発掘調査
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発掘調査に用いる道具・機材油圧ショベル(ユンボ手押し車

今日では表土の掘り下げのため、遺構確認面のすぐ上まで油圧ショベルを用いることが多くなった。そののち、スコップで遺構確認面まで掘り下げ、鋤簾(ジョレン)を用いて遺構面を明らかにしたうえで精査する(以降検出)[6]。細かい部分は片手用の移植ベラや片手ネジリ鎌を用いるが、遺構や遺物を傷つけないため、とくに記録が必要な箇所の周囲は竹ベラ刷毛(ハケ)、竹串などもそれぞれのケースに応じて用いる。

実測のために、ピンポール、フリーポールその他の基準となる地点をつくる道具、メジャー、巻尺、バカボー(スタッフ棒)、コンベックスなどの実測具が必要で、こんにちではトータルステーションと呼ばれる光波機械も多用されるようになっている。コンベックス

実測図作製の媒体となる方眼紙やメモ用の野帳(スケッチブック)などは、発掘調査用は風雨に耐えるよう工夫されている。覆土などの土層註記のため、全国統一の規格としての標準土色帖がある。カメラフィルムなど撮影機材も必要である。遺物の取り上げのためには、大小のポリ袋と出土地点を記すための荷札その他が用いられる。また、遺構を風雨や乾燥から保護するためのブルーシート、小物を入れるための買い物カゴ、掘り上げた土を調査の邪魔にならない地点まで運ぶ手押し車(一輪車)やベルトコンベアなど、発掘現場では多種多様な道具・機材が用いられる[5]
整理作業と発掘調査報告書

発掘で得られた図面や遺物は、遺跡調査団体の作業室に送られ「整理作業」が行われる。整理作業では、遺物の実測図作成や写真撮影、遺構図面作成等を行う[1]。同時に、遺跡概要や調査経緯・考察を述べる本文執筆が行われる。出来上がった本文・図面・写真図版などを編集し、発掘調査報告書として発行する。報告書の発行をもって発掘調査は完結するのである[1][7]

発掘調査報告書は文化庁により「現状で保存できなかった埋蔵文化財に代わって後世に残る公的性格をもった重要な存在」と位置付けられており[8]、各地の公立図書館や大学付属図書館、博物館などに所蔵されており、閲覧することができる。奈良文化財研究所(奈文研)の運営する機関リポジトリである全国遺跡報告総覧でも閲覧できる。

なお奈文研は、2021年(令和3年)4月26日より、全国遺跡報告総覧に登録された刊行物(発掘調査報告書・博物館展示会図録など)・動画・論文などの各種コンテンツを、ウィキペディアの出典情報として正確に、かつ書式に従い効率よく引用出来るようにするため、引用時にコンテンツ表記を自動表示するアイコンを開設した。これによりウィキペディアの、主に遺跡や考古学に関する事項を編集するユーザーは、執筆においては発掘調査報告書を参照し、また出典として引用したい場合、書誌情報を迅速にコピー・アンド・ペースト出来るようになった[9]
遺跡発掘調査に必要なこと

遺跡の構造を解明していくためには、分布調査や実測調査のみでは不十分であり、発掘調査という方法を用いることなしに考古資料にふくまれる情報を十分にとりだすことは困難である[1]。発掘調査には、分布調査・実測調査以上に豊富な技術・知識・経験が求められ、十分な経費や調査計画、調査組織も必要である[1]。遺跡は、一度掘ってしまうと、遺構の形状や切り合い関係、共伴関係、あるいは遺物の出土状況、層位といった一切が二度と元には戻らない[1]。慎重さを欠いた調査は、遺跡の「破壊」にほかならないのである[1]
古生物学における発掘調査

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出典検索?: "発掘調査" ? ニュース ・ 書籍 ・ スカラー ・ CiNii ・ J-STAGE ・ NDL ・ dlib.jp ・ ジャパンサーチ ・ TWL(2020年2月)

化石採集のための服装と採集用具

汚れても構わない丈夫な服が必要なこと、怪我や虫さされ防止のため夏でも長袖着用なことは、考古学調査の場合と同じである。上着にポケットがたくさんあると、小さい化石やルーペを入れたりできて便利である。採集用具としては、ハンマータガネが必需品である。使用するハンマーは、の部分と柄が一体で一方が角面、他方が平刃となったチゼル型と他方が尖っているピック型がある。タガネには平刃のものと尖ったものがある。観察用にルーペが必要である。取り上げた資料を袋にそのまま入れると化石どうしが擦れ合うので新聞紙などで包む。地形図磁石、野帳、撮影機材も記録保存のために必携である。
発掘調査における諸問題
虚偽の補助金請求

2005年度から2010年度までの6年間に、各都道府県市町村文化庁から補助金を受けて行った遺跡発掘調査事業のうち、29の事業について、調査報告書が未作成であるにもかかわらず「作成した」と虚偽の報告を行ったり、発掘に携わった人員に対する人件費の水増し請求などを行っていたことが判明し、文化庁は事業を実施した自治体に対し、補助金の返還を求める事態となった[10][11]
住民による発掘調査の妨害

1997年大韓民国ソウル特別市アパートの工事現場から、初期百済時代の竪穴建物や風納土城の百済王宮とみられる遺構が見つかった。2000年に風納洞197番地で発掘調査が行われたが、アパートに住む予定の住民が発掘調査の中止と工事の即時再開を求めて抗議活動を行い、警官隊が投入された。2006年にも、地元住民が「生存権の保障」を求めて発掘調査中止の抗議活動を行い、調査担当者を4時間以上にわたり現場事務所に監禁し、警官隊によって排除された。この抗議活動で、調査担当者は入院を余儀なくされた[12]
発掘風景画像

アラゴ渓谷(フランス)での化石人骨発掘調査風景

アタプエルカ(スペイン)の考古学発掘風景

ロンドンで発見されたローマ時代の馬の骨

豊地城(兵庫県)の発掘現場

脚注
注釈^ 英語では、development-led excavation(開発行為に伴う発掘調査)と表現されることがある。レンフリューは、salvage excavations と呼んでいる (Renfrew, C. et. al. 1991, 1996, pp. 526-7)。
^ 桔梗野工業団地造成にともなう発掘調査。
^ 県営住宅団地造成にともなう調査。
^ 一戸町農工団地造成計画にともなう調査。

参照^ a b c d e f g h i j k 広瀬(2007)pp.21-22


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