服部のいう第一種の記号。既存のアルファベット(通常はラテン・アルファベット)を基本にして、不足する字は文字の変形やダイアクリティカルマークの付加によって補うもの。この方法は現在もっともよく行われており、なかでも国際音声記号(IPA)が広く用いられている。ただし、国際音声記号は印刷に不便な文字があることから、これを多少変更して用いることもよく行われる。
アメリカの言語学会では、国際音声記号も使われるが、多少異なる記号体系もよく使われる(詳細はアメリカの音声記号を参照)。そり舌音を [?] [?] などで表し、前舌円唇母音に [u] [o] [??] などを用い、硬口蓋接近音に [y] を用い、後部歯茎音に [?] [?] [?] [?] を用いるなどの違いがあり、印刷しやすい反面、ダイアクリティカルマークが多すぎて読みにくい欠点がある。
日本で出版される英語辞典は国際音声記号またはそれを多少変更・簡易化した記号を用いるのが普通だが、アメリカの英語辞典はそれとは大きく異なる発音記号を用いることが多い(詳細はen:Pronunciation respelling for English
を参照)。服部のいう第二種の記号。既存のアルファベットに基づかず、音から形を決めるもの。アレクサンダー・メルヴィル・ベルの視話法の文字が代表的なもので、ヘンリー・スウィートはこれを改良したものを「revised Organic」と呼んで論文に利用した。しかし、スウィートによると、視話法は単純ではあるが記号どうしの識別が難しく、とくに似た音を似た記号で表すため、音が近い記号どうしは本質的に区別がしづらくなる欠点があった[2]。また、服部によるとベルやスウィートの音声の分析には問題があるが、その説に従うことを前提としているという問題点もあった。 服部のいう第三種の記号。音声器官の働きを分析的に表す。オットー・イェスペルセンやケネス・パイクのものがよく知られる。 正書法の中には音韻的見地からみて合理的なものも多いが、通常は歴史的な理由・書きやすさ・形態音韻論的な理由など、音声学的理由とは異なる要因を考慮に入れる必要があるため、音声記号とは言えないのが普通である。 たとえば日本語のローマ字では高低アクセントを表記せず、「経営」を kee ではなく keiei と書くなど、純粋に音韻的ではない。また中国語の?音は「一」を実際の声調と無関係に必ずy? と書いたり、児化した音節は児化する前の綴りの後ろにrをつけるなど、形態的な要因を考慮しているため、やはり音声記号ではなく正書法である。 以下はいずれも既存の字母を利用したものである。 19世紀から20世紀はじめにかけて、方言研究のために多くの発音記号が考案された。
非字母的記号
音韻的正書法との違い
発音記号の例
国際音声記号 (IPA)
X-SAMPA IPAをASCII文字セットのみで表す
キルシェンバウム IPAをASCII文字セットのみで表す
発音記号 (タイ語) IPAを元にしたタイ語の発音記号
アメリカの音声記号
Arpabet(英語用)
カール・リヒャルト・レプシウスの標準アルファベット (Standard Alphabet by Lepsius
ヨアン・ルンデル
エーミル・ネストル・セタラによるウラル音声記号
表
話
編
歴
発音記号
多言語
国際音声記号
キルシェンバウム
SAMPA
X-SAMPA
その他
発音記号(タイ語)
アメリカの音声記号(アメリカ州先住民族の言語)
ARPABET(アメリカ英語)
スウェーデン語方言字母(スウェーデン語)
典拠管理データベース: 国立図書館
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