div{display:inline;padding:1px;float:left}讃岐の醤油醸造技術土佐節の製造技術能登のいしる・いしり製造技術近江のなれずし製造技術庄内の笹巻製造技術薩南諸島の黒糖製造技術 登録無形民俗文化財 登録名登録年月日所在地公開期日保存団体文化財の特色
登録の基準
基盤的な生活文化の特色を有するもの
発生若しくは成立又は変遷の過程を示すもの
地域的特色を示すもの
時代の特徴をよく伝えているもの
登録事項
登録無形民俗文化財の名称
登録年月日及び登録番号
登録無形民俗文化財の内容を示す事項
登録無形民俗文化財に係る法第九十条の七第一項に規定する保存地方公共団体等がある場合は、その名称及び事務所の所在地
その他参考となるべき事項
地方公共団体による登録等
登録無形民俗文化財の一覧
さぬきのしょうゆじょうぞうぎじゅつ讃岐の醤油醸造技術2021年9月30日香川県通年特に定めず[25]醤油醸造の機械化や工場での大規模生産が進み伝統的な醸造技術が失われつつある中、「むしろ麹」と呼ばれる醤油麹の製法が伝承され天然醸造を続ける蔵元が多くみられる[26]。
とさぶしのせいぞうぎじゅつ土佐節の製造技術2021年9月30日高知県通年特に定めず鰹節製造の改良が行われ、その製造技術は各地の鰹節づくりに大きな影響を与えた。なかでも「カビ付け」と呼ばれる保存の技術が、鰹節の製造技術向上と全国的流通につながった[27]。
のとのいしる・いしりせいぞうぎじゅつ能登のいしる・いしり製造技術2023年3月22日石川県-特に定めず能登地方に継承されてきた、イワシ、サバ、イカの内臓などの海産物を使用した発酵調味料である魚醤の製造技術。日本における発酵調味料の製造技術の変遷やその地域的特色を理解するうえで注目される[28]。
おうみのなれずしせいぞうぎじゅつ近江のなれずし製造技術2023年3月22日滋賀県-特に定めず琵琶湖とその周辺の河川から獲れるニゴロブナなどの淡水魚を発酵させてつくる「なれずし」の製造技術。日本における「寿司」の調製技術や発酵食品の変遷を理解するうえで注目される[28]。
しょうないのささまきせいぞうぎじゅつ庄内の笹巻製造技術2024年3月21日山形県5月?6月特定せず山形県の庄内地方で伝承されてきた笹巻はちまきの一種。ちまきは多くは米をついた米粉を蒸して製造されるが、庄内地方の笹巻は米を粒のまま煮て製造され、また保存性を高めるため灰汁を加える製法もみられ、さらに笹で巻いた形状も多様である。端午の節句の行事食であるちまきの製造技術とその地域差をみるうえで注目される[29]。
さつなんしょとうのこくとうせいぞうぎじゅつ薩南諸島の黒糖製造技術2024年3月21日鹿児島県11月?3月特定せず日本における黒糖製造については、近代以降、機械化、大規模化されたなか、鹿児島県の薩南諸島では、現在でも昔ながらの手作業による共同作業で製造されている。その工程で熟練の技術伝承がみられ、地域的な特色が顕著であり、日本における精糖技術の変遷みるうえで注目される[29]。
出典^ a b 文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)第二条 e-gov.go.jp
^ a b 文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)第九十条の五
^ a b c d 文化庁「文化財保護法の一部を改正する法律の概要」令和3年7月16日「文化審議会答申(登録無形民俗文化財の登録)について」報道発表資料 p.4 [1]
^ 文化審議会文化財分科会企画調査会「企画調査会報告書?無形文化財及び無形の民俗文化財の登録制度の創設に向けて?」令和3年1月15日 p.1 [2]
^ a b c d e 文化庁「無形の文化財の登録制度の創設に向けて」令和3年2月3日 [3]