産業別労働組合
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OECD諸国においては、労働組合加入率は平均で17%であった(2017年)[3]。加入率が50%を超えているのは"Ghent system"制度の国(組合傘下の機関が失業給付を管理する; デンマーク、フィンランド、アイスランド、スウェーデン、ベルギー)、およびノルウェーだけである[4]
歴史

労働組合(以下、単に「組合」と略することがある)の歴史は18世紀に遡り、産業革命によって女性・児童・農民労働者・移民労働者が多数労働市場に参加するようになった時代である。こういった非熟練労働者の集団が自主的に組織を編成したことが起源であり[2]、後の労働組合として重要な役割を果たした。

カトリック教会などの承認を受けた労働組合は19世紀の終わりに登場した。ローマ教皇レオ13世回勅レールム・ノヴァールム」を公布して、教会としてこの問題にはじめてコミットし、労働者酷使問題について取り組み、労働者が妥当な権利と保護規制を受けられるようにすべきだと社会に要請した[5]
国際労働条約

労働組合の基本的原則として、1948年(昭和23年)の結社の自由及び団結権の保護に関する条約(ILO第87号条約)により、労働組合を組織する権利(団結権)および組合活動をする権利(団体交渉権)は、2人以上の労働者が組合結成に合意することにより[注 1]労働組合を結成でき、いかなる届出も認証許可も必要ではない。

基本条約(Fundamental convention)のひとつであり、日本はこの条約を1965年(昭和40年)6月14日に批准している。
加入率ILOデータによる、労働組合加入率 body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper{margin-top:0.3em}body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper>ul,body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper>ol{margin-top:0}body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper--small-font{font-size:90%} .mw-parser-output .legend{page-break-inside:avoid;break-inside:avoid-column}.mw-parser-output .legend-color{display:inline-block;min-width:1.5em;height:1.5em;margin:1px 0;text-align:center;border:1px solid black;background-color:transparent;color:black}.mw-parser-output .legend-text{}  90.0?99.0%   80.0?89.0%   70.0?79.0%   60.0?69.0%   50.0?59.0%   40.0?49.0%   30.0?39.0%   20.0?29.0%   10.0?19.0%   0.0?9.0%   No data

労働組合加入率は、 1998年にはOECD平均35.9%であったが、 2018年には 7.9%まで着実に減少している[6]。これら主な理由は、製造業の衰退、グローバル化、政府の政策である。

製造業の衰退が最も直接的な影響となったのは、歴史的に労働組合が製造業従事者の利益にプラスであったためである。それゆえ、OECD諸国の製造業が国外に流出するにつれ、途上国の加入率が上昇する可能性がある。二つ目の理由は、グローバル化により労働組合が国をまたいで団結することが難しいためである。最後の理由は政府の政策であり、これらは政治的右派/左派の両者からのものである。英国と米国では、労働組合の結成を困難にしたり、労働組合の権力を制限したりする提案は主に右派からのものであった。その一方で、左派政府によって最低賃金、有給休暇、育児休暇などの社会政策が達成されると、労働組合に加入する必要性も減少するという[7]

グループ別 組合加入率
(OECD加重平均,2013年)[3]雇用契約有期雇用9%
無期雇用20%
教育レベルHigh-skilled20%
Medium-skilled17%
Low-skilled12%
年齢高齢 (55-64歳)22%
中年(25-54歳)18%
若年 (15-24歳)7%
性別女16%
男18%
事業所規模大規模30%
中規模19%
小規模7%
セクター公企業38%
民間企業12%
産業社会的・個人サービス22%
政府機関34%
ビジネスサービス11%
製造業18%
総合平均17%
OECD各国の労働組合加入率(従業員に占める割合%)[6]
国際労働組合連合組織

最古の国際的組合には、1945年に設立された国際労働組合総連合(ITUC)がある[8]。世界最大のものは、2006年に設立された世界労働組合連盟(WFTU)であり、ブリュッセルに本部を持ち、156の国と地域に約309の関連組織があり、加入者数は総計1億6600万人であった。
構成形態

組合がどの範囲の労働者を組織対象とするかは歴史的な変遷がみられるし、現在でも多様である。組合員資格をどのように定めるかについては、法的な諸々の保護の関係で一定の制約を受けるほか、原則として組合の自治に委ねられている[9]。主たる組合員の構成によって、以下のように分類される。
職能組合

