伝統的に生物の分類群には門(phylum/division)・綱・目・科 といった「階級」をつけて呼ばれることが多い。これら伝統的な分類階級は、人が扱いやすくするための人為的なものである側面があることに注意する必要がある。ただし、さまざまな分野で伝統的な分類体系を系統学の知見を反映させた体系に組替える動きが盛んである。
以下では現時点で生物分類でほぼ一般的に使われている分類体系の枠組みを記述する。
和名英名ラテン語名例:ヒト例:ローズマリー例:エノキタケ例:大腸菌例:A. ペルニクス
ドメイン:domain:regio:真核生物真核生物真核生物細菌古細菌
界:kingdom:regnum:動物界植物界菌界なしプロテオ古細菌界[注釈 1]
門:phylum
/division:phylum
/divisio:脊索動物門
(脊椎動物亜門)被子植物門担子菌門プロテオバクテリア門クレン古細菌門
綱:class:classis:哺乳綱双子葉植物綱菌蕈綱γプロテオバクテリア綱テルモプロテウス綱
目:order:ordo:サル目シソ目ハラタケ目エンテロバクター目デスルフロコックス目
科:family:familia:ヒト科シソ科キシメジ科腸内細菌科デスルフロコックス科
属:genus:genus:ヒト属
Homoローズマリー属
Rosemarinusエノキタケ属
Flammulinaエスケリキア属
Escherichiaアエロピュルム属
Aeropyrum
種:species:species:H. sapiensR. officinalisF. velutipesE. coliA. pernix
門は、動物学と細菌学ではphylum、植物学、菌類学ではdivision/divisioと使い分ける。
中間的分類が必要なときの階級名は、その分類単位よりも上位の分類には、巨 (magn-)・上 (super-)・大 (grand-) を、下位の分類には、亜 (sub-)・下 (infra-)・小 (Parv-) などの接頭語を各階級の頭につけて生成させる。
subfamily(亜科)とgenus(属)の間をさらに細分する必要があるときは、tribe(動物では族、植物では連)を使う。
subgenus(亜属)とspecies(種)の間をさらに細分する必要があるときは、section(節)を使う。
階級別の学名の接尾辞「階級 (生物学)#接尾辞」も参照
属より上位の階級の学名には、植物・藻類・菌類については国際藻類・菌類・植物命名規約、動物・原生動物では国際動物命名規約、細菌・古細菌では国際原核生物命名規約で定められた規則的な接尾辞(語尾)が付けられている。
学名の接尾辞(語尾)分類階級
rank接尾辞 suffix / 語尾 termination
植物
(ICN[注釈 2])藻類
(ICN[注釈 3])菌類
(ICN[注釈 4])動物
(ICZN[15])細菌・古細菌
(ICNP[16][17])
門Division/Phylum-phyta-ota
亜門Subdivision/Subphylum-phytina
綱Class-opsida-phyceae-ia -ia
亜綱Subclass-idae[注釈 5]-phycidae -idae
目Order-ales -ales
亜目Suborder-ineae -ineae
上科Superfamily-oidea
科Family-aceae-idae-aceae
亜科Subfamily-oideae-inae-oideae
族Tribe-eae-ini-eae
亜族Subtribe-inae-ina-inae
分類群によっては慣習的に、よく使われる語尾がある。たとえば、動物門の -zoa、綱の -morpha、目の -iformes、-ida、古細菌門の -archaeota などである。しかしこれらはルールではなく、例外が多い。原核生物では門の語尾を-aeotaに統一する提案が出されており、2018年以降に提唱された門はこの語尾を持つことが多い。さらに、2021年に原核生物では門の語尾を-otaに統一することがICSPで決定された[18]。
一般的分類例
原核生物
細菌(ドメイン:バクテリア)
アキドバクテリウム門
アクイフェックス門
アクチノバクテリア門
エルシミクロビウム門
カルディセリクム門
クラミジア門
クロロビウム門
クロロフレクサス門
クリシオゲネス門
サーモデスルフォバクテリア門