発酵
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これはパン生地を膨らませるのにも使われ、二酸化炭素の作りだす気泡によって生地が泡だって膨張する[15][16]。エタノールは、ワイン、ビール、リキュールなどのアルコール飲料に含まれる酩酊剤である[17]サトウキビトウモロコシテンサイなどの原料の発酵により生産されるエタノールは、バイオマスエタノールとしてガソリンに添加される[18]金魚など一部の魚類においては、エタノール発酵は(乳酸発酵とともに)酸素が不足したときのエネルギー供給源となる[19]

発酵の前に、グルコース分子は2分子のピルビン酸に分解される(解糖という)。この発熱反応からのエネルギーは、無機リン酸を ADP に結合させ、ADP を ATP に、NAD+をNADHにそれぞれ変換するために使われる。ピルビン酸塩は2分子のアセトアルデヒドに分解され、2分子の二酸化炭素を老廃物として排出する。アセトアルデヒドは、NADHのエネルギーと水素を使ってエタノールに還元され、NADHはNAD+に酸化され、このサイクルを繰り返すことができる。この反応は、ピルビン酸デカルボキシラーゼアルコールデヒドロゲナーゼという酵素によって触媒される[13]
乳酸詳細は「乳酸発酵」を参照「混合有機酸発酵(英語版)」も参照

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ホモ乳酸発酵(Homolactic fermentation、乳酸のみを生成する)は、最も単純な種類の発酵である[20]。解糖系からのピルビン酸が単純な酸化還元反応を起こして乳酸を生成する[21][22]。全体として、1分子のグルコース(または任意の六炭糖)が2分子の乳酸に変換される。C6H12O6 → 2 CH3CHOHCOOH

乳酸は、動物の筋肉で血液が酸素を供給するよりも早くエネルギーを必要とするときに、グリコーゲンが分解されて生成する。乳酸は、乳酸菌などの細菌や一部の真菌類にも存在する。ヨーグルトに含まれる乳糖を乳酸に変え、酸味を与えるのもこの種類の細菌である。これらの乳酸菌は、最終生成物のほとんどが乳酸であるホモ乳酸発酵と、一部の乳酸がさらにエタノールと二酸化炭素[21]ホスホケトラーゼ経路を経由)、酢酸、その他の代謝生成物に代謝されるヘテロ乳酸発酵のいずれかを行うことができる。一例を示す。C6H12O6 → CH3CHOHCOOH + C2H5OH + CO2

ヨーグルトやチーズのように、乳糖が発酵すると、まずグルコースとガラクトース(どちらも同じ原子式の六炭糖)に変換される。C12H22O11 + H2O → 2 C6H12O6

ヘテロ乳酸発酵は、ある意味では、乳酸発酵アルコール発酵など別の種類の発酵との中間的なものである。乳酸を別のものにさらに進んで変換する理由には、次のようなものがある。

乳酸の酸性は生物学的プロセスを抑制する。これによって酸性に適応できない競争相手が排除されて、発酵微生物にとって有益となりうる。その結果、食品の保存期間を長くできる(食品が意図的に発酵するひとつの理由)。しかし、ある点を超えると、酸性度はそれを生成する生物に影響を及ぼし始める。

高濃度の乳酸(発酵の最終生成物)は平衡を逆行させ(ル・シャトリエの原理)、発酵速度を低下させ、増殖の進行を遅らせる。

乳酸から容易に変換されるエタノールは揮発性が高く、容易に蒸発するため、反応は容易に進行する。CO2も生成されるが、弱酸性でエタノールよりも揮発性が高い。

別の変換生成物である酢酸は、エタノールほど揮発性は高くないが、酸素が限られている環境では、乳酸から酢酸を生成することで、さらにエネルギーが放出される。酢酸は乳酸よりも軽い分子で、周囲と形成する水素結合の数が少ないために揮発性が高く、反応がより迅速に進行する。

プロピオン酸酪酸など、より長いモノカルボン酸が生成すると、エタノールと同様に消費されるグルコースあたりの酸の生成量が減少し、より早く増殖することができる。

水素ガス詳細は「発酵水素生成(英語版)」を参照

水素ガス(H2)は、NADHからNAD+を再生する手段として、多くの種類の発酵により作られる。電子フェレドキシンに移動し、フェレドキシンはヒドロゲナーゼによって酸化されてH2を生成する[13]。水素ガスはメタン生成菌硫酸還元菌基質となるため、水素濃度は低く保たれ、このようなエネルギーに豊む化合物の生成に有利になるが[23]腸内ガスのようにかなり高濃度の水素ガスが生成されることもある[要出典]。

たとえば、細菌であるクロストリジウム・パストゥリアヌム(Clostridium pasteurianum)はグルコースを酪酸酢酸、二酸化炭素、水素ガスに発酵させる[24]。酢酸を生成する反応は次のとおりである。C6H12O6 + 4 H2O → 2 CH3COO? + 2 HCO3? + 4 H+ + 4 H2
メタン詳細は「メタン発酵」を参照

メタン発酵とは、メタン菌の有する代謝系のひとつであり、水素ギ酸酢酸などの電子を用いて二酸化炭素メタンまで還元する系である。メタン菌以外の生物はこの代謝系を持っていない。嫌気環境における有機物分解の最終段階の代謝系であり、特異な酵素および補酵素群を有する。
その他

その他の発酵には、混合酸発酵(英語版)、ブタンジオール発酵(英語版)、酪酸発酵、カプロン酸発酵、アセトン-ブタノール-エタノール発酵、グリオキシル酸発酵などがある[要出典]。
広義の発酵

食品および工業的な文脈では、管理された容器内で生物によって行われるあらゆる化学的修飾を「発酵(fermentation)」と呼ぶことがある。次にあげるいくつかの例は、生化学的な意味の発酵には該当しないが、広い意味では発酵と呼ばれるものである。
代替タンパク質「発酵食品の一覧(英語版)」を参照インポッシブル・バーガーに含まれるヘムタンパク質を製造するのに発酵が使用されている。

発酵は代替タンパク源の製造に使用されている。大豆のような植物性由来の食品を含む既存のタンパク質食品を、テンペ腐乳のような、より風味豊かな形に加工するためによく使われる。

より近代的な「発酵」では、肉類牛乳チーズの代用品を製造するのに役立つ組換えタンパク質が作られている。代表的な例をあげる[25]

人工肉用の組換えミオグロビン(Motif Foodworks)

組換えレグヘモグロビン(英語版)を使った人工肉(インポッシブル・フーズ

乳製品代替用の組換え乳清(パーフェクト・デイ(英語版))

組換え卵白(EVERY)

ミオグロビンやヘモグロビンなどのヘムタンパク質 (en:英語版) は、食肉に特徴的な食感、風味、色、香りを与える。ミオグロビンやレグヘモグロビンの成分は、肉からではなく、発酵槽から得られるにもかかわらず、こうした特性を再現することができる[25][26]
酵素

工業的発酵(英語版)は、酵素の生産にも利用することができ、触媒活性を持つタンパク質が微生物によって産生・分泌される。発酵プロセス、微生物工学、および組換え遺伝子技術の開発により、さまざまな酵素が商業的に製造されるようになった。


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