職能組合(craft union)は労働組合の最も古典的な形態で、同一職種の熟練工によって組織される。

初期の職能組合は、地域的もしくは全国的な熟練労働力の独占によって、労働条件の引き上げを図る点に特徴があった。そこでは、具体的な労働条件について組合員間で協定を結び、それを強い統制によって労働者に遵守させると同時に、その条件に同意しない使用者のもとでの労働を拒否することが、労働条件引き上げの主たる手段であった。きわめて強力な組織形態であるが、産業の発展により大量の未熟練工が輩出するようになると、労働力の独占を維持しにくくなる[10]

今日の欧米諸国における職種別組合は、職能組合の発展したものであるが、団体交渉争議行為を労働条件改善の主たる手段としている。
産業別組合

産業別組合(industrial union)は職種別組合が次第に統合され、職種のいかんを問わず、同一産業に属する労働者をすべて組織対象にするようになったものである。今日の欧米諸国における最も代表的な組織形態である。

産業別組合では争議行為を含む団体交渉が目的達成の主たる手段となる。団体交渉は様々な次元で行われるが、最も代表的な形態は産業別組合と産業別使用者団体との地域的もしくは全国的な交渉である。この場合、団体交渉での合意を記録した労働協約は、通常、当該産業における一種の法規範のような役割を果たす。それを最低基準として、各企業単位で上積みを図るのが通常であり、協約賃金と企業別賃金との格差は賃金ドリフトと呼ばれる[10]

日本における代表的な産業別組合としては全日本海員組合などがあるが、日本では産業別組合は例外的な存在でしかない。
企業別組合

企業別組合(enterprise union、company union)は事業所もしくは企業を単位として、職種に関わらず、そこに属する労働者を一括して組織する形態である。

日本では大部分の組合がこの形態をとっている。欧米諸国では使用者が組合に対抗するために結成した企業別組織(黄色組合)との闘争という歴史から、企業別組合はほとんどみられない[10]。産業別組合と比較すると、当該企業の実態に合った労使交渉が行われる反面、団体交渉の成果が当該企業内のみに留まるため、交渉に企業間競争を促す力が弱い。組合が企業意識に支配されやすく、企業間競争が激化するにしたがって、他の労働組合と連帯して行動するよりは、使用者と協力して企業の繁栄に努めるという行動をとりがちになる。その結果、労働条件の平準化という組合本来の機能の発揮において大きな限界をもつことになる。また、企業別組合においては、失業者を含む産業分野の労働者全体への関心が稀薄になる[11]

日本の企業別組合においては、組合員の資格を当該企業の従業員(特に、正社員であって一定以上の役職者でないこと)に限るとすること(いわゆる逆締付条項)を規約で定める組合が多い[注 2]

ジェイムズ・アベグレンが著書『日本の経営』(1958年)で、企業別労働組合を終身雇用年功序列とともに、「日本的経営の三種の神器」であると示した。
単位産業別労働組合

企業別組合では対応できない課題に対応するため、企業別組合が産業別に集まった連合体。通称、単産(たんさん)。
一般組合

一般組合(general union)は職種・産業のいかんを問わず、すべての労働者を組織対象とするものである。

19世紀末以来、イギリスにおいて非熟練工を組織するための形態として発展してきた。日本においては、零細企業に分散している労働者や、パートタイム労働者派遣労働者管理職など、企業別組合から事実上排除されている労働者を組織化するためにとられる形態である[10]
合同労働組合「合同労働組合」も参照

合同労働組合は企業別組合に組織しにくい労働者を地域ごとに個人加盟原則によって組織する点に特徴があるが、その組織形態は多様であり、産業別組合、職種別組合、一般組合などの形態をとる。一般組合の中にも、主要な産業別の労働者を主たる組織対象としつつそれ以外の労働者にも広げるものと、文字通り職種・産業を問わず広く労働者を組織する組合が存在する[12]

一般に中小零細企業では使用者の権力が強く、企業別組合さえ組織しえない場合が多い。1955年(昭和30年)の総評大会では、このような中小零細企業における組織化を方針として掲げ、それ以来合同労働組合の結成が推進されてきた[12]
ショップ制

労働組合と使用者との労使関係には、様々な形態がある。ここで言う「ショップ」とは、労使間で様々な約束事や取り決め事を交わす「協定」の意である。


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