登記
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これは、登記を信頼して取引に入った第三者を保護するとともに、このような不利益を受けないために権利者が登記を具備するよう促すことによって、実際の権利関係と登記が一致する状態を維持するためである。これによって、登記を信頼して取引関係に入ることが可能になり、取引の安全が担保されるのである。

ただし、以上とは逆に、実際には無権利者であるのに、権利者であるかのような登記がされていたとしても、これを信頼して無権利者から買い受けた者は保護されない(不動産登記には公信力がない)。もっとも、真の権利者が虚偽の登記の作出に自ら関与していたり、虚偽の登記を知りながら放置していたりして、真の権利者に帰責性がある場合には、民法94条2項(虚偽表示)を類推適用し、登記名義人から善意で取得した第三者は、権利を取得するとする判例がある[5]。これは、一定の場合に限って公信力を認めたのと同様の効果を生むこととなる。
登記請求権詳細は「登記請求権」を参照

登記上の利益を受ける者を登記権利者,不利益を受ける者を登記義務者といい、登記権利者が登記義務者に対して登記を請求できる権利のこと。

物権的登記請求権

物権変動的登記請求権

債権的登記請求権

商業登記詳細は「商業登記」および「登記事項 (商業登記)」を参照

商業登記とは、民法、会社法、商法、商業登記法などの規定により、会社を成立させる登記から始まり、会社や商人に関する現在および過去の権利義務を公示し、事業を終了するまで継続して行う登記である。司法書士が商業登記の申請や相談などの業務を行うことができる。会社の設立や組織再編の多くは登記によってその効力が発生し、それらを含めた会社に関する様々な事項(商号、本店、株式、新株予約権、各種制度、機関、役員など)を公示することで法令上、また取引上の対抗要件を得る。取引の相手方は、商業登記簿の閲覧により、円滑な商行為が可能となるため、商業登記簿は取引の安全を重視する商法の世界を支えるインフラの役目を果たしている。そのため、登記を怠ると過料が科せられる。
商業登記の効力

商業登記簿に記載すべき事項については、原則として、登記の後でなければ、善意の第三者(その事実を知らずに取引関係に入った者)に対抗できない(消極的公示力、商法9条1項前段)。一方、登記の後であれば、商業登記簿に記載すべき事項について、第三者は悪意(知っていたもの)とみなされる(積極的公示力、通説)。ただし、第三者に「正当な事由」がある場合は、当事者はその善意の第三者に対抗できない(9条1項後段)。この「正当な事由」は、災害による交通の途絶や登記簿の滅失・汚損などの場合のみしか認められず、ほとんど認められる余地はない。さらに、故意又は過失で不実の登記(真実と異なる登記)をした者は、不実を理由として善意の第三者に対抗できない(9条2項)という公信力もある。
商業登記簿

商業登記に関する手続は商業登記法や商業登記規則などに定められている。同法において、登記所には次の商業登記簿を備えることとされている(同法6条)。

商号登記簿

未成年者登記簿

後見人登記簿

支配人登記簿

株式会社登記簿

合名会社登記簿

合資会社登記簿

合同会社登記簿

外国会社登記簿

商業登記の問題点

役員全員解任の登記が申請された場合、登記官は株主総会議事録や新任役員の印鑑証明などの書類を審査して虚偽がないかをチェックするが、登記変更前に当該会社へ連絡するのは有名な上場企業などに限られ、中小企業では虚偽登記により会社が乗っ取られかけた事件が2022年に発生している[3]

会社代表者の住所が公示されることに対しては防犯やプライバシー保護といった面での懸念があり、法務省は2022年、インターネット上での開示をやめることを発表した[6]

法務省はこのほか、日本で事業を展開する外国企業、特にIT大手に対して日本でも法人登記するよう2022年に要請し、複数の企業が応じた[7]
船舶登記詳細は「船舶登記」を参照

船舶登記は、商法、船舶法などの規定により、船舶の所有権、賃借権、抵当権の公示のための登記をいう。
かつて存在した登記
登記簿中滅失

司法省の部局であった区裁判所・司法事務局(出張所)保管の登記簿の滅失や滅失の疑いにより、司法大臣が、少なくとも1件の転写を行うことを告知した『官報』は、1899年(明治32年)から1949年の50年間のあいだに180冊以上存在する(年平均 3.6冊)。
身分登記簿

1898年、明治31年式戸籍が作成され始めてから、1914年に大正3年戸籍法が施行されるまでは、身分登記簿が存在した。
日本の登記 関連項目

法務局登記事項登記事項 (不動産登記)司法書士土地家屋調査士海事代理士商業登記ソフトウェア企業コード会社法人等番号法人番号個人番号
アメリカにおける登記

アメリカ合衆国にも様々な種類の登記制度があるが、アメリカ合衆国はそもそも「United States」なので(つまりStateが結合しているという法的なしくみの国家なので)、イギリスとは異なってGeneral Register Officeのような中央集権的な登記機関は存在せず、登記はそれぞれの州政府や地方政府によって管理されている。(そして州ごとに制度が微妙に、あるいはそれなりに異なる)

例えば、不動産登記に関しては各州の地方裁判所が管理している。各州の土地登記簿には、不動産の所有者や担保権者、抵当権の有無などが登録される。また、車両登録に関しても各州の運輸局が管理している。運輸局には、車両所有者の情報や車両の登録番号などが登録される。

会社登記に関しては、州政府の事務所が管理しており、会社名、登録住所、取締役名や主要な株主の情報などが登録される。州ごとに会社登記の制度が微妙に異なる場合がある。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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