主に相互作用二元論と呼ばれる立場からの応答。物質の世界が心的な世界から影響を受けて、物理法則とは異なる動きをするという、「因果的閉鎖性の破れ」を主張する。閉鎖性の破れる場所として、量子力学の確率過程を持ち出す場合が多い。 随伴現象説の立場。意識の世界だけで起こる変化は存在せず、それに対応する物理的変化が必ず存在すると主張する。因果的に閉じた物理領域での反応から、心的世界での現象が生じるのであるから、心的世界を因果的に経由せずに、心的世界での現象を物質世界へ表現することが可能である。 「感覚について語ること」に関しては、歴史的に心の哲学以前に、言語哲学や認識論また科学哲学などの領域で議論が行われている。たとえば中後期ウィトゲンシュタインが「哲学探究」の中で私的言語を論ずる中で行った感覚日誌の話が有名である。 テキスト ラジオ
心的現象には対応する物理現象が必ず存在する
歴史
脚注^ a b 青山拓央, ⇒「現象報告のパラドックス」, 研究プロジェクト報告書101号 『主体概念の再検討』, 千葉大学大学院社会文化科学研究科, 永井均編, pp. 1-5, 2005. 3.
^ 美濃正 ⇒「心的因果の可能性をめぐって:因果的排除論証に対する諸反応」 応用哲学会 (2009)
^ チャーマーズ『意識する心』 第6章 「意識と認知のコヒーレンス」pp.267-305
参考文献
デイビッド・チャーマーズ(著)、林一(訳)『意識する心-脳と精神の根本理論を求めて』白揚社 (2001年) ISBN 4-8269-0106-2この書籍の第六章「現象判断のパラドックス」(pp.221-263)が丸々、この問題の説明へ充てられている。
永井均(著) 『なぜ意識は実在しないのか』 岩波書店 2007年 ISBN 9784000281577この書籍の中間あたりの節「現象判断のパラドックスと神の存在証明」(pp.95-103)で対応する問題が論じられている。
関連項目
指示
因果
直示的定義
外部リンク
現象報告のパラドックス なぜ、脳はクオリアを語ることができるのか
現象報告のパラドックス 青山拓央(pdf)
⇒豊島徹「現象的経験に関する自己知の不可能性」 科学哲学 Vol.39 , No.1(2006) pp.15-27
⇒ラジオ・メタフュシカ 永井均講演 意識の神秘は存在するのか - 2006年に哲学者永井均が大阪大学で行った90分の講演。チャーマーズの立場の批判的な検討。批判のひとつの焦点が現象判断のパラドックスに置かれている(講演では「チャルマーズ・ゾンビの問題」と表現されている)。
歴
心 - 意識 (志向性 - 現象的意識 - クオリア - アウェアネス - 意識の神経相関) - 心身問題 - 説明のギャップ - 意識のハード・プロブレム - 私はなぜ私なのか - 付随性 - タイプとトークンの区別 - 因果的閉包性 - 自由意志 - カルテジアン劇場 - 我思う、ゆえに我あり - カテゴリー錯誤 - 心のモジュール性 - 心の理論
一元論
物理主義(唯物論 - 行動主義 - 同一説 - 機能主義 - 計算主義)- 中立一元論 (性質二元論) - 観念論(独我論)
二元論
自然主義的二元論(汎心論、原意識) - 新神秘主義(認知的閉鎖) - 存在論(実体二元論 - 記述二元論) - 因果関係(相互作用説 - 随伴現象説 - 並行説)
その他
チューリング・テスト - 中国脳 - 中国語の部屋 - ブロックヘッド - コウモリであるとはどのようなことか - 哲学的ゾンビ - メアリーの部屋 - 逆転クオリア - 水槽の中の脳 - スワンプマン - ウォズニアック・テスト
心の哲学者
ネド・ブロック - タイラー・バージ - デイヴィッド・チャーマーズ - ポール・チャーチランド - パトリシア・チャーチランド - ドナルド・デイヴィッドソン - ダニエル・デネット - ジェリー・フォーダー - フランク・ジャクソン - ジェグォン・キム - コリン・マッギン - ルース・ミリカン - トマス・ネーゲル - ヒラリー・パトナム - ギルバート・ライル - ジョン・サール - ウィルフリド・セラーズ - スティーヴン・スティッチ - フレッド・ドレツキ - 大森荘蔵 - 岡潔 - 金杉武司 - 河野哲也 - 柴田正良 - 永井均 - 信原幸弘 - 山口尚 - ユウジン・ナガサワ