生来の決意作戦(せいらいのけついさくせん、英語: Operation Inherent Resolve)は、2014年8月に開始されたアメリカ合衆国を中心とする多国籍軍によるイスラム過激派組織・イスラム国に対する軍事作戦。当初はイラクやシリア国内に限定しており、その内容もイラク軍やクルド人部隊の地上勢力支援や救援物資の搬入を目的とした限定的な作戦行動であったが、次第に作戦の範囲が拡大しイスラム国撃滅作戦へと発展。アメリカ軍やイギリス軍などがイスラム国の支配地域で連日空爆を行っており、かつては中東全域を支配線とする勢いであったイスラム国も現在ではかなり弱体化しているとされる。Inherent Resolveは固有の決意、確固たる決意、不動の決意とさまざまに訳されるが、生来の決意が最も一般的である[8]。 フセイン政権崩壊後の2006年頃、イラクの聖戦アル=カーイダ組織を元に誕生したイスラム過激派組織・イスラム国は次第に勢力を広め、2014年に入った頃にはイラクやシリアなど中東諸国の政治的混乱に乗じてこれらの国の大部分を制圧し、支配下に置いた。その上でイスラム国は誘拐した子供の人身売買や生き埋め[9]、イラク北部の少数民族であるヤズィーディーの人々に対する虐殺や拉致、強姦[10][11][12]、ヨルダン軍のパイロット・ムアズ・カサースベを生きたまま火を放って焼き殺す[13]など、多くの残虐行為を行った。 2014年8月、アメリカ合衆国はイスラム国の支配地域に対して空爆を開始し、以降は有志連合による対イスラム国の軍事作戦を主導した[14]。その結果、2017年頃までにイスラム国の支配地域はその90%が有志連合軍や地元の義勇軍によって解放された。2017年10月、イスラム国が「首都」としていたラッカが陥落し、この「擬似国家」は事実上崩壊した[15]。
経緯
2014年
1月26日 - コバニ包囲戦が開戦。
8月7日 - フランスの求めにより国連安保理の緊急会合が非公式で開催。過激派組織ISILによる攻撃で、危機に直面しているイラクを支援する呼び掛けが行われる。同日、アメリカ合衆国のバラク・オバマ大統領がISILに対する限定的な空爆を承認。
8月8日 - アメリカ中央軍がイラク国内のISILの拠点に対して空爆を開始。以後、フランス、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、バーレーンも作戦参加表明。
8月25日 - バラク・オバマ大統領がアメリカ軍によるシリア上空での偵察飛行を承認した[16]。