病気
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ただし、これも突き詰めて考えてみると、医師が依存症嗜癖骨粗鬆症などと診断するようなケースでも上記のような認識のズレが生じていることがあり、医学研究の立場では本人や周囲の判断・価値観に関わらずに病気を定義し診断できるようにすることへの要求は存在する。
医療関係者の主観を織り込もうとする試み

医師など医療産業に従事しそれで収入を得ている者の中には「病気とは心身に不調あるいは不都合がある状態のことであって、いわゆる医療による改善が望まれるもの」などと、“医療”という言葉を手前味噌的に、半ば強引に定義に盛り込んでしまう例も無いわけではない。(だが、医療とは病気を治すものであるから、病気の定義に「医療」を用いるのは一種の循環論法となりうる。また、病気には医療を必要とせず治癒するものも多いので、その意味でもかなり問題のある定義である(後述))
医療人類学での見解

医療の領域で起きていることを、医療関係者の立場からも患者の立場からも離れて、客観的そして学問的に研究する医療人類学では、「病気(sickness)とは疾患(disease)と病い(illness)をあわせたもの」とする定義も提出されている[2]。疾患(disease)を"生物学的なもの"とし、病い(illness)は"主観的な経験のこと"、とする説明である。この説明方法を採用した場合、例えば、上記の糖尿病の例では、疾患の定義に当てはまる者は1000万人いるかもしれないが、慢性疾患で自覚症状が少ない初期では本人が「病い」と捉える人はごく少ない、という理屈になる。
社会的状況

冒頭に説明したように、何が病気であるかそうでないかを決めるのは容易ではない。各立場なりの見解があり、一般の人々の多くは自身の感覚で病気か否かを判断しており、ちょうど「本人が心身に不都合を感じ、改善を望むような状態」といった定義をそのまま当てはめるようなケースが一般的に見られる。医師の集団は医師なりの立場で、生物学に基づく見解を示したり統計を駆使するなどし、臨床医師では、目前に現れた患者の個別的な症状と、医学書に書かれている慣習的な判断基準とを見比べて便宜的に判断する等々、さまざまな運用が行われている。それらの見解は複雑に相互影響しあう[注釈 2]

実際、臨床の現場では医師と患者の見解がしばしばずれたり対立することがある。上記では周囲は病気と判定しているが本人は病気とは思っていない例をいくつか挙げたが、逆に本人が病気だと感じているのに医師の側がそう認識しない、しようとしない、というケースもある。たとえば本人が身体に激痛や異常な感覚などを感じ明らかに何らかの病気だと直感しそれを訴えているにもかかわらず、医師の側ではCTやMRIなどの画像を見て、そのその検査とその医師の技量との組み合わせではたまたま何も見つけられなかったことを根拠に、「("客観的に見て" あるいは"生物学的に見て")疾患ではないでしょう。気のせいでしょう」などと告げて放置し、すっかり悪化したり死亡してから、事後的に他の医師によって誤診だったと判定されるようなケースもある。またステロイド皮膚症や各種の公害病乳幼児突然死症候群の例に見られるように、その病気が存在するかどうか自体が学問的のみならず政治的にも問題となることもある。
分類

病気を分類することは容易ではなく、またその分類は医学の変化に伴い頻繁に変更される。医学においては、一般に以下のような観点によって病気は分類される。

精神疾患器質的疾患生体組織自体の異常による疾患)か機能的疾患(生体組織の働き方の異常による疾患)による分類

病巣の局在による分類(肝臓の疾患、心臓の疾患など)

原因による分類(感染性、心因性、自己免疫性、医原病など)

病理的所見からの分類(良性、悪性、肉芽腫性など)

進行の様相による分類(急性慢性、劇症、一過性、発作性など)

医療の要・不要による分類

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ほとんどまたは完全に一つの出典に頼っています。(2023年8月)


独自研究が含まれているおそれがあります。(2023年8月)


また、次のような分類が提唱されることもある[3]

カテゴリー1 : 医者がかかわってもかかわらなくても治癒する病気 (自然治癒力や本人の努力で治癒するもの)[3]

カテゴリー2 : 医者がかかわることによってはじめて治癒する病気[3]

カテゴリー3 : 医者がかかわってもかかわらなくても治癒しない病気[3]

開業医や市中病院医師が日常の診療で遭遇する「疾病」のほとんどは、上記で言えばカテゴリー1に属する[3](すなわち、医者・医療者がかかわらなくても治癒する病気である)。その比率は70?90%ほどであるという。


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