疑惑_(松本清張)
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3年前に詐欺事件を起こし仮釈放中の身で、球磨子のヒモ状態。過去に球磨子の前夫の土地・家屋を共謀してせしめたことがある。事件前に球磨子と会って福太郎の事件と似たような自動車事故の『ケネディ事件』について話したことがあると証言する。
白河福太郎
演 - 仲谷昇作中では富山で有名な白河酒造の社長。球磨子の夫でお互い再婚同士。車の事故(ほどなくして事件扱い)により死亡。球磨子によると泳ぎは苦手だが釣り好きなこともあり、福太郎が言い出して多額の保険に入ったとのこと。生前、球磨子に惚れ込んでいたが、気弱な性格で親族や球磨子どちらにもいい顔をしていた。
警察関係者
山崎捜査係長
演 -
新田昌玄直接捜査を仕切る刑事。保険金殺人疑惑の釈明会見で警察を挑発した球磨子を敵視して捜査にあたる。
小林刑事
演 - 河原崎次郎事件当初から球磨子が犯人と決めつけて捜査を行う。秋谷とは顔なじみでつい情報を漏らす。
刑事課長
演 - 山本清確たる証拠がない状態での球磨子の逮捕はできないと慎重かつ確実な態度で殺人による逮捕にこだわる。
佐々木刑事
演 - 飯島大介球磨子のことを苛立たせる存在として敵視している。小林の先輩刑事。酔うと口が軽くなる。
浅野刑事部長
演 - 梅野泰靖法医学教授による福太郎の遺体の鑑定結果を受けて刑事たちに報告する。
石原署長
演 - 小林昭二事件報道がされて数日後、市民から警察署に球磨子を逮捕するよう抗議が殺到したため焦る。
法曹関係者
宗方検事
演 -
小林稔侍本作の裁判の検事。証言者たちの様々な証言などから保険金殺人の容疑が掛かった球磨子を厳しく追求する。
矢沢裁判長
演 - 内藤武敏裁判中球磨子が勝手に発言したり感情的な態度を取るため、手を煩わされる。
原山正雄
演 - 松村達雄白河家の顧問弁護士。球磨子から裁判の弁護を依頼されるが、土壇場になって長年の持病を理由に弁護を断る。
岡村謙孝(かねたか)
演 - 丹波哲郎弁護士。原山の大学の後輩。原山によると刑事専門の弁護士としては日本屈指の存在とされる。
主な証言者
安西教授
演 -
小沢栄太郎大学医学部教授。福太郎の遺体を鑑定し、裁判で事故当時福太郎は助手席に座っていたと証言する。
藤原好郎
演 - 森田健作球磨子と福太郎が乗っていた車の事故の目撃者。裁判では、車を運転していたのは球磨子だと証言する。
堀内とき枝
演 - 山田五十鈴東京のクラブ経営者で、球磨子の元雇い主。球磨子が福太郎と初めて会った頃のことを証言する。
木下保
演 - 三木のり平福太郎の釣り仲間。福太郎が亡くなる1ヶ月前に会った時のことを証言する。
福太郎の親族など
白河はる江
演 -
北林谷栄福太郎の母。周りから『大奥様』と呼ばれる。結婚当初から球磨子のことを良く思っていない。
白河宗治(むねはる)
演 - 丹呉年克白河家の跡取り息子で中学生。福太郎と前妻の子。球磨子のことを『あの女』呼ばわりして嫌う。
島田勝行
演 - 水谷貞雄福太郎の義理の弟(福太郎の前妻の弟)。はる江から甥の宗治の後見人を頼まれる。
白河藤九郎
演 - 大森義夫親族会議で福太郎に、手切れ金を渡して悪評高い球磨子と離縁するように発言する。
白河家親族
演 - 中村美代子親族会議で、福太郎と球磨子の結婚について白河家が陰口を叩かれるようになったとぼやく。
岩崎専務
演 - 名古屋章白河酒造の専務。福太郎と球磨子の入籍を事後報告されたり、球磨子の素行の悪さに振り回される。
その他
片岡咲江
演 -
真野響子哲郎の後妻。あやこの育ての親。実の子のように愛情を持ってあやこに接している。
片岡哲郎
演 - 伊藤孝雄一人娘のあやこを引き取り後妻・咲江と暮らす。律子と離婚した時の条件として月に1度あやこを律子に会わせる。
デスク
演 - 小美野欣士
秋谷の同僚記者
演 - 羽生昭彦
記者
演 - 城戸卓
交通課警官
演 - 森下哲夫
鑑識課員
演 - 遠藤剛
警察署受付
演 - 小森英明
弁護士会幹部
演 - 神山寛
陪席判事
演 - 加島潤
看守
演 - 小田草之介
スタッフ

