発達障害
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また、高機能自閉症の診断基準は明確ではなく、臨床においてはアスペルガー症候群と厳密に区別する必要はないとされている[29][要文献特定詳細情報]。

明確な判断は、精神科を標榜する精神科医の間でも大学でこの分野を学んでいないなどの理由で困難とされている。各都道府県や政令指定都市が設置する、発達相談支援施設で、生育歴などがわかる客観的な資料や、認知機能試験(IQ検査心理検査等を含む)などを行って、複数人の相談員や心理判定員などが見立てとなる判断材料を出す形で、数少ない専門医師が判断し、どのような治療が必要か、SSTが必要かなどの材料を精神科医に提供する、というケースが多い。

環境変化に弱く、環境への適応も苦手とされる。精神保健研究所の研究員は、「極論だが、発達障害のある子供たちは『日常的に災害のような事態』を経験しているようにも思える」という表現している[30]
軽度発達障害

2000年頃からの日本において、「軽度発達障害」という概念が、「精神遅滞」「身体障害」を伴わない発達障害として杉山登志郎により提唱された [31]。これは高機能広汎性発達障害(高機能PDD、アスペルガー症候群や高機能自閉症などを指す)、LDADHD等、知的障害を伴わない(すなわち総合的なIQが正常範囲内)疾患概念を指して使われる[32](ただし、ADHDについては、別途知的障害を併発するケースがある)。ここでいう「高機能」という語も、「軽度」という言葉同様、知的障害のないという意味でつかわれている。「軽度」と呼称される根拠は、「知能が比較的高い」ためである[32]

厚生労働省はこの用語について、「世界保健機構 (WHO) のICD-10分類に存在しない」、「アメリカ精神医学会のDSM-V]に存在しない」ことを指摘し、「誰がどのような意図で使い始めたのか分からないまま広がった用語である」として注意を促している[33]。また、その語感から、「障害の程度が軽度である」と誤解されがちだが、上述の理由から、必ずしも障害自体が軽度とは限らない[* 6]文部科学省[* 7]も2007年、「『軽度発達障害』の表記は、その意味する範囲が必ずしも明確ではないこと等の理由から、今後は原則として使用しない」と発表している[34]

「軽度」といわれるが、罹患者の抱える問題は決して軽くはなく、早期の理解と適切な支援が望ましいとされる[35]。理解、発見が遅れた場合、いじめ不登校非行など二次的な症状を発生させることがある[35]
診断

子供が期待される発達段階に達していない場合、発達障害を疑うことができる。問診および遺伝子検査などが、鑑別疾患を除外するために行われる。

障害の程度は、発達年齢(developmental age)と実年齢との相違を基準として定量化することができる。このスコアはDQ (developmental quotient) として以下に定義される[36][37]

D Q = D e v e l o p m e n t a l   a g e C h r o n o l o g i c a l   a g e × 100 {\displaystyle DQ={\frac {Developmental\ age}{Chronological\ age}}\times 100}

知能検査ウェクスラー成人知能検査)で言語性IQと動作性IQの開きが激しい場合は、発達障害を疑ったり、当人へ特別な支援が必要とされている。

患者本人は少なくとも場の文脈に応じた行動を取ることが難しい。幼少期に発達障害と診断されていなくても、人間関係の中で奇異な行動が問題視され、障害の事実が炙り出される可能性が高い。成人期以降に発見される発達障害は、大人の発達障害と呼ばれ、社会問題となっている。
管理
支援

発達障害における早期発達支援のための、応用行動分析 (ABA) の手法を駆使した発達支援プログラムが、数多くのエビデンスによって有効であるとされている[38][39]。また、同じく発達障害における感情調整や問題解決を支援するための、認知行動療法の手法を駆使したプログラムも、取り組みやすいとされている[40]オープンダイアローグによる治療の可能性が期待されている[41]
挑戦的行動詳細は「挑戦的行動」を参照

発達障害者の一部は挑戦的行動[42]という習慣を抱えており、これは「本人または周囲の身体的安全を危険に晒したり、一般的なコミュニティ施設の利用について喫緊に制限・拒否されるほどの強度・頻度・期間がある、文化的に非常識な行動」と定義されている[43]

発達障害者が行う挑戦的行動の原因には、次のような多々の要素がある。

生物学的 - 痛み、薬、感覚刺激の欲求

社会的 - 退屈、社会的関係の模索、何かのコントロール必要性、コミュニティ規範についての知識欠如、スタッフやサービス係の無反応に対して

環境的 - ノイズや光などの身体的要因、欲するモノや活動に対してのアクセス獲得

心理的 - 疎外感、孤独感、切り捨て感、レッテル、ディスエンパワーメント、人々の負の期待

挑戦的行動は、多くの時間をかけて学習と報酬によって獲得されたものであり、同じ目的を達成するための新たな行動を教えれば、その行動を改善させることができる可能性は高い。発達障碍者の挑戦的行動は、多くの場合、何か他の精神的問題が原因のことがある[44]


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