痩身
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減量食では食品の量が減るため必須ミネラルやビタミンが不足する可能性がある。これらの栄養素を補充するため献立を工夫したり、フォーミュラ食を活用したりする必要がある。

十分な食物繊維の摂取は減量に有効であり、日本人の食事摂取基準にある通り1日あたり20g以上の摂取が推奨される。

アルコールは必須栄養素ではなく悪影響もあるため禁酒が望ましいが、肥満症患者に対して許可する場合でも1日あたりエタノール25g以下とする。アルコールは1gあたり7kcalのエネルギーがあることも留意する[6]
運動の効果

運動は肥満予防に有用であり、減量体重の維持にも有用である。一方で、肥満症の者に実施可能な運動量では減量はあまり効果が期待できない。運動量がガイドライン推奨レベルに達していなくても心血管疾患発症・重症化リスクを低減させるため、減量効果がなかったとしても少しでも身体活動・運動量を増やすことが推奨されている。

肥満症の運動療法に推奨される運動の内容としては、エネルギー消費量を増やすために有酸素運動を中心に(筋力トレーニングの併用も望ましい)、4?6METsの軽?中強度の運動を1日累計で30分以上、毎日あるいは週累計で150分以上といったものとなる。

仕事上での高強度の身体活動は心血管イベントを増加させるとの報告もあり、原因として運動の性質やストレス、回復の不十分さが指摘されている。このような場合には余暇時間のリラックスした状態での運動(散歩など)が望ましいと考えられている[3]:58-63。
行動療法

次のような行動療法の手法がある。

食行動質問票:質問票によって食習慣の傾向・問題を把握する[3]:63-69

グラフ化体重日記:体重測定は肥満治療に重要であり、体重変化を視覚化することで減量効果が上がる[3]:63-69

グラフ化生活日記:生活リズム異常が体重増加に寄与するため、生活日記により視覚化して是正を図る[3]:63-69

咀嚼法:荒噛み・早食い是正のために、30回咀嚼法では1口ごとの咀嚼の回数を決める[3]:63-69

日本国内での研究

日本国内において、2009年7月 - 2011年2月にかけて、中年肥満男性を対象とした食習慣改善と運動実践を促す半年間の減量教室が開催された。この減量教室は3ヵ月間の食習慣改善教室と3ヵ月間の運動実践教室で構成された。教室の終了から1年後に追跡調査を実施し、減量後の体重およびメタボリック症候群構成因子の変化を観察した研究がある。この研究では、参加者58名のうち、6ヵ月目の測定を完遂した者は51名、18ヵ月目の測定を完遂した者は39名だった。食習慣改善教室では一食につき、560kcalの「バランスの取れた食事」を取るよう指導された。運動実践教室は、週1回で座学講義と運動実技で構成された。参加者の体重は減量教室を通して減少した(平均-8.0kg)が、その後に増加が確認された(平均+3.7kg)。結果として、減量教室終了から1年後の18ヵ月目においては減量開始前よりも平均で-4.3kgとなり、体重が増えた者は3名だった[7]

2016年10月から2017年7月の期間において、企業および病院との産官学連携事業として、松本大学は運動・食事指導を組合わせた宿泊型健康指導を実施した研究を行った。企業の従業員42名を対象に、初回および6ヵ月後に1泊2日の中で血液検査、体力測定、管理栄養士による食事講座・食事指導(個別面談)、健康運動指導士による運動を実施した。半年後、参加者の体重(BMI)、腹囲、血圧の数値は改善し、体力水準の向上、食事バランス、食習慣の改善が見られたが、定期的な運動の実施に対する参加者の意欲は、研究開始後に低下していった[8]
薬物療法

薬物療法は食事・運動・行動療法による減量が不十分な肥満症に限り適応を考慮する。糖尿病治療薬には減量効果を持つものがあるが、日本においては糖尿病を合併しない場合には保険適応はない。高度肥満症に対してはマジンドール(食欲抑制作薬)が保険適応となるが、耐性・依存性への懸念から、連続して3ヶ月までの使用に限定される。

肥満症に対する薬物療法は国によって用いられている薬剤の種類や適応条件が大きく異なっている。これは肥満の定義のみならず、人種、疫学データ、食事や生活習慣、また肥満者の割合や重症度が国によって大きく異なることに加えて、肥満症に対する薬剤は副作用が生じることが比較的多いことが理由である。このことから、自由診療や海外からの個人輸入を用いた、安全性や有効性のデータが不十分な薬剤使用が横行しやすい現状となっている[3]:62-73。
種類