監督:
野村芳太郎

製作:野村芳太郎、杉崎重美

脚色:松本清張

撮影台本:古田求、野村芳太郎

撮影:川又昂

美術:森田郷平

編集:太田和夫

照明:小林松太郎

録音:原田真一

音楽:芥川也寸志毛利蔵人

助監督:松原信吾

受賞歴

1982年度「
キネマ旬報ベストテン」第4位

第6回日本アカデミー賞

優秀作品賞

優秀監督賞 - 野村芳太郎

優秀脚本賞 - 古田求、野村芳太郎

優秀主演女優賞 - 桃井かおり[注 1]

優秀助演男優賞 - 柄本明[注 2]、鹿賀丈史

優秀音楽賞 - 芥川也寸志[注 3]

優秀撮影賞 - 川又昂[注 4]

優秀照明賞 - 小力松太郎[注 5]

優秀録音賞 - 原田真一、松本隆司[注 6]


第37回毎日映画コンクール

日本映画優秀賞

脚本賞 - 古田求、野村芳太郎


第7回報知映画賞主演女優賞 - 桃井かおり

エピソード
撮影前

製作発表は1982年7月9日、東京の帝国ホテルで行われたが、会見後には桃井かおり・岩下志麻と清張の対談が設定された
[注 7]。その後も清張は本映画のロケーションを見学し(『岡倉天心 その内なる敵』の取材を兼ねていた)、出演者と交流した。完成披露試写会は、9月8日に丸の内ピカデリーで行われた[2]

本作は、1974年に実際に発生した別府3億円保険金殺人事件をヒントに松本清張に小説を書いてもらい、それを原作に映画製作が決まった[3]。映画の製作発表からまもなく、上記事件の被疑者Aから、原作者宛に手紙が来た。『疑惑』に書かれた内容は自分のことそのものであるとし、事件に関する意見を原作者に要求するものであったが、清張は事件は創作のヒントにしたにすぎないとして、関与を断った[4]

作中での女同士の闘い

松本が完成させた小説の主役は男性新聞記者だったが、野村芳太郎は女同士がぶつかり合う物語を作りたいと考えた。また、原作の内容量もそのまま映画にするには尺が足りなかったため、野村は脚本(肩書きは撮影台本)の古田求に主人公を球磨子と律子の女性2人にした上で、内容も増やしてシナリオを書き直すよう指示した
[3]。岩下は後年、「松本清張先生の原作ミステリーの面白さに女同士の闘いという要素を入れたことが、本作が成功した大きな要因だと思います」と評している[3]

律子とお互いに本音をぶつけながら、球磨子が彼女の白い服にボトル入りの赤ワインをダラダラとかけるシーンは、元々台本になかった。これは、古田がアメリカ映画『愛と喝采の日々』で2人の女性ダンサーが本音をぶつけながらバッグで殴り合うシーンにヒントを得て野村に提案し、採用されたもの[3]。このシーンで律子の服にワインをかける演出は、桃井のアイディア。桃井からこの案を聞いた岩下はワインの赤を引き立たせるため、元々用意されていた柄物の衣装から純白の服に替えてもらった[3]。球磨子のこの行動に対し、岩下はグラスのワインを彼女の顔に勢いよくかけることで、2人の対照的な性格を際立たせた[3]。本作の完成後、古田は野村から「律子と球磨子が本音をぶつけ合うあのシーンがあったから、この映画は締まった」との言葉をもらった[3]

桃井に関して

桃井かおりは、球磨子役のオファーを受けた経緯を次のように語っている。「週刊誌的には私自身がわけもなく嫌われていて最悪な状態だったんで、「いまさらこの役をやる必要はないでしょ」と、うちの事務所は全員大反対(笑)。
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