生物多様性
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また、長野県辰野町松尾峡のように、観光用に増殖させようと移入した他県産ゲンジボタルが、在来ゲンジボタルの個体減少を招いたとの研究結果もある[17][18][19]
その他
生物多様性と関連を持ち注目を集めている出来事として両生類の減少がある。両生類は生態系の中で、小型動物の捕食者の地位にある。そのため、両生類が減少すると、昆虫の増加やそれに伴う生態系の撹乱が起きる可能性がある。「絶滅」、「環境問題」、および「外来種」も参照
貿易自由化との関連

国際連合による報告書によれば、1990年代からの自由貿易推進によって、魚類の環境負荷が増大し海洋生物の多様性が失われてきているという[20]。経済的には私企業は利潤追求を第一とし、製品製造の過程で出てくる廃液や排ガスの処理にかかるコストなどを削減したがる傾向がある。自由化や規制緩和に伴い、廃液処理の法規制が甘くなることで企業が環境へ配慮した生産活動を怠りがちになる。「市場の失敗」および「外部不経済」も参照
保全

基本的には、保全の選択肢として2種類の主な類型、本来の場所 (in situ) での生息域内保全(以下、域内保全)と別の場所 (ex situ) での生息域外保全(以下、域外保全)がある。域内保全活動の一例としては、保護地域の設定がある。他方、域外保護活動には、遺伝資源の収集保全や人工繁殖などがある。日本において遺伝資源保存・提供を行っている機関は、農業生物資源研究所のジーンバンクなどがある。また世界的には、種子銀行なども設置されている。

通常、域内保全は理想的な保全戦略であるように思われるが、しばしば実現不可能である。希少種や絶滅危惧種の生息地が破壊されている場合には、域外保全が必要となる。さらには域外保全は、域内保全事業への後方支援を提供できる。適切な維持を確実にするためには双方の保全が必要であると信じる人もいる。

国家レベルでは、個々の生物種を保護するために必要な手順を明記した生物多様性行動計画 (Biodiversity Action Plan, BAP)を用意することがある。通常この計画には生物種とその生息地の実際のデータが詳細に記載される。そのような計画は、日本では生物多様性国家戦略[21]、アメリカ合衆国では再生計画と呼ばれる。

持続可能な開発に関する世界首脳会議で討議された議題の中に「生物多様性に対する脅威」があり、継続的な植物の収集を補助するために地球規模の環境保全信託機構の設立が望まれるとされた。

2021年、生物多様性維持のため国際的協力を図る「自然と人々のための高い野心連合」が発足した。フランスコスタリカが主導し、日本を含む約50カ国が参加している[22]。「保全生態学」、「アジェンダ21」、「生物の多様性に関する条約」、「BBNJ」、および「国際自然保護連合」も参照
法律における位置づけ

生物多様性は、観察・目録化・保全を通して評価と解析されるべきであり、その後、政治判断の対象となる。これが法律的な位置付けを受ける開始点となる。

「法と生態系」の関係は、生物多様性にとって大変に古く重要な関係である。それは私的・公的な
所有権について関与する。脅威にさらされている生態系の保護を定めるが、ある種の権利と義務(例:漁業権・狩猟権)についても定める。

「法と生物種」の関係は、より最近の問題である。それは、絶滅の危機にあり保護されるべき生物種を定義する。これらの法の適用に対して疑念を持つ人もいる。「法と生物種」問題について触れた法律としては、日本では「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」、アメリカ合衆国では絶滅危惧種法(Endangered Species Act)がある。

「法と遺伝子」の関係は、わずか約1世紀の歴史しかない。家畜化や伝統的な植物選抜法など遺伝学的な手法は新しくはないが、過去20年間に遺伝学分野に起きた進歩が、法律を厳密化する元となった。新しい遺伝子工学技術により人々は、遺伝子や(生物が関与する細胞内外の)過程の特許化、新しい統合された遺伝資源の概念を作りつつある。遺伝子・生物・DNA・過程、これら内のどれが資源であるか定義しようと、熱い議論が今日繰り広げられている。

1972年ユネスコ大会では、植物などの生物学的資源が人類の共有資産であると取り決めた。資源が存在する国の外部では、この規則に触発されて、遺伝資源の大きな公的な保存事業を創立したのであろう。

新しい地球規模の協定(例:生物の多様性に関する条約)では、生物学的資源に関する権利(所有権ではない)を主権国家に与えている。生物多様性の静的な保全の考え方は消えつつあり、資源と革新の概念を通して、動的な保全の考え方に置き換えられつつある。

新しい協定は、生物多様性の保全、持続可能な資源の開発、および得られた利益の共有を、国々に対して勧告している。これらの新しい規則の下では、利益の共有と引き換えに、天然産物のバイオプロスペクティング(bioprospecting、生物資源探査)や収集を、生物多様性に富む国に許可しなければならないと予想される。

国家主権原則は、アクセスと利益共有に関する協定 (Access and Benefit Sharing Agreements, ABAs)として良く知られていることに対応させることができる。生物多様性条約の精神は、資源国と資源収集者の間に予め正しい情報を得た上での合意を形成することを含んでいる。その合意とは、「どの資源を用い、どのような目的で行うか」を明確にし、利益共有についての公正な取り決めを設定することである。これらの原則が守られない場合、バイオプロスペクティングは、一種のバイオパイラシー(biopiracy、生物資源の略奪)になりうる。
生物多様性基本法の施行

日本国内法として、生物多様性基本法案が2008年(平成20年)5月20日に可決され、同年6月6日に生物多様性基本法[23]として公布、施行された。


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