肥満症治療薬として国内承認されているもの

マジンドール

糖尿病治療薬として国内承認されており、減量効果のあるもの

GLP-1製剤

SGLT2阻害薬

ビグアナイド

α-グルコシダーゼ阻害剤

国内未承認のもの

シブトラミン

リモナバン

オルリスタット

事例

ヨーロッパ各国で使われていたものとしてフェンフルラミンがある。脳内にあるセロトニン受容体に直接作用してセロトニンの濃度を高めることにより、食欲を抑制する作用がある。アメリカ合衆国では1996年に許可が下り、市場に出回った。しかし、その翌年に心臓弁膜症肺高血圧を誘発する危険性を指摘されたことで、FDAの要請に基づいて市場から回収された。日本でも、このフェンフルラミンや甲状腺ホルモンの混入した健康食品が、インターネットや口コミを通じて出回り、重大な健康被害を引き起こす例が多発して社会問題になった(2002年)。

アメリカ合衆国では若年女性による減量目的のステロイド剤の使用が社会問題と化している。2005年に行われた報告によれば、女子高校生のおおよそ5%、女子中学生のおおよそ7%が、少なくとも一度はステロイド剤を使用した経験があるという[9]

EMEAやFDA、厚生労働省が承認した薬剤の多くは中枢神経に作用する薬物であり、日本においては本来は医師が処方するものである。日本で承認されているマジンドール処方箋医薬品であるが、これ以外の薬剤は承認されておらず、その適応基準は厳格に設定されている。

EMEAあるいはFDAに認可されている薬剤は、BMI≧30の高度肥満症であるか、BMI≧27でかつ2型糖尿病や脂質代謝障害のような疾患を有している人が投与対象である[10][11][12][13]

日本における投与についてはBMI≧35か、70%以上の肥満度の高度肥満症であること(マジンドールの適用基準)が前提となっており、一段と厳しい基準を課している[14]
外科手術
肥満症の外科療法詳細は「肥満手術(英語版)」を参照

肥満症に有効な外科手術として、胃を小さく形成する胃バンディング術やスリーブ状胃切除術、食物が消化管の一部を通らないようにする胃バイパス術や十二指腸空腸バイパス術がある。日本において保険適応となる術式はスリーブ状胃切除術のみである。

高度肥満症に対する外科療法は内科療法に比較して効果的な体重減少が長期的に維持でき、健康障害の改善も良好である[3]:73-77。
美容手術

美容外科手術は美容的改善を目的とした保険外診療で、脂肪吸引脂肪融解レーザーなどがある。

脂肪吸引術は手術部位にカニューレを挿入し脂肪組織を盲目的に吸引するため、皮膚切開の大きさに比べて侵襲の大きな手術となる。保険外診療であるため合併症に関する統計が不足しており、また出血合併症への対処が施術クリニックでできず他院への救急搬送になるといった問題が指摘されている[15]

脂肪吸引は術後には体重減少となるが一時的な影響にしかならず、数ヶ月後には元の体重に戻ることがシステマティック・レビューで確かめられている[16]
補正下着「補正下着」、「ガードル」、および「ボディスーツ」も参照

体型を整えることを目的とした下着。ボディラインを目的とする形に整えたり、下垂しやすいバストやヒップの位置を整える役割がある[17]

着圧による減量の試みもされているが、その影響や効果は明らかでない。動物実験によって減量の効果が示された研究もあるが、人に対する効果については明確にすべき課題が残っている[18]

19世紀半ばのイギリスでは細いウエストを求める風潮からきつく締めるコルセットが流行した。一部ごく少数の極端な女性では過剰にきつい紐絞めがされ、その場合は痛みを伴い食事も制限され、結果ウエストは約33cmまで細くなったという体験談が残されている。きつい紐絞めは当時においても健康への悪影響が懸念されており、胸郭を変形させることが知られていた[19]:81-93。
器具

電気刺激を発する器具を腹部に巻いたり、張り付けて腹部の筋肉を鍛え、痩身効果を得ると宣伝する手法がある。他にも利用される方法は(「サウナスーツ」。 発汗作用により、一時的に体重を減らす)、高周波振動(電動式痩身ローラー・ベルト)、低周波振動(マッサージ器)、磁力 etc.

消費者庁は、これらの器具を販売する各社に資料提出を求めて効果を調査した。


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