疑似科学
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主張を支持するようなデータを提示する一方で、対立するデータを抑制したり考慮したりしていない[37]。これは選択バイアスの一例であり、データの収集方法に起因する証拠やデータの歪曲である。選択効果と呼ばれることもある。

過去に他の場所で公表された過剰な主張や未検証の主張を繰り返し、あたかも真実であるかのように喧伝している。独自の経験的調査を行わない、このような無批判な二次報告の蓄積は、ウーズル効果と呼ばれる[53]

立証責任が逆転している(消極的事実の証明)。科学では、主張する側に立証責任があり、批判する側にはない。疑似科学的な議論は、この原則を無視し、懐疑論者に対して、ある主張(たとえば、新しい治療法の有効性に関する主張)が誤りであるという合理的な疑いを超え、それを証明することを要求する場合がある。普遍的な否定を証明することは本質的に不可能であるため、この戦術は立証責任を主張側ではなく懐疑側に不正に負わせている[54]悪魔の証明も参照。

還元主義ではなくホーリズムに訴えている。特に有機医療、代替医療、自然療法、メンタルヘルスなどの分野において疑似科学的主張を行う人は、否定的な知見を否定するために「ホーリズムのマントラ」に頼ることが多い[55]

他の専門家による検証への開放性の欠如

結果公表前の
査読を回避している(「記者会見による科学(英語版)」と呼ばれる)[54][56][注釈 5]。既に受容されている科学理論に反する考えを提唱する人の中には、査読は確立されたパラダイムに偏っているという理由や、標準的な科学的方法では主張を十分に評価できないなどの理由から、自身の考えを査読にかけることを避ける人がいる。このような提唱者は、査読プロセスから距離を置くことにより、情報に通じた研究者仲間からの修正的フィードバックを得る機会を喪失している[55]

科学研究に資金を提供している機関や出版社の一部は、他の研究者が独立して論文を評価できるように、著者に対してデータの共有(英語版)を求めている。他の研究者が主張を再現できるような適切な情報を提供しないことは、開放性の欠如につながる[57]

データや方法論の独立したレビューが求められた際に、秘密や独自の(専有の)知識の必要性を訴えている[57]

あらゆる視点からの知識豊富な支持者による、証拠に基づく実質的な議論が推奨されていない[58]

進展がない

主張を裏付ける追加の証拠を得ることに失敗している
[48][注釈 3]テレンス・ハインズは、過去2千年間ほとんど変化していない分野として、占星術を挙げている[46][32]

自己修正の欠如。科学的な研究計画は、間違いを犯すこともあるが、時間経過とともにそれらの間違いを低減させていく傾向にある[59]。それとは対照的に、矛盾する証拠があるにもかかわらず、そのままの形で残存している考えは、疑似科学とみなされる場合がある。これらの特徴は、『Scientists Confront Velikovsky』(1976年、コーネル大学)という著作でも詳説されており、トーマス・クーンの著作『科学革命の構造』(1962年)でも、疑似科学の特徴の一覧にある項目のいくつかについて触れられている。

裏付けとなる実験結果の統計的有意性が時間が経っても改善されておらず、有意水準に近いことが普通となっている。通常、実験技術が向上するか、実験が繰り返されることにより、より強力な証拠が得られるが、統計的有意性が改善されていない場合は、通常、単に偶然によって成功するまで実験が繰り返されていることを示している。

問題の擬人化

閉鎖的な社会集団と
権威主義的パーソナリティ、および反対意見の抑圧と集団思考は、合理的根拠のない信念の採用を助長する。自分たちの信念を確認しようとするあまり、その集団は批判者を敵とみなす傾向に転じる[60]

科学界における主流派が疑似科学的な情報を抑圧しているという陰謀論を主張している[注釈 6]

批判者の動機・性格・道徳・能力などを攻撃している[60][注釈 7]。詳細は人身攻撃を参照。

誤解を招く言葉遣い

科学的に見える専門用語を作成し、非専門家に嘘や意味のない話を信じ込ませている。たとえば、水のことを「
一酸化二水素」(DHMO)というあまり使われない名称で呼称し、ほとんどの毒液の主成分であると表現することで、一般の人々がいかに簡単に惑わされるかを示すという、昔からあるいたずらが挙げられる。

確立された専門用語を奇妙な方法で使用しており、その分野の主流の研究に精通していないことが示されている。

普及率
アメリカ合衆国

アメリカでは、科学の原理や方法を十分に理解していない、科学リテラシーの低い人が人口の多くの割合を占めている[注釈 8][注釈 9][63][注釈 10]。『Journal of College Science Teaching』の中で、アート・ホブソンは次のように述べている。「疑似科学的信念は、驚くほど我々の文化に浸透しており、公立学校の科学教師や新聞編集者の間でさえ広まっている。そしてこれは、科学リテラシーの欠如と密接に関連している」[65]。しかし、同誌に掲載された1万人の生徒を対象に行われた研究では、科学的知識と疑似科学を信じることの間に強い相関関係はないと結論づけられている[66]

カール・セーガンは、著書『悪霊にさいなまれる世界(英語版)』の中で、中国政府と中国共産党が、中国における西洋の疑似科学の発展と、中国古来のある種の慣習に懸念を抱いていることについて論じている。彼は、米国で発生している疑似科学を世界的傾向の一部として捉え、その原因・危険性・診断・治療法は世界共通である可能性を示唆している[67]

2006年、アメリカ国立科学財団(NSF)は、科学と工学に関する論文の要旨を公表し、現代における疑似科学の普及について簡潔に述べた。それによると、「疑似科学への信仰は広く行き渡っている」とされ、ギャラップ調査を参考に[68]、世論調査で挙げられた10種類の一般に信じられている超常現象の例を信じていることが「疑似科学的信念」であるとされた[69]。その項目は、「超感覚的知覚幽霊幽霊屋敷テレパシー透視占星術死者との精神的交信魔女輪廻転生チャネリング」である[69]。このような疑似科学への信仰は、科学がどのように機能するかについての知識の欠如を表している。科学界は、証明されていない主張に一般人が過敏に反応することに対する懸念から、科学に関する情報を伝えようとすることがある[69]。NSFは、米国における疑似科学信仰は、1990年代に広まり、2001年頃にピークを迎え、その後やや減少したが、疑似科学信仰は依然として一般的であると述べている。NSFの報告書によると、社会において疑似科学的問題に関する知識が不足しており、疑似科学的行為が一般的に行われているという[70]。調査によると、米国の成人のうち、約3分の1が占星術を科学的だと考えているという[71][72][73]
人種差別主義との関連性

疑似科学作家、および疑似科学的研究者と、彼らの反ユダヤ主義人種差別ネオナチズム的背景との間には多くの繋がりがある。


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