発泡スチロール
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希望の形状に一体成型できるため、緩衝素材や保温・保冷箱などといった所定の形状を持つ製品に加工される。

断熱性に優れ、加工が容易で、これに加えて耐水性が高いのでクーラーボックスなどの構造材としても利用され、内面と外面の間にこの素材が用いられた製品があるほか、安価な物では発泡スチロールそのものを圧縮整形したクーラーボックスもある。

発泡させたポリスチレンビーズは、安価な緩衝材として、布袋等に詰めてクッションなどの家具(ビーズクッション)にしたり、精密機器輸送用の充填用梱包材に使われる。

加工がし易く軽量で一定の強度を持つことから、軽量化を必要とする装置のモノコック構造の構造材などにも利用される。例えば玩具ではあるがエアロソアラのような模型飛行機(またはラジコン飛行機)にも使用されることがある。

近年では軽量盛土素材として土木でも使用されており、2009年8月駿河湾地震で発生した東名高速道路の災害復旧に採用された。
PSPPSP製食品(ハンバーガー)容器

ポリスチレンペーパー (PSP) は、EPSのように高温蒸気で加熱・発泡させるのでなく、熱を加えて融解させた原料に、発泡を行うためのガスや発泡剤を加え、液体から厚さ数ミリ程度のシート状に引き伸ばすと同時に発泡させる。発泡率は約10倍である。

食品トレーや、カップ麺の容器に使われる。食品トレー等に加工するには、必要な大きさに切り分け、加熱しながら金型でプレスして整形する。

先述したとおり、一部の食用油に溶解しやすく、また耐熱性が低いので、特に高温の油に触れると熱によって融解し、気泡構造が崩れて侵食されたようになる。このとき、泡内のブタンペンタンが外気に放出されるが、これらに含まれる不純物により、俗に「発泡スチロール臭い」といわれる独特の臭気がする。この臭気は食欲を減退させるため、食品容器では問題となる。なおポリスチレンは一切消化・吸収されずに体外に排泄されるため、たとえ融解した樹脂を食べても、健康上問題ないといわれる。

カップ麺の容器は、強度や耐熱性を増すために、他の合成樹脂素材からなるシートが表面に接着されているものが多い。ポリ塩化ビニルやポリプロピレンなどの樹脂からなる保護シートを接着することで、耐衝撃性が増す(カップ麺では輸送中に落下させてもカップが破損しない)ため、大型の容器や過酷な輸送が予想される製品の容器に広く用いられている。接着前にシートに印刷することができるので、カップ麺では、店頭に並んだ際に人目を引くよう、さまざまな意匠が凝らされている容器も多い。
XPS耐火材として壁に埋め込まれたXPS(画像上半)

押出ポリスチレン (XPS) は、主に建材に使われる、堅くて難燃性の発泡スチロールである。建材であるため一般の目には触れにくいが、省エネルギーなどの観点から近代化された住宅断熱材としては屋根材の下や外壁の下などにも良く使われている。

発泡スチロールの易燃性は建材として致命的なので、難燃剤などで難燃性を向上させている。なおEPSも、建材に使われるときは同様に難燃剤が添加される。

液化した原料と発泡剤と難燃剤を高温・高圧下でよく混ぜ、一気に通常気圧・温度の環境に吹き出させる事で連続的に発泡・硬化させ、これを必要な大きさ(大体高さ2m・幅1m・厚さ10cmほど)の板に切断する。この連続的に製造する方法のために「押し出しボード」とよばれる。製造方法から、EPSより気泡が大きいものが多い。一定の難燃性を備え、一般的な発泡スチロールと区別するためか、淡い青などで着色されることもある。
スタイロフォーム

スタイロフォーム、スチロフォーム (STYROFOAM)、スティロフォウム は、ダウケミカルによる、XPSの登録商標である。

XPSを指す一般名詞、あるいははなはだしくは、発泡スチロールの同義語のように使われることがあるが、適切ではない。
環境ホルモン

発泡スチロールの主原料はポリスチレンだが、微量含まれているスチレンダイマーとスチレントリマーが、日本で1998年に、環境庁(現環境省)によりSPEED'98(環境省関連ページ)で内分泌攪乱物質(俗に「環境ホルモン」とも)の疑いのある物質として上げられた。そのため、従来は最終処分場にて埋め立て処理されていた発泡スチロールが、環境汚染の一因と疑われた。業界団体からの反発を受け、環境省は2000年11月にこのリストからスチレンダイマーとスチレントリマーを取り消した。
廃棄とリサイクル発泡スチロールゴミの山ポリスチレンの樹脂識別コード

ゴミとしては、重量の割に嵩張ること等が処分費用の高騰に伴い問題となっている。また、衝撃を受けた場合に細かい破片を撒き散らすために海洋ごみとしての害も大きい。

先進国ではこれを受け、同素材の製造業界団体や、これらを大量に商品を載せて販売していた大手百貨店スーパーマーケット等では、資源としてのリサイクルを模索し、近年では使用後に回収された発泡スチロールを、溶剤や高熱で再加工し、資源として再生したり、燃料として利用している。日本国内ではデパートやスーパーマーケットに食品トレイの回収箱を置き、消費者からこれらを集める運動も盛んである。

溶剤ではリモネン等の柑橘類から採取できる物を用いた物が開発され、小規模な施設では発泡スチロールを溶解させ液化させ、廃棄体積を大幅に減らすと共に、溶解物がボイラーなどの燃料として利用されている。また加熱による再加工プラントでは、ある程度大規模な設備が必要だが、再びポリスチレンビーズに戻して別の発泡スチロール製品の原料としたり、あまり強度や耐熱性を要求されないプラスチック製品用の原料を生産している。

発泡スチロール再生プラスチックで、ビデオテープカセット文房具(ボールペンの軸など)などが生産されている。

その一方、従来は燃焼させると高温でよく燃え過ぎるため、焼却炉を傷めるとして、地方自治体のゴミ処理施設では厄介物扱いされていたが、近年ではダイオキシン対策として高温型の焼却炉が普及していること、また、RDF発電施設などの設置が進められており、生ゴミの燃焼力を高めるために廃プラスチックや廃発泡スチロールを混ぜることも多い。

EPS、PSP、XPSは、化学物質としては同じポリスチレンなので、同じラインでリサイクルできる。ただし、回収量の大部分を占めるEPSの梱包材が高純度のポリエチレンであることもあり、不純物が混入すると品質低下などの問題が大きい。カップ麺の容器など複雑な印刷がされたものは、素材が違うシートが表面に接着されているので、回収対象から除外されることが多い。


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